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マジゲイへの道 1
新しい週が始まった。
親戚に不幸があったとか、それとも、仮病でもつかって休もうか。そんな調子ですっかり出社拒否状態だった先週とは打って変わって、創は意気揚々と一階フロアのドアを開けた。
老人は朝が早いという定説に従っているのか、鈴木課長はとっくに出勤し、彼の朝のお仕事、急須に茶葉を入れていた。
「おはようございます!」
「ああ、おはようございます。ずいぶん張り切ってますね、加瀬サトルくん」
「ハジメなんスけど……」
業者から朝一番に届けられた、山盛りのコピー用紙とトナー、それにシュレッダーボックスを専用の倉庫に運んだのはいいが、その場所のあまりの乱雑ぶりに驚いた創は片づけにすっかり手間取ってしまった。人手がなくて管理が行き届かなかったのだろう。課長とミチルの二人では、そこまで手が回るはずもなかった。
倉庫からようやく戻ると、今度は三階のシステム部からお呼びがかかり、プログラムリストの廃棄を命じられた。
開発部は何か御用はないのかな。ふと、上の階を見上げてみる。
用もないのに四階をうろつくわけにはいかないが、今日、彼はどんな格好で出社しているのだろうか。
人の服を選ぶセンスはとてもいいのに、いったいどこで仕入れてくるのかと思われるほど、凄い色柄とデザインの衣裳の数々。オカマを演じるのにも経費がかかるものだ。
午後になって開発部へ行く用事ができると、創は台車を押しながら、嬉々としてそちらに出向いた。
「あのー、業務課です」
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