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マジゲイへの道 3
「べ、別にいいよ。どうせ最低三ヶ月は頑張るつもりだったし」
「そう、よかったわ。それじゃあ、もう転ばないように気をつけて戻ってね」
それだけ言って踵を返すと、派手な緑のジャケットの後姿はとっとと開発部の室内に消えてしまった。
そんな彼の行動に、肩透かしを食らった創は強い不満をおぼえた。
(何だよ、もっと言うことねえのかよ!)
頑張るなんて偉いとか、この前は楽しかったとか、次の約束はどうするとか……
今は勤務中。『ないものねだり』だと承知しているのに、満たされない思いにイライラが募る。
メールは先週木曜に届いた一通だけ、それっきり。そうだ、向こうのアドレスはわかっているのだから『次の講義はいつ?』とか何とか、せっついてみたら、答えが返ってくるかも。
そこまで考えたものの、「いや、ダメだ」と創は即座に首を横に振った。
そんな、相手の返事に期待しまくってる内容のメールなんぞ送ったりしたら、一緒に過ごす時間を楽しみにしているのだと、総一朗にバラしてしまうことになる。
イイ男教育なんて迷惑だというポーズをとり続けているのに、そういう真似は間違ってもできない。プライドが許さない。
「そういや、あの元カレ、迷惑メール扱いされた上に、新しいメアド教えてもらえなくてクサッてたよな。ざまあみろって」
オレは知っているぞと優越感をおぼえたものの、あの時の経緯を思い出すと、薄っぺらな優越感はあっという間に打ち消されてしまった。
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