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江崎工業オールスターズ 2

 全体会議の開催は金曜の午後一時からで、場所は本社ビルの二階──営業部のオフィスのほかに、社長室や複数の会議室がある──その中で一番広い、大会議室となっている。  ところが会議当日の朝、親戚に不幸があったと連絡をよこして、肝心の鈴木課長が休んでしまった。もっとも、総務部全体としては総務部長が出席するため、鈴木の欠席はさほど問題にはならないが、このままでは総一朗の働きかけが無駄になってしまう。  内線をかけて鈴木課長の欠勤を報告したところ、総一朗は大急ぎで業務課にやって来た。名物オカマ課長降臨に、総務のオフィスがざわつく。 「こうなったらあなたが会議に出席しなさい」 「えっ、オレが出るの?」  「そうよ、鈴木課長の代理としてね。業務課の人間を抜きにして、業務課の話をするわけにはいかないでしょうが」  有無を言わさない総一朗の口調に、創はいくらかビビりながら応えた。 「ええっ、だって、出席者は部長とか課長とか、管理職限定なんじゃねえの。オレみたいな平社員の、しかも新人が出られるわけないじゃん」 「二十年後にあなたは四十二歳。二十年先を考えるんだったら、その時点で勤務を続けているかもしれない人の意見を聞く必要があるとか何とか、アタシが上にゴリ押しするから大丈夫よ。任せておいて」 「うへぇ~」  やることは相変わらず強引である。  そのゴリ押しの結果、出席が承認されたと聞いて、創は改めて総一朗の手腕を認めざるを得なかった。  一時十分前になったので、二階に移動してそっと大会議室を覗く。

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