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江崎工業オールスターズ 3
淡いベージュを配色した、落ち着いた感じの内装の室内には、天井まで届きそうな大型のホワイトボードが据えつけられており、大きな窓辺に下がるクリーム色のブラインドからは薄日が差していた。
床にはココア色の、毛足の短いカーペットを敷き詰め、長方形の四辺の格好に並べられた細長いテーブルと、そこにローズ色の椅子が三十脚ほど配置されている。パイプ椅子ではなく、しっかりとした造りの椅子で、長時間座っても疲れないという代物であり、他と比べても、この部屋に対する金のかけ方は違うとわかる。
すでに入室していた総一朗に──今日はシルバーグレーの、彼にしては地味めのスーツだった──手招きされて、彼の隣の席に腰かけた創はこわごわと周りを見回した。
システム部の部長と、営業部の部長代理が目配せして、こちらをジロリと見る。開発部名物男の隣の席は緊張の連続だ。
やがて総務部部長に製造部第三製造課課長が現れ、遅れて専務だの常務だのが次々に登場し、江崎工業オールスターズ勢揃いの様子に、創はすっかり気後れしてしまった。
こんなに大勢のお偉方を見たのは初めてである。入社式にもこれほど多くはいなかったはずだ。
「……皆さん揃いましたか? 本日、社長は残念ながら欠席ですが、そろそろ始めたいと思います」
進行役の常務がそう口火を切った。
「それではこの先、将来に向けての我が社の展望に関して、各自のお考えを述べていただきます。事業内容や海外進出など、どういったテーマでもかまいません。忌憚なき御意見をよろしくお願いします」
空気がどんよりと重苦しく感じられて、息が詰まる。
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