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江崎工業オールスターズ 6

 総一朗のレポートはすべての管理職に行き渡っているようで、皆、不承不承にうなずく。 「その報告書が現状を示していると思われますが、皆さんはそれを御覧になってどのように受け止められたのか、お聞かせ願いたい」 ──けっきょく、業務課の存続と、社内体制のあり方については早急に協議するということで決着がつき、創にとっては緊張の連続で、しまいには下腹が痛くなってきたほどキツい体験となった『全体会議』は終了した。  やれやれと息をついた創に、総一朗は「お疲れさま。新人であの説明ぶりなら上出来よ」と小声で囁いた。 「どんな仕事もこなす、どんな状況にも対処するのがイイ男だもんな」 「そういうこと。アタシたちなりに、やれるだけやってみたけど、これで改善されなかったら、次の手を打つから」  なめらかでスマートな語り口調ながら、見せる押しの強さ。  並み居る経営陣を向こうにまわしてでも、部下の信頼を勝ち取る頼もしさ。  さすがはミスターエンジェル、尊敬の眼差しを向ける創に「たいしたことは言ってないわよ」と謙遜しつつ、総一朗は照れ笑いをした。 「そうかな。オレにはとても真似できないけど」 「当たり前の話をいかにもそれらしく語ってみただけ。要はパフォーマンス力の問題よ」  そのあと、今日の会議の慰労会と称して退社後、飲みに行こうという総一朗の誘いに、 「それってやっぱり、オレの活躍を讃えての奢りだよなあ?」  などと生意気な態度をとりつつも、創は心の中で「やったー!」と叫び、ガッツポーズをとっていた。

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