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離れ小島の決闘 4

 それから先の展開をよくおぼえてはいないのだけれど、気がつくと創は殴られて、床に転がっていた。  さらに襟首をつかまれ、パンチを数発受ける。多勢に無勢、かなうはずはなかった。  突然ではなく、起こるべくして起きた製造部での乱闘騒ぎに、集まってきた野次馬がやいのやいのとはやし立てる。 「ちょっと、あなたたち、何やってんの?」  声をかけたのは、たまたま通りかかった総一朗だった。  殴られた衝撃で意識が朦朧とした状態の中、創はおぼろげに彼の姿を認めた。 (助けにきてくれた……)  創が製造部の社員四名にボコボコにされていたとわかると、総一朗は急いで止めに入った。 「やめなさい、こら、もう、やめなさいったら!」  それから、なおも創を殴ろうとする大柄な男の腕をとらえると「えいやっ」とばかりに、その巨体を投げ飛ばした。 「うわーっ!」  床に叩きつけられる巨体、ズシンッ、と大きな音が辺りに響き渡る。自分の二倍近くも体重のありそうな巨漢を投げ飛ばす力が、このヤサ男のどこにあるというのだろう。 「まったくもう。こんなところで何の騒ぎ?」  返事はない。目の前で見せられた『大技』にビビッた残りの面々は驚き、黙りこくったままだった。 「これ以上続けるなら、アタシが相手になるわ。言っとくけど、これでも武道エトセトラの有段者ですからね。黒帯も持ってるわよ」 「ははーっ、恐れ入りました」  印籠を見せつける水戸の御隠居のようだ。四人組は白旗を振って降参し、日野が経緯を説明しているうちに、製造部の課長が慌ててやって来た。

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