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離れ小島の決闘 5

「そんなに喧嘩の腕が衰えたって言うなら、今度稽古をつけてあげましょうか?」 「へっ?」 「柔道、空手、剣道に合気道、少林寺もマスターしているのよ。どれがいいかしら?」  さすが何でも完璧男、武道にまで通じているとは……創は身を縮めて答えた。 「え、遠慮しとく」 「あ、そう」  創の様子が落ち着いたところで、総一朗はなだめるように問いかけた。 「だいたいね、ただの殴り合いなんてジェントルマンのすることじゃないわ。製造部に不穏分子がいるのはわかっていたけど、もっと穏便に解決できなかったの?」 「あいつら、オレだけじゃなくて、あんたの悪口も言ったんだ」 「そう。どんなこと?」 「それはその……オカマを課長にしておくのはおかしいとか何とか……」 「まあ、普通に考えればそうでしょうね」  平然と応える総一朗に、創はさらにたたみかけた。 「悔しくないのかよ?」  返事はなく、不満と怒りのボルテージだけがハイスピードで上がっていく。 「格好はどうであれ、仕事はきっちりやってるんだろ。それなのに……そんなふうに、みんなに陰口叩かれてさ、あんたは悔しくないのかって訊いてるんだ!」  涙があふれそうになるのを堪えて、創は血を吐くかのような思いで声を振り絞った。 「オレは……悔しい」  憂いの表情で床に視線を落としていた総一朗はゆっくりと創の方へと向き直った。 「ありがとう」 「え……」 「そこまでボクのことを考えてくれていたなんて嬉しいよ」 「い、いや、オレ、その」

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