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離れ小島の決闘 6

 まっすぐに見つめられて、胸が痛いほどドキドキする。  総一朗はいくらか寂しげな表情をしながら、目の醒めるようなブルーのジャケットの袖を振ってみせた。 「ボクもこの格好をしているせいでクビだと言われれば、それに従うしかないと覚悟しているけど。長年の習性で、本当の自分を誰にも見せられなくなってしまったからね」  誰も知らない本当の姿──オカマの仮面をはずした素顔の総一朗を知っている者は数少ない。  自分はその中の一人なのだと改めて思うと、秘密を共有したような、密かな喜びがこみ上げてきそうになったが、それでも唯一ではないのだという戒めにたちまち心が萎えた。  総一朗の過去を知り尽くした男、扶桑茂明。今のオレの存在価値はあの男の足元にも及ばない。  そんなのまっぴらゴメンだ。  オレのことだけを見て、オレのことだけを考えて欲しい。  総一朗を独占したい。  唯一の存在になりたいと──  「会社のヤツらなんて、どうでもいいよ。オレだけに……」  そこまで言いかけて、気持ちが昂ぶってきた創は総一朗の両肩をガッチリとつかむと、何かを訊こうとした唇を塞いだ。  その瞬間、時が止まって── ──ハッと我に返り、おろおろする創の腕の中で、青ざめた顔をした総一朗は小さく震えていた。  茶化すでもなく、サラリとかわすでもない。彼らしくない反応に却って、何と言い訳していいのかわからなくなる。 「え、えっと、だから」  すると総一朗は「……いいの、かな」と呟いた。 「何?」

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