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小料理屋『青柳』にて 5

「恨まれても、って何だよ。だったらオレはどうすりゃいいんだよ?」 「わからない……わからないんだ」 「好みのタイプに教育するとか何とか、オレのこと、さんざん振り回しておいて、今さら反省してるのかよ」 「そんな……でも、何て言ったらいいのか」 「ンなの、自部勝手すぎんだろーが。ふざけんなよ」 「だから申し訳ないって」 「謝って済むかっての」 「ゴメン……」  こんな堂々巡りの状態じゃ埒が明かない。創は総一朗を見据えると、 「で、あんた自身はどうして欲しいんだよ。オレが引き返せばいいと思ってるのか、そうじゃないのか、ハッキリしろよ!」 「ボクは……」 「ま、あんたの答えが何と出ようと、オレは引き返さないからな」  キッパリと言い切る創に、総一朗の表情が吹っ切れたように明るくなった。 ――勘定を済ませたあと、創を目の端で捉えたまま、彼は呟くかのように訊いた。 「……ボクの部屋に来るかい?」

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