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心乱れて 2
男女共同参画が当たり前の時代に、女性が家事を担当して当然のような考え方はいただけないが、それでも美味しい食事を準備してくれる存在に、男は弱い。
寝ぼけまなこをこすりながら用意してくれた服を身につけ――ゆったりしたデザインなので、つんつるてんになることはなかった――ベッドから降りると洗面台に向かい、それからダイニングでおはようのキスをする。
味噌汁の御椀に鮭の切り身が乗った平皿、だし巻き卵、梅干やら佃煮が入った可愛い小鉢が行儀よく並んだ小さな食卓での、二人きりの朝食。
ラフなスウェット姿の総一朗は茶碗に御飯をこんもりと盛ると、創の前に差し出してから、湯呑みに緑茶を注いだ。
「わー、美味そう。こんなに豪華な朝メシ、久しぶりだ」
「学生のときからずっと一人暮らしだからね。一通りのことはできるかな」
「オレ、コンビニのお世話になるばっかりで、全然できないけど……冷蔵庫開けたら、缶ビールとマヨネーズと霜しか入ってないこともあったし」
苦笑した総一朗だが、何もコメントしなかった。
テレビのニュース番組は天気予報のコーナーになり、今日一日の快晴を告げている。長閑で平和な朝だ。
「こうやって誰かと食べるのも久しぶり。正月に実家へ帰ったとき以来かも」
「ボクも二人で、朝……」
そう言いかけて、総一朗は口をつぐみ、その態度は創のハートをちくりと刺した。
異性愛者よりはパートナーの見つかりにくいゲイだとしても、こんなにも魅力的な男がずっとフリーだったなんて。
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