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心乱れて 6

 やがて現われた派手なピンクのジャケットの男は扶桑の登場にたいそう驚いた様子だったが、彼から何やら聞かされると深刻な表情になった。ガックリとうなだれているようにも見え、創の胸は怪しくざわめいた。  いったい何の話をしているのだろう?   仕事に関する内容とは思えない。まさか、デートのお誘いでもあるまいし。  ただならぬ雰囲気に不安が掻き立てられ、いてもたってもいられなくなった。  彼らの面会は五分と経たないうちに終わり、エリート紳士は総務部の人々に会釈をすると、その場を立ち去った。  開発部へと戻ろうとする総一朗を慌てて追いかけると、 「ああ、見てたんだ」  あの男の用件は何だったのか、訊くに訊けず、もじもじしている創に「今週末、会うのはちょっと無理かもしれない。ゴメン」と総一朗は告げた。 「えっ、な、何で?」 「うん、まあ……また埋め合わせするから、許してくれ」  釈然としないものを感じながらも、納得したふりをしてうなずく。  焦燥の色を隠せないまま、総一朗は急ぎ足で行ってしまい、廊下に取り残された創は呆然と立ちすくんでいた。  天使が白い羽根を広げて、空高く舞い上がる様が見える。もう二度と地上へ降りてくることはない、そんな気がした。

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