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悲しみを胸に沈めたら 7
「傷心旅行ってどういう意味だよ?」
「ああ、あれは冗談よ。豊田くんたちをからかってみただけ」
「じゃあ、どうしてオレに黙って行ったんだよ? 電話をかけても出ないし、メールの返事もないし……」
「ごめんね。お寺に行く前にマナーモードにしたっきりで、忘れてたのかも」
「ふざけるな!」
怒りに震え、拳を握る創の様子に、総一朗は態度を一転させて「本当にゴメン」と言うと、深くうなだれた。
「な、何だよ、急に」
「じつは……父が亡くなったんだ」
「えっ?」
「父は死の直前まで、ボクを許さなかった」
総一朗は陰鬱かつ切なげな表情で、その経緯を語り始めた。
妻を亡くしてから一人暮らしをしていた総一朗の父は以前から肝臓ガンを患っていたのだが、いよいよ死期が近づいてきても、自分の葬式にゲイの息子なんぞを絶対に呼んではならん、墓参も許さないと周囲に言い渡していたらしい。
世の中がこれだけLGBTに理解を示すようになっても、昭和の頑固世代らしく死ぬまで考えが変わることはなかったというわけだが、それが彼の遺言かと思うと、姉夫婦も親戚も『ゲイの息子』に父親の死を告げられなかった。ところが、近所の噂話が巡り巡って、あの扶桑氏のところに届いたのだ。
彼との面会のあと、総一朗は急いで姉に連絡をとった。すると、明日の金曜日に四十九日の法要をやるというではないか。
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