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悲しみを胸に沈めたら 13

「ここまで追いかけてきてくれて、本当に嬉しかった。ありがとう」 「何度でも言ってやるよ、愛しているって」 「愛している……」  繰り返される熱いキス。  心を覆っていた霧がようやく晴れて、お互いの気持ちを確かめ合えた二人の頬を心地よい夜風がくすぐる。  創の腕の中で、幸せそうな微笑みを浮かべていた総一朗だが、ふいに「……だけど、さっきの決めゼリフはいただけないわ」とダメ出しをした。 「はあ?」  いきなりの発言に創が怪訝な顔をすると、 「オレの天使だ、エンジェルだなんて、まぁ、超ダサすぎ。今時、どんなB級恋愛映画にも出てこないセリフよ。あー、鳥肌が立っちゃった」 「ンだと、てめー!」 「もうちょっとマシな口説き文句を言ってもらわないと。まだまだイイ男教育が必要な証拠だわ。あれじゃあ足りないなんて、ホントに手がかかるわね」 「そのボロクソな言い草は何なんだっ!」  これまでのいいムードは、涙を流してまでのロマンチックな展開は、いったい何だったのか。何もかも台無しじゃないか。  ピキピキッと額に青筋が立つのがわかる。そんな創の様子を嬉しげに見た総一朗は「いつものあんたに戻ったんじゃない」と言って、ペロリと舌を出した。 「んにゃろー」  それから、総一朗は向こうに見える白い壁の建物を指さした。 「ロマンチックツアーのパンフの内容に添って旅してたんでしょ? それじゃあ、続きとまいりましょうか」 「続きって?」 「今日の締めくくりはオーシャンビューのリゾートホテルでいかが?」

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