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10.恐怖と快楽(後編)*

両腕を固定していた手が離れていく。 舐めるように下に降ろされた手は腰を掴み 同時に溶かされた後ろに硬いものが当たる。 今にも眠りそうな意識でその行為に気づけなかった。 そして、それは勢いよく俺の中へと入ってきた。 終わったと思っていた矢先に再び蘇る先程の感覚下半身からゾワゾワと何かが競り上がってくる。瞑りそうだった目を見開き先鼻出しそうになる。 「かはっ・・・ぁ・・あぁぁぁあああ」 「ぐっ・・・力を抜け」 (嘘・・・!?) 考えたくもないが先ほどとは比べ物にならないほどの硬く太いそれは中を無理矢理こじ開けながら侵入してくる… 「ああっ・・やぁ・・ぁぁあぁ・・」 「もう少しだ・・」 どんどん奥に入ってくる感覚。 痛みよりも圧迫感が喉まで感じる程だった。 動きが止まり突き当たりまで飲み込んだそれは激しく脈を打っているのが分かる。 (抜いて・・・苦しぃっ) 身体には力が入らず表情だけで訴える。 だが、俺の頭を撫で唇にキスをする。 「やっとだ・・・」 (へ・・・?) 疑問を微かに感じた矢先…意識が弾けるような衝撃が走った。それは先程刺激なんてかき消すかのようなものだった。 腰を掴み中にある男の性器が引き抜かれたと思えば勢いよく中を擦り強く奥に突かれる。 繰り返されるその動作に今度こそ意識が飛びそうになる。 「あぁ!・・ぁ・・・・はぁ・・ぁ」 何度も何度も突かれ…弱い所を擦られ…敏感な場所を集中的に当てるように動きだす。 だが意識が飛ばない、飛べない。飛びそうになるたびに奥をつかれる衝撃で引き戻される。 頭は痺れ腹からくる熱と快楽に限界を迎えようとしていた。 自身の性器の先端からはダラシなく汁が滴りおちる。 「はぁ・・ぁ・・・あぁ・・も・・もぅ・・・むりぃぃ」 「いいぞ・・・イけ!」 その言葉と同時に何度目かの奥への突きで更なる限界へと達した。 「はっ・・・あ!あぁぁぁあああああ!!」 「ぐっ・・・・」 今度は合わせて再奥に熱い熱が流れ込むのが分かる。どくどくと流れる。 俺のそれも先端から勢いよく放たれた液体が再び腹を汚し力をなくしている。乱れる呼吸音だけがその瞬間寝室にが響く。 「ふっ・・・はぁ・・はっ・・・」 すると囁くような声が聞こえた。 「お前は、俺のそばにいればいい。誰にも触らせるな。」 そこで意識は途切れてしまった。 目覚めた時一番に視界に入ったのはまたも鍛えられた綺麗な胸板。 視線を動かせば、それは昨夜自分を犯した男だった。 自分を抱きしめた状態で寝息を立てている。 気づけば体もベッドも綺麗になっており、肌触りのいい寝衣のシャツだけを羽織っていた。 「・・・っ・・いっ」 少し体を動かそうとすると下半身にくる激痛が昨夜の出来事をリアルに思い出させる。 思い出すのも苦しく恐怖する。今まで自分でも知らない乱れた自分。 すると・・・ 隣の男が動き出し瞼を開く。 即座に目を閉じて狸寝入りをしてしまう。 (あんな事をしてどうすればいいか・・・) 不意打ちのように額に唇の感触を感じ静かに 部屋から出て行ったようだった。 扉が閉まる音を聞き取ると脱力する。 「はぁぁ・・・」 「これからどうなるんだろう。」 どれだけ考えてもわからない。 なぜここに連れてきたのか。 なぜあんな事をしたのか。 何が目的なのか。 疑問ばかりが浮かび答えを聞きたいような聞きたくないような… 自分でも答えは分からないままだった。 今日はさいわい大学が休みだ。 オーナーやバイト先はあの後どうなったのだろうかもう働けないだろうか。 静かになりもう出かけたかと思いベッドから降りようとすると足腰に力が入らず床に倒れてしまった。 「・・・っ!」 ガチャッ 音に気付いてか扉の音がして男が寝室にに現れた。 「あ・・・」 扉が開いたと同時に目が合ってすぐさま俯き目をそらす。 こちらに近づいてくる事を感じると身体が強張る。しかしそんな俺をいとも簡単に抱きかかえた。 「ふぁぁ!?」 男が自分を抱き上げリビングに向かい歩いていきソファにゆっくりと下ろされる。 大人しくされるがままに…どうせ動けないため キッチンから持ってきた温かい飲み物とトースト二枚を前のテーブルに並べた。 「飯だ、食べたら休んでおけ。」 「はぃ・・・ぁ・・」 声をかけようとしても何を言えばいいのか自分でもわからず飲み込んでしまった。 思わぬ優しさを感じる言葉だった。 「今後の事を話しておく。」 ハッと顔を上げ相手を見つめた。 一瞬まだこの生活が続くのかと思いはしたが話すなら聞く必要もあると耳を傾ける。 「前にも言った通り大学には行かせてやる。だが送迎をつける。」 「え・・それはつけないと・・・ダメなんですか?」 知らぬ間に追加される条件。 おそらく昨日のような行動をさせないためだというのはなんとなくわかる。 「つけないなら家から出るな。」 真顔で監禁まがいな事を言われ動揺が隠せない… 「バイトは辞めさせてある、行く必要はない。大学が終わったら真っ直ぐに帰ってこい。」 「必要なものがあれば部下に言え、用意させる。」 次々に話を進めていくがそれでは困る。自分の生活のため。 「あの、でもその・・・働かないと生活が・・・」 「初めも言ったはずだ、家賃も何も必要ないと。」 聞く内容は意味がわからず納得できるはずもなかった…だがここで反発しても聞き入れるような人物でない事は嫌と言うほど理解した。 バイトは辞めさせたのか…クビになったのか…もはや分からず。 ただ一度、謝りに行きたかった。 「ぁの・・・せめてバイト先には挨拶だけさせてくださぃ。」 様子を伺いながら頼んでみると意外にも承諾してくれた。 「・・・わかった。」 一瞬目つきが鋭く感じたがなんとか了承してくれたのでもしかしたらともう一歩踏み込んでみる。 「あと!・・・」 (大丈夫、今なら聞ける・・・) 「ど、どうして・・・こんな事を・・その」 口にするのも気が引ける昨夜の行為。 うまく言葉を紡げないでいると言葉を被せてきた。 「・・・・・お前が先に願った事だ。」 「ぇ・・・・」 気のせいかその表情が哀しそうに思えた。 そう言い残すと素早く部屋を出て行った。 (あの人との会話に今までそんな内容を話した事はないはず) (俺・・・・俺が・・・?) ソファに寝返り今まで話した事を事細かに思い出そうと考えているうちに再び眠りについてしまった。

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