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12.御縁諒とは*
目の前の存在に気づき大きく見開いた視線と相手の視線が混ざり合った。
「へ・・な・・・・何、んぐっ」
何を言うでもなく、いきなり口を塞がれ歯と歯をこじ開けるように舌が入ってくる。
前回のような恐怖よりも体全体に熱を感じ頭に響くような感覚に陥っていく
「は・・ぁ・・・ふぁ・・」
容赦なく響く唇同士が絡み合う音・・・。
前回同様なのは呼吸がしにくくて苦しいということ、また御構い無しに蹂躙される口内からの刺激に頭がボーっとしてくる。
落ちかけたが即座に自分は意識を保とうとし。
(ダメだ・・・またやられる・・・っ!)
口が離れたその瞬間に力一杯叫んだ。
「やめてください!」
その瞬間表情を変えずに静止したように固まる御縁さん。
息を切らしながらも力がうまく入らない体をヘッドボードの方に引きずりながら相手から距離を取る…
今しかないとこのチャンスを逃すまいと半分蕩けかけた瞳で真っ直ぐ相手を見つめる。
しかしその時の自分は相手にとってその目で見られることがどれだけ満たされ求めてしまいたくなることを知る由もなく、ただただこのチャンスを掴もうとしていた。
「な・・・なんでこんなことするんですか。」
息を整えることよりもと自分を見つめる御縁さんにまっすぐと問いかける。
「・・・・・。」
だが、いつものように御縁さんはただ一点こちらを見つめるばかり。
何も話す様子がない。
潤んだ視界越しには御縁さんの目から縋るように見えた気がしたがよくわからない。
答えない相手に答えをせがむように更に問いかける。
「何がしたいんですか・・・」
「・・・・・。」
「もう・・・解放してくれませんか・・・」
「・・・!(ピクッ)」
何一つ答えそうになかった相手がこれだけはピクリと眉を動かし眉間に皺が寄っていく。
「なんだと・・・?」
また深みが増したような声がした。だが今回は顔をよく見ているせいか表情は寂しそうに思えた。
なんでそんな顔で反応されるんだろう。戸惑っているのはこちらなのに。
軽くうつむきがちに目線を逸らした視界に自分に向かって伸ばされた手に昨夜の行為が思い出され目頭が熱くなり目尻から流れそうなそれを必死でこらえたが、あふれ始めた粒は次から次へと頬を伝っていく。
何故だろうか・・・涙が止まらなかった。自分の気持ちが自分でもわからない。
そんな顔で見つめられたら尚更。
その先の気持ちを認めたくはなかった。
ただその姿を見つめていた御縁さんは息を吐き広いベッドの上で体制を直す。
隣に座りなおし足を組み少し落ちた髪をかき揚げ、いつものような隙がない姿とは裏腹に少し緩やかな落ち着いた表情で視線を落とした。
すると思いもしなかった言葉が聞こえた。
「俺はおまえをずっと探してた・・・泣き虫でも頑張って笑っていた小さいガキだった頃からお前だけが俺のずべてだった。だから尚更見つけた時は頭ん中真っ白になっちまった。」
「ぇ・・・」
(突如語り始めたその言葉はまるで)
「清・・・ずっとお前と一緒にいる。俺が怖いものからも全部守ってやる。」
落としていた視線がゆっくりとこちらに向く。
はじめてみるその表情から視線を逸らすことはできず。
体は固まり目から流れ落ちるものも自然と止まっていた。
だがそれにすら気づかない俺はただその言葉にだけ耳を傾けた。
(聞いたことがある・・・大好きなお兄ちゃんとの約束)
「もう何も寂しいことなんてない、俺がいる」
すでに自分の頭もまともに働いてなかったがそれでもある人物のことだけ頭をよぎった。
それは俺にとって大事な、大事な、ひとときの思い出。
「りょう・・・お・・にぃちゃん」
「清・・・・」
確認するかの様に聞こえるかわからないほどの声で問いかけた俺に優しく応える様に名前を呼ばれた。
手を伸ばそうとしたと同時に御縁さんは強く俺を抱きしめた。それは苦しいほどだったがそれよりも中から溢れるほど熱い何かに追われて瞼まで再び熱が滲てきた。
「側にいてやれなくてすまなかった。」
囁くように俺の耳元でつぶやく。
「ずっと後悔してた・・・」
抱きしめられているのは自分のはずなのに。
何故だかまるで子供がごめんなさいと泣きながらしがみついてくるような、そんな感じに思えるほど絞り出したような声だった。
「だからもうお前が嫌がっても離してやれない。」
「・・・・。」
言葉に詰まる。
意識が混乱していた俺は思うように身体が動かなくなり。
相手は苦しそうな表情で見つめ再び抱きしめた。
そのまま俺の唇を重ね倒れこんだ俺の身体中に唇を落としていった・・・
その動きはどんどん下へと移動していきそれと同時に身体中の冷めていた熱が再び蘇ってきた。
身体中を這う相手の肩を力なく押し返そうとするも身体はピクリとも動かない。
気づいたように御縁さんは肩にある手を優しく掴み手のひらに手首に唇を落とす。そのまま自身の胸に当ててきた。筋肉がしっかりとついた硬い胸板に添えられた自分の手からは熱く力強く早い心音が響きこちらが恥ずかしいほどそれは伝わってきた。
心音から熱がうつったのか顔が熱くなり添えられていた手をふり払って自分の顔を隠すように顔の前で両腕を交差した。
顔は見えないが隙間から見えた御縁さんの口元はうっすらと口角を上げたように見えたと思うと御縁さんの片方の手が身体を撫で下へ下へと降りていく、止まった先はまだ不慣れな・・・。
(やだ・・・怖い・・)
「ぁ・・やぁ・・・やめっ・・ふぁあ」
先ほどまで曖昧だった意識がはっきりと相手を認識し潤んでいた目を見開いた
。
割れ目の間をザラっと舐められているのが分かる・・・撫でるような動きに全身の力が抜けていき代わりに自身の性器がビクビクと立ち上がっていく。
昨夜のようにこじ開けられるようなものではなくねっとりとした下で口を閉ざす入り口から優し、唾液を混ぜながら溶かしゆっくりと割って入ってきては抜き・・少しづつ奥への道を作っていく。
そんな行為に腰を震わせ体が痺れていく。
我慢しながらも抑えきれない声が漏れ出つつある。
「は・・ぁ・・・・んんっ・・」
ピチャッ・・・クチュ・・・・
卑猥な音が寝室に響き渡る。
自分の立ち上がってきたソレの先端からは糸引くようにシーツへと先走りが垂れていく。
そんな浅ましい自分の状況を否定したくてたまらなくなる。
ちらりと下半身を慰める相手に視線をやる。きっと自分はこの表情を忘れないだろう・・・だって縋るように・・忘れるなと訴えられているような・・・。
「ふぁぁ・・・い・・いやぁ・・だ・・・」
自然とその快感から逃れようとする。
前に逃げようとしても片腕を後ろから引かれ動けなかった。
膝までも力が抜けていき震えだし腰を支えられなくなった時には口が離れ舐められたところに触れる空気にでさえも敏感に感じ取ってしまうほど溶けていた。
次の瞬間には以前の記憶に強くこびりつくほどの硬いものが入り口に触れる。
しかし今回は念入りに濡らされたからかぬるぬると滑るように広げながら自分の中に入ってきた。それでも内側から圧迫される苦しさは変わらず、その中で擦れる部分に先ほど以上に快感も感じ始めていた。
「あぁぁ・・・んぁ」
「はぁ・・・はぁ・・・清」
御縁さんも息を切らしながら何度も俺の名前を呼ぶ。その声が心地いいのに昔はこの声を聞くと泣き止んだのに、今はなぜだか涙が止まらなくなる。
達しては中に出されたものをかき混ぜるように動かし再び腰の動きを早めて射精 す。
さすがに数回そんなことを繰り返せばさすがの俺も意識が遠のいていく。
もはや何度達したかすら覚えていない・・・
ただただ泣き続けて居た。不確かな御縁さんの正体。腹の内側からくる圧迫感。意思に逆らい淫らに感じ反応してしまう自分の体に対して。
俺の体力が限界になるといつの間にか果てていた。
意識が戻ったら背後から抱きしめられ身体も綺麗になっていた・・・
泣き疲れ体のだるさと共に目を開ければ窓からうっすらと陽が差し込んでいるのをみて朝なのだと知る。
虚ろな意識の中何度も何度も考えた。
確かに大好きだった公園のお兄ちゃんは俺にとって大事な存在だった。
でも・・・いままではそれを恋愛感情に考えたことがなかった。いざ、意識するといままでされたことまで鮮明に蘇り恥ずかしさで頭が沸騰しそうだった。
(御縁さんが・・・あのお兄ちゃん)
確かにやっていたことは無茶苦茶で怖いばかりだったが・・・優しく大事にしてくれたことも感じていた。だが、記憶の存在とは見た目もだが大きく違う気もしてしまう。
でももしそうならなぜこのような行為を俺にしたのか、結局謎は増えるばかりだ。
視線だけを彷徨わせて考え込んでいると頭上から落ち着きのある低音が降る。
「お前の眼は本当に綺麗だな。」
「その眼で見つめられると堪らなくなる。」
昨日はいつものカラーコンタクトの予備が見つからず裸眼のままだったことに気づく。
立て続けていろんな情報や考え込むことばかりでそのことを忘れるほどだった。
静けさの中に聞こえる声に応えるように顔を上げると目があった。
「そういう顔だ・・・」
俺は何も表情を変えたつもりもないが指摘された。そういうと御縁さんは更に自身の胸板に俺を大寄せた決して苦しくないよう力を加減しながら。
お店の女性たちのように艶のある表情など自分にはできないのにと考え、意味がわからずとりあえず謝った。
「ご・・ごめ・・・なさ。「謝って欲しいんじゃない、ただその眼も含めてお前は綺麗だと言ったんだ。」」
言い終わる直前にかぶせるように否定された。
今までコンプレックスだったものが少しだけ楽な気持ちになった。
この人の前ではこの異質な眼もあまり気にならない。
(こんな状況になってから初めてこんな会話をした気がする)
よくよく考えると御縁さんはとても言葉足らずだ。
お店に通ってきたときは色々と質問をされていたから気づかなかったが自身のことは一切話さずかといって質もに答えても会話が膨らむことはほとんどなかった。
だがわざわざ今言う必要もない。その心地よさにいまだけは考えることをやめてその暖かさに甘えた。
恥ずかしさからかなんだか身体が熱く感じた。
「少し熱っぽいな・・・今日はゆっくり寝てろ。」
熱っぽさを感じる俺の頭上から声が降る。
この熱が伝わってしまっていることに更に恥ずかしくなる。
「部下に世話をさせる。欲しいものがあればそいつに言え。」
「あ・・ありがとう・・・・っ」
恥ずかしさを隠すおようにただお礼だけを伝える。
そうして俺が眼を閉じるのを確認すると御縁さんは物音せず部屋を出て行った。
御縁さんがりょうお兄ちゃんだと知って去り際の背中を薄く見つめ、昔のように名前を呼ぼうとしたが・・・なぜだか言葉にできなかった。
あんな無理矢理されたのにお礼を言うなんてきっと熱のせいだと自分に言い聞かせる。
また昔のように無条件に信じられることは成長した自分にはまだできなかった。
世の中の黒さも冷たさも痛さも恐怖も少なからず知った。更に最近知らずにいた恐怖も在ろうことかりょうお兄ちゃんから加えて知った。
でも、それでもお兄ちゃんだから拒絶はせず今のあなたを知れるだろうか見せてくれるだろうかと考えてしまう。
怠さと熱っぽさでだんだんと心細くなる。
(前はこういう時どうしていただろう・・・)
御縁さんとの生活に慣れてきて一人だった時の生活を忘れてしまっていた。
ただただ今は沈んでいくように体の怠さを感じるだけだった。
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