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16.御縁諒said

目の前で涙を流しながら身体の快感に抗えずにいる清…‥…。 清と出会ったのはまだ幼いガキの時だ。 優しくも強い誇れる両親と組という大きな家族に囲まれ俺自身は幸せを感じていた。 だが、やはり日陰の存在は一般的には冷たいもので家族からの後継としての圧と周りからの遠回りな態度と視線に小学生の頃から薄々感好き始め中学になる頃には息苦しさを感じていた。 自分が何をするべきなのかすらわからずそれらに抗うように今とは真逆の臆病な性格を演じた。前髪で表情を隠し根暗と思えるほどの影の存在だった。 当時の自分には目立たないくらいが丁度よく思っていた。両親はそんな俺に気を使うでもなく普段どうりに接してくれていた。組のやつらは不安がっていたが親が気にしていないのに自分たちがどうこう言っても仕方ないそれに成長すれば変わるだろうと思うやつらと一部では見下す奴らもいた。 そんなある時、たまたま通りかかった近所の公園で一人薄着で遊んでいる子に出会った。 それが清との出会いだ・・・・。 五つ下のその子は瞳が透き通るガラス玉ようなブルーグレーの眼をした綺麗な面持ちで少女にも思えるような子だった。ついつい目を奪われてしまった。 視線があうとその子供は少し戸惑い気味に俯き再び砂遊びを始める。夕焼けが見えてきた時間に一人で人気のない公園で遊んでいるのはさすがにほっておけずそのまま声を掛けた。 初めは怯えもしていたが一緒に遊ぶかと聞けばその子はガラス玉のような瞳を大きくしながら喜んで返答をしてくれた。 今覚えば……あの時にはすでに惹かれていたのかもしれない…………。 その後話を聞けば家に帰らないのではなく帰れないのだという。 道に迷ったわけでもなく何かしら事情があるのだろうことは察しがついた。 だがだからと言って一人置いていくわけにもいかず時間まで一緒に過ごした。 その日以来帰宅前に必ず公園に立ち寄りその子がいないか確認するようになった。いれば話をしたり遊具で遊び、いなければ少しの時間公園のベンチで待った。 家族にはなんとなく言いづらく俺にとっての秘密時間になる。 笑顔で俺の後をついてまわり人見知りなのか他人を見つけると不安な顔で俺の服にしがみつきすがっていた。その度に俺はこいつが怖がらないように優しく頭を撫で人が近ずいてくる様子があれば視線でそれを制した。 こいつは綺麗な顔立ちのせいか変質者に絡まれることも多い……その時はさすがに怒りを抑えられず相手を殴り飛ばしその場を沈めた。 その日は震えて泣く清をずっと抱きしめ背中をさする。 「ひっ…ぐ……ひっ…お…おにぃ……ちゃん……ごわがった…」 「大丈夫だ…大丈夫。何も怖いことはないよ。俺がいる……。」 俺にとってはその時間が心地よくて抱きしめていたその手を離したくはなかった。 その時俺は……既にこいつを特別に感じていたんだと思う。 周りとは違い俺をまっすぐに見てを必要としてくれる。今までわからなかった心のモヤモヤが晴れた気がした。俺は清を守りたい側にいさせたい。でも『優しいお兄ちゃん』でいてやりたいその気持ちの反面黒い感情がどんどん広がっていく。 だが暗くなる前に帰らせねばと……毎日仕方なしに手を離し別れ去っていくあいつの背中が見えなくなるまで見つめて自分の頭に言い聞かせる。 (大丈夫…また次がある……。) ある日寂しくも公園を出るとそこにはスーツ姿の男が立っていて俺に当たり前のような礼をする。 「若。帰りが遅かったので心配いたしました。」 男は東條と言って俺の幼少時代の世話係だった。 他の組員とは違いみんなから反発するような俺に何も不満を持たず変わらず接してくれ唯一信頼が置けるやつだった。 知的に忠実に見せかけながらも頭の中は血だらけのような男なのはみんなが知ることで他の組員からも一目置かれでいる昔から仕事のできるやつだ。 それでも組を大事に思い俺の教育係として俺を心配してくれるその感情も本物だと子供でも直感でわかっていた。だから俺も東條にはあまり理不尽な態度をぶつけないむしろ頼ることが多い。 「東條……心配かけてごめん。今帰るよ。」 「はい。____ところで先ほどの少年はお友達ですか?」 清との時間を見られたことに少しだけ不快感を抱いた。 「あ、いや・・・たまたま出くわしただけの子。」 わかりやすい嘘だった。東條もわかってはいただろうが知らぬふりをしてくれる気のきいたやつだった。 「そうですか。少年を助けるのはいいですが何かあったら一大事ですのでなるべく俺を呼んでください。」 「大したやつじゃなかったから大丈夫だよ。」 「念のためです。」 俺は組の跡取りでもあり守られる立場だ。 東條は何かあれば頼んだことも頼んでないこともやってくれる。 だから俺は……頼んでしまった。 「なぁ……東條。」 「はい。」 察しのいい東條は俺が何かを頼もうとしていることに気づき普段の話し方とは少しだけ違う仕事の話し方になる。 「…………あの男、もうこの近くで歩けないようにできる?」 「容易いです。」 躊躇なくそれ以外答えがないというように返答が返され俺も当たり前のように返答を返す。 「よろしく。」 これでいい。 (あんなやつがまたこの辺りを彷徨くことさえ許せない。それよりも清が怖がって公園に来れなくなる。) 「了解しました。」 結果はわからないがその日から変質者の出没がなくなり清も安心して公園に来ていた。 その様子に俺もこの時間を壊される心配がなくなり清との時間に癒されていた。 俺は家に抗いつつも結局は家の力を使ったようなもので、それでも清のためならと罪悪感も何も感じることはなかった。 陽も暮れてきて今日も至福の時間が終わる……。 心の中ではこんなに黒い感情を抱いているのに『優しいお兄さん』の笑顔を作り帰っていく清に手を振る。 (清……またな。)

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