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19.再開

やはりあれから時が過ぎ警戒が緩くなったのかサツに保護された後の情報を得ることができた。親せきをまわされたが結局は父親が清を追い金をせびるなどの行為で檻に入ったところまで入手できた。そこまで分かればそん先はおおよそ予想がつく。 おそらく行き場を失った後は施設に入ったと考える線が一番近いと思った。 だが二度目の警察沙汰で個人情報が更に厳重になりどの施設に入ったのかがわからなかった。 俺も若頭を担うようになってから仕事も忙しくなり、周りからは実力者だなんだと言われても実際一番欲しい情報ひとつ集められない…自分に腹も立てていたくらいだ。 そんな時、高校からの付き合いの香が気晴らしにと飲みに誘われた。だがどこに行くのかと思えば……会員制のクラブ。 正直疲れてまで女の相手などする気も起きず帰ろうとしたが…。 「おいおい、ここまで来て帰るとは言わせないぞ!」と押されて行った。 個室に入ると香があらかじめ指名していたのだろうトップ2人と思われる女が入ってきた。自分たちを見るなり頬を染め挨拶をし隣に腰掛ける。 確かに会員制というだけあって店内は緩やかなBGMが流れキャストも俺らに興味はあっても礼儀と立場を理解して迫ってくる様子もない、そこら辺のキャバクラよりは過ごし易い店だった。これで酒がうまければ後ろ盾になるのも使えそうだと仕事のことを考えていた時。 扉の音と同時にボーイが入ってくると音を消すようにテーブルにセットしていく。 そしてそのボーイが退室しようと少し顔を上げた瞬間……。 頭よりも身体が先に動いていた。 気づけばボーイの腕を強く掴んでおり周りは驚きを隠せない様子でその場の空気が急に静まり返った。内心そんなものを気にする余裕もなくただ掴んだ腕に力を込めた。相手は少々痛がったようだったが俺にはそんな余裕もなくただじっとボーイの顔を見つめた。 (似ていた…一瞬でも面影を感じた。) 凍りついたその場の様子に香がすぐさま場の空気を読み女たちの気を紛らわしていたが俺はそんなことよりも…戸惑いを隠しながら声を掛けた。 「名前は」 「柳瀬…清……です。」 名前を聞いて確信へと近づいた。 このまま確かめたい。離したくない。 だが……俺はそんな感情を抑えそっと腕を離した。 席に戻りボーイも部屋を出て行くと隣の女が不思議そうに訪ねてくる。 「お知り合いですか?」 「いや……」 今ここで行動を起こしても無駄に騒ぎになるだけだと考え落ち着かない身体を必死に制御した。ほぼ間違いないと確証を感じていたからこそ今後についてをいち早く考えるべく帰ろうとしたが…。 「そういえばさっきのボーイの子も綺麗な面してたねぇ」 「ここはボーイまでレベルが高いんだね!」 俺の様子に気づいてか香が話題を出してきた。 その問いに俺も食いつき今はこのまま香に場を任せ酒を片手に様子をみる。 「えぇ大人しい子ですが真面目で仕事もできるから私たちも助かっています。」 「お客様からも密かに人気なんですよ〜」 確かに足した情報はないが、何気ない女の言葉に引っかかり身体が反応した。久しぶりの嫌悪感に酒を持つ拳に自然と力が込めらる。 「へぇ…それは凄いね、でも僕の相手は次も是非君にお願いしたいなぁ」 「あら、光栄です。」 慣れた手つきと甘い口調で口からスラスラと言葉を並べながら情報を聞いていく香の能力は大したものだと改めて感心してしまう。 そんな様子にため息一つ付き冷静さを取り戻した俺は後の時間もほとんどを香に任せ必要な受け答えだけした。 香のおかげであいつの現在の情報が少なからず入手できた。店を出て車に乗り込むと香がすぐさま調べさせていた情報も集まった。 今まであんなにも手に入らなかった情報がこんなにも手に入ったことについ俺も口元が緩んでしまう。 「珍しい表情(かお)してるじゃん。これからどうする?」 「……。」 「ちなみに、家はここらしいよ。」 渡された資料に目を通しすぐさま指示を出した。 「すぐにこのアパートを調べろ、それと誰かにあいつを見張らせろ。」 「りょーかい。」 軽い口調で返答すると隣ですぐさま行動に移し携帯を片手に仕事の顔つきで部下に指示を出す香、瞼を閉じ浮かぶ成長した姿を思い起こす。 その日は久しぶりに胸の高鳴りとざわつきに満たされていた……。 周りからは狂った笑みに見えたそん表情(カオ)で息を吐くような声が漏れた。 「やっと……見つけた。」

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