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出会い
「おい」
「え?はい?」
振り返るとまさかの人が不機嫌そうに俺を見ていた。
「なん、ですか?」
「お前さぁ、一年だろ?いつも俺の事見てるよな?喧嘩売ってんの?気に入らねえならハッキリ言えよ」
「えっ!?」
バレてた!?
いや、そんな事は今はどうでも良い。
一番嫌な誤解をされている。
そりゃ、女子が見てたら気になると解釈されるだろうが、男が見てたらそう解釈されても仕方ない。
だけど、俺は…
「違います!!お、俺、先輩の事好きなんです!!」
「……は?」
ヤバい、完全に俺アホな奴だと思われる!でも、誤解は解かないと駄目だと思った。
「いや、えっと、兎に角違うんです!!」
俺は慌てて言葉を探した。
生憎俺は言葉選びも下手だ、加えて目の前に居るのはあの先輩…
どうしようか悩んでたいたら不意に笑い声が聞こえた。
「ふっ…ははは!なーんだ、俺の事気に入らねえから見てるのかと思ったわ。いっつも睨み付けてくるからさ」
「…視力悪いんです」
「眼鏡しねえの?」
「眼鏡とかコンタクトとかすると頭痛がして…」
「そりゃ災難だな。ま、それならいいや」
「あの…好きって…」
「あ?憧れとかそんなんだろ?後輩に好かれるのはまぁまぁ嬉しい。女子には好きとかよく言われるけどさ、男からストレートに好きって言われるのはなかなかねえし。ありがとな、危うく殴るとこだったけど」
「な、殴る!?」
「あんだけ睨まれてたら腹立つぞ?」
「あ、すみません…」
これだけの会話でも容易に納得出来る。
先輩は本当に話しやすいし気作だ。
人見知りのコミュ障のレッテルを貼られている俺でも会話が続く。
「いや、いいよ。お前名前は?」
「き、木村」
「下の名前!」
「誠です」
「平凡な名前だな」
「先輩は格好良いですよね」
「へ?名前知ってんの?あー…憧れてるなら名前くらい知ってるか」
「藤城雪人、先輩…」
「雪人でいいぜ!陰キャのまこっちゃん」
「陰キャ……じゃなくて!!下の名前で良いんですか?」
「別に構わねえよ?みーんなそう呼んでるし、何も特別な事じゃねえだろ?」
「え、あ、はい…雪人、先輩」
「ははは!!すげー顔真っ赤じゃん!!ま、俺の誤解で凄んで悪かったよ。これから仲良くしよーぜ、まこっちゃん」
仲良く…その言葉は生きてきてこんなに嬉しい事はなかった。
心臓は破裂寸前、涙腺も緩みそうになるのに顔がニヤける…こんな気持ち初めて知った瞬間だった。
夢のような出来事。
俺はこの時の事を一生忘れないと思った。
好きの気持ちは意味を違って捉えられたけれど、その時はそれで良かったんだ。
雪人と仲良くなれる切っ掛けなら何でも良かった。
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