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家族と子どものポルカ#4
「ありがとう、征治。……じゃあ、してくれるか?」
村岡はこくっとうなずいた。天馬はベッドに横になる。村岡はベッドから降りて床に座り、天馬の股間に顔を近づけた。そっとスウェットパンツを下ろすと、黒いボクサーパンツは中心が逞しく盛り上がっている。この段階で、村岡の目はとろんと性に飲まれてしまうのだ。
いそいそと天馬の下着を下ろす。ぶるんと飛び出てくる、怒張した肉棒。膨らんだ亀頭と、長く太く、雄の力を放つ勃起した竿に、たっぷりとした袋だ。村岡の目を犯し、脳と肉体を犯す。口に唾液が湧いてきた。グロさすら感じさせる造形だが、村岡には愛らしく美味しそうな肉棒である。
エサを与えられた犬のように舌を垂らし、「はっはっ」と速い息をする。その目はとり憑かれたように朦朧としている。
「……りょ、すけさんのおチンポ、久しぶりに見た……」
「妊娠三か月だってわかってから、一回もしてなかったもんな」
頭を撫でると、村岡はふるっと震えた。鼻を性器の根元に押しつけ、すんすんと臭いを嗅ぐ。
「っあ……、成熟した雄のにおい……」
うっとりと匂いを嗅ぎ、根元をぺろりと舐める。
「ん……」
天馬が息を漏らすと、村岡は悦んで尻尾を振った。そのまま、竿を舐め上げる。剛直はびくびくと痙攣し、血管が浮き上がった。村岡は愛おしそうに、血管のおうとつを舌で舐める。夢中になってしゃぶっていると、天馬は村岡の髪を撫で上げた。短髪が指に気持ちよかった。
村岡は上目遣いになって天馬を見上げ、「ふぐっ」とうめく。鼻から鼻水が垂れた。その性に酔っぱらった目に、天馬の股間はさらに硬くなった。村岡は口元を唾液でべとべとにし、天馬の雄臭い肉棒を一生懸命しゃぶっている。
竿を丹念に舐め上げ、亀頭のくびれを、舌を尖らせて執拗に舐める。お掃除するようなフェラだ。マゾ心が刺激されて、性奴隷のように汁まみれでフェラに没頭する。
「んお……、お、んぶっ……、ぺちゃぺちゃ、ずろろっ」
ちゅるちゅると溢れてくる我慢汁を吸うと、口の中が塩味でいっぱいになる。舌を尖らせて尿道口をほじると、天馬は眉間に皺を寄せてこみあげてくる快感をこらえた。愛おしそうに村岡の頭を撫でる。
「んふ……、ん……、んぐぅ」
首筋まで上気した真っ赤な顔とうつろな涙目で、亀頭を飴のようにしゃぶる村岡。頬が、大きすぎる飴を頬張っているようにぼこっと膨らんでいる。その顔にもむらむらして、天馬はぎゅっと村岡の手を握る。
「あ!」
村岡が目を見開き、しゃぶっていた肉棒から口を離した。
「どうした?」
村岡はへにゃっと笑って、「あかひゃん……」と言った。
「あ、あかひゃん、お腹、蹴った……」
腹をさすさすと撫でる村岡。愛おしそうに、天馬のそそり勃つペニスに唇を押しつける。ぺろりと舐めて、また「あ」と声を出す。
「りょすけしゃんのチンポ舐めてたら、あかひゃん、お腹蹴ってる……。お、おれがしあわせなこと、わかってるのかな」
緩んだ顔で笑う村岡が、天馬は愛おしかった。村岡の腕をつかんで、ベッドに引き上げる。横になった村岡の服の裾を捲りあげて、下着に触れる。
股間は激しく勃起していた。
中に手を入れ、昂ぶった雄をきゅっと握る。
「んお……!」
びくびくっと跳ねる村岡の唇にキスする。しばらく、互いの舌と唾液を味わった。唇を離して、天馬はささやいた。
「ママが幸せなこと、赤ちゃん、きっとわかってるよ。二人でもっと幸せになろうな。おれといっしょにイこう」
天馬が手を上下させる。村岡はぎゅっと恋人に抱きついて、その手を天馬の剛直に絡めた。二、三度手を上下させる。
「は……、あ……っ、りょ、すけ、しゃ……っ」
「ん、いるよ」
手を動かし、互いの雄の印を昂ぶらせていく。優しく、激しく慰め、キスを繰り返す。
「んは……ぁ! あ゛……ぁ」
村岡の手が天馬の手に触れた。恋人の大きく厚い手を導き、膨らんだ腹に重ねる。
「りょ、すけさ……、あかひゃん、わかる……?」
「わかるよ。お腹、蹴ってる。ママ、って呼んでるぞ」
「パパのことも、呼んでりゅ……っ、あ、あかひゃん、とっても、げんき……っ」
鼻水を垂らして幸せそうに笑う村岡に、天馬も幸せと欲情を同時に感じた。わざと強く裏筋を押しあげると、村岡は「んおっ」と鳴いてのけぞった。
「征治……好きだ……っ」
激しく手を上下させる。付き合いはじめた夜みたいなこと、言ってる。天馬はそう思いながら、言わずにはいられなかった。激しく深く舌を絡め、唾液の糸が互いの口に繋がったまま、熱に浮かされたようにささやく。
「好きだ……征治……っ、好きだ、っ」
「お、おれも、しゅき……ぃ」
目の奥をハートにしながら、村岡はぎゅっと天馬にしがみつく。
「しゅき、しゅき、だいしゅき! んおっ」
のけぞってびくびくと跳ね、村岡は天馬の手の中に射精した。天馬も吐き出す。精液は村岡の腹に掛かった。
荒い息をつき、二人はしばらくじっとしていた。
村岡が涙に濡れた目で笑う。
「あかひゃん、動いてる……っ」
天馬はぎこちなく体を動かし、村岡の腹に耳を押しつけた。確かに、命が動く音がした。
「パパだよ」
涙を浮かべて、そっとささやく。村岡は天馬の頭を抱いて、緩んだ顔で微笑んでいた。
挿入はなかったが、久しぶりの、愛する人とのセックス。
村岡はこれまで抑えていた淫乱が爆発し、あの日からほぼ毎日手コキをねだっている。天馬も、求められるのがうれしくて、すっかり村岡の股間のお世話係だ。
だが、それも落ち着いて、二人はまたほとんどセックスのない日々を送っている。
そのあいだに村岡のお腹はどんどん大きくなっていった。天馬は気が早いかなと言いながら、ベビーカーを用意した。おむつの替えやおもちゃ、授乳グッズなどが多くても、載せられるスペースのある頑丈なものにした。
七十八歳になる村岡の祖母、典子 が、北陸から一人旅で孫たちの様子を見にやってきた。
「ほんとに、むりしちゃだめよ。征ちゃんは頑張り屋さんなんだから。天馬さんがいるんだから、なんでも頼りなさいね」
大好きな祖母に久しぶりに再会し、そばにいてもらって、村岡はとても喜んだ。祖母の小さな手を握り、「ありがとう、おばあちゃん」と笑顔になる。
「天馬さん、征治と赤ちゃんのこと、よろしくお願いします」
頭を下げる典子に、天馬も畏まって頭を下げる。
「はい。不肖ながら、征治と子どものこと、守っていきたいと思います。おれこそ、よろしくお願いします」
まあ、と微笑む典子。小柄で気品があり、今でも可憐、そして芯が強い典子のことを、天馬も好きになっていた。なにより、母親として大先輩である。村岡もしきりと出産と子育ての話を聞きたがった。
「焦ってしまうときもあると思うけれど、深呼吸してね。子どもも、パートナーも、あなたとは違う人間よ。そのことを忘れないようにね」
村岡はこくりとうなずいた。
「ねえおばあちゃん、しばらく泊まっていって! いっしょに赤ちゃんの服とか、おもちゃ見てほしいな。それから、観光もしようよ」
目をきらきらさせる孫に、典子はふふっと微笑んだ。
「そうね。お父さんとお母さんがいいって言ってくれたら、いましょうかね」
「やった!」
「おれ、車運転しますよ。典子さんの足になります」
天馬が身を乗りだすと、うれしいわ、と祖母は微笑んだ。
「あ」と村岡が声をあげる。
「赤ちゃん、動いた!」
「今日は特に元気だな」
「きっと、ひいおばあちゃんが来てるから喜んでるんですね」
そう言って笑いあう孫とその恋人の姿を、典子は優しい眼差しで見つめていた。
「性別は、もう聞いたの?」
典子が尋ねると、村岡はこくっとうなずいた。
「男の子だって」
「そう。名前は考えてるの?」
「まだ」
村岡と天馬は顔を見合わせて微笑んだ。村岡が典子の目を見つめて言った。
「でも、男の子でも、女の子でもいい名前にしようと思う。おれ、子どものころは女の子になりたかったから。もし子どもが、生まれもった体の性別に違和感があっても、大丈夫なように」
そう、と典子は微笑んだ。
こうして、天馬と村岡は優しい眼差しに見守られながら、子どもを迎える準備を進めていた。
すっかり家族ね。
それが、典子にはうれしかった。
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