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第3話 ティータイム

ガシャン!パリン!  「もう!まぁ子!何枚割ったら気が済むの!?」  「ごっ、ごめんなさいっ!!痛っ!」  「…全く…見せて」  涙目のまぁ子さんの指を取ったちぃ子さんは、血が出たまぁ子さんの指をチュッと吸った。  「んっ!」  「止まった…。ほら絆創膏。」  「ありがとう。」  「あぁもう…ぐちゃぐちゃじゃないの!ほら、こうして…」  不器用でおっちょこちょいなまぁ子さんは、尊敬の眼差しでちぃ子さんを見ていた。  「ちぃ子ちゃんはすごいなぁ…ちぃ子ちゃんみたいになりたい」  「そんなこといいから。レイさんに持って行って。このカート使って」  テキパキと指示するちぃ子さんは、できる人でかっこよかった。  まぁ子さんがゴロゴロとカートを押して行ったのを見送って、思い出したかのようにこちらを見た。  「何突っ立ってんの。早く動きなさい」  「すみません!」  「全く…世話が焼けるわ。マコ様はミルクティーが大好きなの。必ず出してあげて。」  「分かりました。」  「……」  「どうしました?」  「…良かった。まぁ子、今日は無事にレイ様のところに着いたみたい。」  「優しいんですね」  「見てられないだけよ。レイ様の懐の広さは素晴らしいわ。」 話しながらも手は無駄なく動き、ティータイムの準備ができた。  「ありがとうございます!」  「はいはい。」  次の準備に入ったちぃ子さんは、全て頭に入っているようで無心で準備をしていた。  「おっとっと…溢れそう」  そろりそろりとマコ様の部屋に向かう。下しか見てなくて、ドアが開いたことに気が付かなかった。  「きゃぁ!」  ガシャン  「痛たた…も、申し訳ありません!!」  「だいじょーぶ?」  息を飲むほどの美少年が手を差し伸べてくれた。  「あ、ありがとうございます!」  「たぁ子大丈…っ、ユウ様!申し訳ありません!」  「いーよ、いーよ。大丈夫。ちぃ子、この子が新人ちゃん?」  「そうです。たぁ子、なんてこと!」  「ちぃ子、誰にだって失敗はあるよ。許してあげて。」  ちぃ子さんは慌てて絨毯を拭いていたが、たぁ子の掌の火傷に気付いて、すぐに手当てをしてくれた。  「さすがちぃ子。よく気がつく子は大好きだよ」  「ユウ様のも、手当て致します。」  「あはっ!バレてた?ちぃ子には敵わないや」  あははと笑って腕を出すと、真っ白な手首が真っ赤になっていた。  「ユウ様のから手当てしたら、叱られますので。」  「当たり前でしょ?まずは女の子から。」  ピンクの髪がよく似合うユウ様は優しくて、担当なのが羨ましく思った。ちぃ子さんがユウ様の手当てをしている間に、もう一度準備をしてマコ様のところへ行った。  コンコン  「失礼します。ミルクティーをお持ちしました。」  「遅かったね。ユウくんケガさせた?」  「申し訳ありません。ぶつかってしまいまして。」  素直に謝って、ミルクティーをテーブルに置くと、包帯をしている手を掴まれた。 「あの…?」  「君、可愛い顔してるね。」  「そんなことありません。では、失礼します。」  「待って。主人が話してるのに出て行くとかありえないから」  「っ!大変申し訳ありません!」  「うん、じゃあここに座って。」  「え!?」  ポンポンと膝を叩くマコ様に、目を見開く。  「そんなこと、できません。」  「新人のくせに言うこと聞けないの?」  「恐れ多いです。」  「…ふぅん。つまんない。下がっていいよ」  「……」  「前のメイドは素直だったのに」  「っ!…失礼しました。ごゆっくり」  頭を下げて、逃げるように部屋を出た。  (なんか…試されてる?)  パチンと頬を打って気合いを入れ直した。

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