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第6話

 今までエクエスも王の側にいる美しい踊り子や歌姫を目にしてきたが、その彼女達よりも美しい銀色の髪。  それに、美しく響く声に、美しく笑う顔。  性別を超越した美とでも言うのか、圧倒的な美を備えた男性がエクエスの目の前に立っていた。 「あの、将軍様?」 「ああ、すまない。少し今宵は疲れているようだ。えーと、もう1度、そなたの名前をお聞かせいただけるだろうか?」 「あ、はい。私はメテオアと申します。将軍様」  メテオア。  確か、レクターよりは北洋や南洋系に多く聞く名前で、意味は『流星』という意味だったとエクエスは思いを巡らせる。  確かに、腰まで届きそうな銀色の髪といい、透き通るような白い肌といい、流れるような声質といい、異国を隔てないで渡り歩く美しい流星を彷彿とさせた。 「私はエクエス。エクエス・フォルティア・ソラウニカ・アブソルだ。まぁ、孤児院にいた時はこんな大層な名ではなかったのだが」  今でさえ将軍という位にいる彼だが、幼い頃に実の両親が亡くなったか、飢えからエクエスを捨てたかで孤児院で育った。  彼は必死に努力して、騎士を輩出する名家の子息にも負けぬ武力をつけ、知略をつけた為、飢えや貧しさから苦しむことはなくなっていった。 「確かに、飢えや貧しさとは無縁になった。私の軍や武具、防具だけでなく、育ての父の孤児院へも王は多大なお力もくださっている。でも、本当に良かったのか……自分の選んだ道は間違えていなかったのか……と思うこともある」  エクエスは珍しく自身の迷いを吐露していた。  確かに、先程の自分の身の回りの世話をする少年を始め、屋敷の者には言えない。自ら率いる軍の部下の騎士。ましてや、王にも当然、打ち明けることできない。また孤児院にいる育ての父や兄弟達にもエクエスの現実は詳しくは知らない筈で、知られたくもない。 「すまない。そなたも長旅で疲れているだろうに……」  エクエスは先程、少年に失敗した為、もう無理にメテオアへ笑顔を向けずに、目を合わせないで言った。 「もし、そのままでは帰れぬということならば、今日は1曲、歌って出て行ってくれれば良い」 「畏まりました。将軍様」  すると、メテオアは軽く会釈をすると、異国の弦楽器をトランクから取り出し、奏でながら歌を歌い始めた。

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