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第13話

 15XX年X月X日。  レクター諸国の心臓部を誇っていたレクター宮殿が隣国の同盟国に裏切りによって崩落し、3日間、炎に包まれた後、レクターは陥落した。  ほとんどの国民が無抵抗のまま死者となっていた中、将軍であるエクエスは戦うことなく、レクター宮殿跡地が見渡せる小高い丘にいた。 「将軍……いえ、エクエス様」  長い銀髪の吟遊詩人が歌うように、エクエスを呼ぶ。  それはエクエスが地獄のような三日三晩を繰り返す中、思っていたメテオアだった。 「貴方の守る国はなくなりました。貴方の愛していた孤児院の方達も……貴方が守っていたものは何かも」  エクエスにはメテオアの声は聞こえないのか、深い眠りについているようだった。 「貴方が目醒めたら、死を選ぶかも知れませんね。数日間、見ていた貴方は清廉で誇り高い人だから」  メテオアはエクエスを乗せた馬車を発進させる。蒸気を使った馬のいない馬車はそんなに大きくないものだが、2人を乗せても宙へ浮き、亡国と化したレクターを離れていく。 「でも、私は貴方が生きてくださることが嬉しいのです」

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