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第12話 出張パニック
見た事のあるスーツ姿が金髪のスラリと細身の男性と一緒に歩いている。
二人の距離は近く、耳打ちするような仕草で微笑み合いながらフロントを通過して行った。
ガタンと席を立ち、周りの人から見られながらコーヒー代をテーブルに置いて、すみません、とカフェを出る。
ロビーからエレベーターホールへ目を向けると扉の開いたエレベーターに二人は乗り込んで行った。
マナーは悪いが走ってエレベーターに向かう。
閉まりきる前に扉をグッと手で押さえて開くと、健吾と目が合った。
「ーー!!瑞穂!なんでここに?」
健吾は驚いた表情の後ですごい笑顔になった。なんで?そんなにニヤついてんの!?
オレは怒ってるのに!!!!
「健吾の…バカッ!!大っ嫌い!!!」
「ちょ、瑞穂っ!!」
扉から手を離してまた走ってホテルのロビーを通り抜け、ホテルから出てこの場から早く離れたいと闇雲に走ってしまった。
土地勘もなく人が居ない方へと走り抜けてしまい、はぁはぁと息を切らせて立ち止まり、後ろを振り返った。
健吾が追いかけて来ている気配はない。
なんだよ…と本当は追いかけて来て欲しかったと思いながら息を整えて周りを見回した。
「何処だよ…ここは」
少し如何わしい場所である事に気付くと携帯を手にするが、電源が切れている事を思い出してチッと舌打ちをしてしまった。
「あん?何?お兄さん今オレらに舌打ちしなかった?」
「え?あ、してないです…」
「お兄さんイケメンだねぇ。今から何処行くの?いい店紹介するよ?」
ニヤニヤと笑いながら近寄ってくる3人の男達から距離を取りながら来た道を戻る。
「お兄さーん。ねえ、なんなら一緒に飲まない〜?」
「聞いてる〜?イケメンさん?」
男達を引き連れながら如何わしい場所から少し離れる事ができた。
どちらかと言うとオフィス街に近い?雰囲気になってきて、男達の方が浮き始めていた。
「イケメンさんよぅ!コッチで飲もうや」
グイッと腕を掴まれて体がフラリと男達の方へ向いてしまう。
「ちょ、やめて」
「あれぇ?こんな所で何やってるの?」
「なんだー?てめぇは」
「あー、連れだけど?待ち合わせはコッチでしょ?ほら、行こう」
瑞穂の腕を取り返して男達から離れる。
「じゃ、お兄さん達ごめんね。コイツ連れてくから」
フワリと香る匂いが知っている匂いだった。
「あ……さっきの……」
「いーから、ちょっとこのままあっちまで行こう」
腕を握られたまま、オフィス街のカフェの前までやってきた。
「ここまで来れば大丈夫かな?」
「あ…の…度々ありがとうございました…」
「あ、やっぱりさっきの…。どうしたんですか?お友達と合流できなかった?」
「あ…会えたというか……」
パタッパタッと涙が垂れてしまった。
「ーーっ。えと、時間良かったから…そこのカフェ入りましょうか…」
「えと…」
「オレ、飯まだなんですよね。そこで軽く食べてもいいですか?」
「あ…はい。すみません…気を使わせてしまって…」
グイッと涙を手で拭って答えた。
お店に入るとカフェ&バーで、ザワザワと賑わっていた。
「金曜日なんで、混んでますね。何か食べます?それとも飲みますか?」
「あ…お酒は…やめておきます…すみません。アイスコーヒーにしておきます」
「ああ、そんな謝らないでください。じゃオレは一杯だけビールを。それとこの辺のツマミと…適当に頼んでいいですか?」
「あ、お任せします…」
強引ではないけど、しっかり決めてくれる。安心感のあるタイプの人だな…。
「所で、なんであんな場所に?駅西側はちょっとそういう系のお店がおおいんですよ。友達には会えなかったんですか?」
「あ…会えたんですけど…一方的に怒鳴って走って逃げてきちゃったんです…」
「あらら、喧嘩?」
「喧嘩にも…なってないですよ…」
「そうですか…。あ、すいませーん。オーダーいいですか?ビール二つと、コレとコレ、あとコレお願いします」
「え?あの、オレ飲まないって…」
「まあまあ、一杯くらいお付き合い下さいよ」
ニコリと笑う顔にイヤな匂いは潜んでおらず、素直に頷く事に何も不安を感じなかった。
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