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 人の噂、特にスキャンダラスなものというのは、光の速さで回っていくものらしい。  休み時間の度に、好奇の目で知らない人が見に来る。  廊下から俺の顔を見ながら、ヒソヒソ話している。  その割にクラスメイトは誰ひとりとして話しかけてこないし、昨日まで友達だった3人は、徹底的に俺を避けている。  もう無理かな。帰ろうかな。  そんなことを考えながら4限目の授業を終えたとき、教室の前のドアがガラッと開いた。  すきまからひょっこり顔を出したのは……小宮くん。  女子がちょっと色めき立って見たけど、小宮くんは俺に向かって小さく手招きをした。 「藤下くん。ちょっと」  何の用だろう。  いや、当たったところが大丈夫かを気にして来たのだろうけど、3組にこの噂がいってないはずがない。  こんなタイミングで俺と話したがるなんて、変な誤解とか考えないのだろうか……と、逆に心配になってしまう。  でも、呼ばれたものは仕方がない。  気が重いながらに立ち上がったら、小宮くんは、とんでもないことを口にした。 「お昼。一緒に食べない?」 「え?」  右手に持ったコンビニ袋を、ガサッと持ち上げて見せる。  どういうつもりだ……?  本気で理解しがたい状況に混乱する。  噂を知らないのか?  だとしたら、彼のためにも断った方がいい気がする。  それにしたって、1度は話しかけないと。  申し訳なく思いながら近づき、軽く頭を下げた。 「あの、お昼っていうのは……」 「ちょっと、藤下くんと話したいなって思って。いいかな」 「えっ」  戸惑う。断るべきか。  しかし首をかしげる小宮くんは、全く気にした素振りを見せていない。 「それとも、誰かと食べる? だったら放課後とかでもいいんだけど」 「いやっ、食べる人はいない……です」  失ってしまったのだから。 「じゃあ、一緒に食べてくれる?」  優しい顔で尋ねてくる小宮くんが何を考えているのかはさっぱり分からないけど、成り行き上仕方なく、ついていくことにした。

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