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 軽音部に入って、2週間が過ぎた。  寝ても覚めてもギターのことを考えていて、朝起きてギター、昼休みには達紀とご飯を食べてギター、夜寝る前のYouTubeはやめてギター。  こんなに何かに没頭するなんて、初めてだった。  そして、祐司のことを全く思い出さなくなっていたことに気がついたのが、ついさっきのこと。  お風呂に入っていて、ふと、『そういえば』くらいの感じで思い出したのだ。  あんなに四六時中、何につけても祐司と結びつけて考えてしまって、苦しんでいたのに。  本当に本当に、2週間、一切思い出さなかった。  次、達紀とふたりで会うことがあったら、このことを言いたいなと思った。  思いの丈を伝えれば、後ろめたいことは何もなく、達紀と付き合えるかも知れない。  現にもう、達紀がいて、バンドがあれば、あとは何でもいいやという感じにはなっている。  お風呂から上がって、部屋でまたギターの練習をしていたら、ふと、達紀との会話を思い出してしまった。 ――藤下くんは、男役と女役、どっち派? 「う……」  達紀の裸を思い浮かべてしまって、これはもう、完全に邪念だ。  練習に障るので、考えないようにする。  しかし。 ――僕はいつも、する側で想像してる  ギターに、当たってはいけないものが当たりそう。  なんかそれはダメな気がして、慌ててギターをスタンドに戻した。  そして、頭を冷やすべく、ぼふっとベッドに倒れ込む。  まだ付き合ってもいないのに、そういうことを想像するのは、良くない。  自分から待ってくれと言ったくせに、達紀に失礼だし、そんな変態みたいなことを考える自分はダメだと思う。  ……そう思うのに、ぼんやりと達紀の裸が思い浮かんで、そしたら、完全に勃起してしまった。 「ぁぅ……」  どうやったらおさまるか。  一生懸命深呼吸をしてやり過ごそうとするのに、うまくいかない。  とりあえず抜けばおさまるかと思い、達紀のことは一切考えないようにして、いつも見ている無料動画サイトを開いた。  しかし、ずらりと並んだサムネイルは全然頭に入ってこなくて、達紀のことばかり考えてしまい、下がずくずくとうずく。  なんでだろ。  いままで全然、そんなこと想像したことなかったのに。 ――僕はいつも、する側で想像してる  達紀も、部屋でひとりでズボンを脱いで、男の裸を想像したりネットで見ながら、してるんだろうか。  あんなさわやかな感じだけど、しないわけないし、してるんだと思う。  あの達紀が……と思ったら、どんどん興奮してきてしまって、考えるのが止まらない。  どんな表情なんだろう。  眉間にしわを寄せて、呼吸を乱して、こすって感じているんだろうか。  あのきれいな長い指で、自分のものを上下して……。 「ぁ、ぁ……っ」  我慢できなくて、ズボンの中で射精してしまった。  全然、触ってもいないのに。  頭が冷えてくると、途端、罪悪感が芽生えて、憂鬱な気持ちになった。  仕方なくそっと洗面所に行き、汚れた下着を洗う。  2週間ぶりに、祐司と達紀を比べる。  ただし、苦しむわけじゃなくて。  祐司には感じなかった、よりリアルな性のことを、達紀には求めてしまう。  やはり、ゲイだと分かっているからだろうか。  それとも、好きだと言ってくれていて、いつかはそうなるかも知れないと思っているからだろうか。  ちゃんと告白するとか、そういうのをすっ飛ばして失礼すぎる想像をした挙げ句、その妄想だけで暴発しちゃったなんて。  情けないったらありゃしない、と思う。

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