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 スタジオ練習が終わって、みんなと解散したあと。  達紀とふたりきりになったところで、先ほどの話を振った。 「ねえ、さっきの基也の発言。『ゲイだからって即できるって思考がヤバイ』ってやつ」 「ああ、核心突かれちゃった感じだよね。ちょっと自分が恥ずかしくなった」  達紀は盛大な苦笑いをした。  しかし、俺が言いたかったのはそういうことじゃない。  真面目な顔で、ふるふると首を横に振った。 「違うよ。達紀は笹田くんとは全然違う。騙して呼び出したわけじゃないし、『嫌だったら断ってくれてもいい』ってちゃんと前置きしてくれたし、それに、結局しなかった。だから違うよって、一応言っておきたかった」 「あはは、お気遣いありがとう」  達紀は恥ずかしそうに笑ったあと、ちょっと考えてから言った。 「……あのね。前にあおが、『もし初めて会ったゲイが俺じゃなかったら、その人のこと好きになってた?』って聞いてきたことあったじゃない?」 「うん。ずっと怖くて聞けなかったやつ」 「僕もね、基也の発言を聞きながら、最初にキスしたいって言った日のこと思い出してたんだ。それで分かったんだけど……」  達紀は、穏やかな表情で言った。 「ゲイバレした事件、他の人だったら、そもそも話しかけようと思ってなかったと思う。あおだから友達になりたいと思ったし、可愛くて、好きになった」 「え……」  胸が、きゅうっと締め付けられる感じがした。  うれしいのと、ドキドキするのと。  言葉を詰まらせていると、達紀は目を細めて笑った。 「あーあ。笹田がグズノロマでよかった」 「え!?」  聞いたこともない悪口で、驚いてしまう。  達紀は、いたずらっこみたいにクスクス笑った。 「僕、本当は全然許せてなくて、ずっと怒ってたけど……グズノロマだったのはよかったなって。あいつは、あおの噂聞いてから実際呼び出すまでに、2ヶ月もかかってる。もたもたしててくれて助かった。その日のうちにお昼に誘った、僕の圧勝」  ぽかんとしてしまう。  ややあって、おかしさがこみ上げてきた。 「何それ。そもそも達紀と笹田くんじゃ、勝負にすらなってないよ」 「……そうなの?」  達紀は不思議そうな顔をしている。 「俺だって、噂聞いて現れたのが達紀じゃなかったら、別に好きになってなかった。ってことが、笹田くんを見てよく分かった。初めて現れた同性愛の人が笹田くんだったら、どれだけ優しくされても、別に好きになんなかったと思う」  祐司のことを引きずりまくってた俺の心をかっさらったのは、間違いなく、達紀が王子さまだったからだ。 「友達を失ったのは事実だけど……でも、達紀と付き合えたから、自爆してよかった」 「じゃあ僕は、木っ端みじんになったあおの欠片を全部拾い集めてよかった」  ぽすっと抱きついてしまいたかったけど……道ではやっぱり、まずいよね。 <4章 げきど 終>

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