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 その週の土曜日。  達紀の家に行くと、結菜ちゃんのその後の話をしてくれた。  無事好きな子に住所を渡し、ついでになんと、キスしてきたらしい。 「ママには内緒って、はにかみながら教えてくれたよ」 「最近の小学生ってそういう感じなんだー……」  つい、とてつもなく頭の悪そうな感想を口に出してしまう。  達紀はクスクスと笑った後、そっと立ち上がり、カーテンを少し開いて外を覗いた。 「近所の子供も、ピンポンダッシュ犯も、宅配便もいない、かな」  振り返った達紀は、控えめに笑っている。  そしてそのまま俺の目の前に来て、床にぱたんと押し倒した。 「誰も来ないと思う。していい?」  心臓が早鐘を打つ。  俺はロクに声も出せずに、こくっとうなずいた。  舌を絡ませてキスする。  息が上がっているのは、ただ酸素が足りないからじゃない。  顔が熱いのも、9月の残暑が厳しいからではない。  興奮と、期待と、胸の高鳴りと。 「はあ、……ん、たつき、すき」 「うん。大好きだよ、あお」  きょうこそ、もしかして、と思って来たのは正直なところだけど、こんなに唐突だとは思わなかった。  達紀も、おあずけはもう限界だったのかも知れない。 「服、脱がしたい」  達紀は、俺のシャツのボタンひとつひとつを、緊張の面持ちで外していく。  全て開いて抱き起こされると、シャツははらりと床に落ちた。  達紀は手早くTシャツを脱いで、ぽいっと投げ捨てる。  そのままの流れで俺をお姫さまみたいに横抱きにすると、すたすたとベッドに運んで寝かせた。 「赤い糸、どこ?」  達紀は俺の左手を取って、小指を口に含んだ。  やらしい感じで音を立ててなめられると、性的に感じるところでもなんでもないのに、興奮してきてしまう。 「わ、かんな……はぁ、んっ……」 「ふふ、いじわる言ってごめんごめん」  手首、二の腕、わきのあたりキスされて、徐々に、期待しているところに近づいてくる。  思わず身をよじると、達紀は何も言わずに、乳首に吸いついた。 「……っ、ぁん、ん……、はぁ」  ちゅうっと吸われたり、舌先でチロチロなめられたり、ぐにっと押されたり。  達紀は胸を刺激しながら俺のズボンのファスナーに手をかけていて、そのまま器用に脱がされた。 「あお、勃ってる」 「ん、ふぅ……きもちい」 「僕のも、触って確かめて?」  達紀がくちびるを離す。  股間のところにそっと手を伸ばしたら、固くなっていた。  これを挿れてもらうんだと思うと、期待でどうにかなってしまいそう――怖がっていた最初とは大違いだ。 「達紀のちんちん、見たい」  達紀は目を細めて笑い、下着ごとズボンを脱いだ。  なめたい、と、衝動的に思う。  起き上がって口に含もうとしたら、おでこを押さえられた。 「ダメだよ。僕が先にイッちゃったら、挿れるときうまくいかないかも知れないし。あおの、してあげるから」  言われるままに四つん這いになり、頭だけ伏せて、お尻を突き出す形になる。  これも、最初は恥ずかしかったけど、何回もしているうちに気持ちよくなっていった。  俺たちは本当に、ちょっとずつちょっとずつ手探りでやってきたんだなと、少し感慨深い気持ちになった。  達紀はローションを手に取り、お尻の周りによくなじませて、ゆっくりと指を侵入させてきた。 「……はぁ……、ぁ」 「痛くない?」 「き、きもちぃ……」  いつもよりだいぶ気持ちいい。  体が、この先のことを期待しているからかも知れない。  達紀は、中を確かめるようにしながら指を抜き差しして、徐々にほぐしていった。  ちゅぷ、ちゅぷ、と、粘着質な音が、気持ちを膨れ上がらせる。 「あお、可愛い。腰揺れてる」 「は……、んっ、いつもの気持ちいいところ、触って」  達紀は、中でくいっと指を曲げた。  電流が走ったみたいに、体がビクッと跳ねる。 「……っ、ぁあ」 「ここだよね、あおが好きなの。うまく突けるかな。難しそう。できなかったらごめんね」 「おれも……達紀のこと気持ちよくしたい。けど、んっ、うまくできなかったら、ごめ、ぁあ……っ」  しゃべりながらもいいところを何度も触られて、体が跳ねてしまう。  時間をかけて、ゆっくりとほぐしてもらう。  ちゃんと、達紀のことを受け入れたい。  達紀は指を引き抜くと、俺の背中に覆いかぶさるようにくっついて、耳元で尋ねた。 「挿れていい?」 「ん、して……」  達紀が体を起こすと、俺はぽすんと横向きに倒れた。  脱力したままズルッとずれて正面を向く。  達紀は、上気した顔で俺を見下ろしていた。  達紀は軽く俺の脚を抱えると、少し申し訳なさそうに尋ねてきた。 「なんか、思ったより高く脚抱えないと入らなそうだな。姿勢苦しくなっちゃうかもだけどいい?」 「うん。……なんでもいいよ、繋がれれば」  達紀はくちびるを引き締めてこくっとうなずいたあと、俺の腰の下に枕を挟んだ。  かなりローションを足して中に塗りつけて、コンドームをつけて、その周りにもローションを足して。 「苦しかったり痛かったりしたら、言ってね」  固いものがお尻の間に当たった。  そしてそのまま、ずぷずぷと沈んでくる。 「…………っ」  苦しい、けど、達紀のちんちんが俺の中に入ってきてる。  ずっとずっと待ってて、こうして欲しかった。  パンパンに苦しいこの圧迫感さえ、俺にとっては、ひとつの実感だ。  いままさに愛されているのだという、実感。 「……まだ半分くらいなんだけど、大丈夫? 最後まで挿れていい?」 「ん。全部挿れて」  達紀は体重を乗せて、ぎゅうっと奥まで押し入ってきた。 「……っ、あお、これで全部」  余裕なく、こくこくとうなずく。 「大丈夫? 苦しい?」 「……苦しいより、うれしい」

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