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 達紀がぎこちなく体を揺するのを、しがみついて受け止める。  ぬちっ、ぬちっ、と、繋がった部分から音がする。 「はぁ、……ぁん、たつき……っ」 「平気? 痛くない?」  ずーっと心配してばっかりの達紀に、お知らせしてあげないと。  達紀の首の後ろに腕を回して、ぎゅーっとしながら言った。 「達紀、俺ちゃんと気持ちいいよ」 「……ほんと? 気持ちいい? 僕だけ独りよがりになってない?」 「なってない。中、とっても気持ちいい」  達紀は、安心したように眉尻を下げた。  俺はちょっと笑って続ける。 「痛いとか苦しいより、うれしいの方が大きいよ。ずっとこうしたかったんだもん。本当に好きで大好きで、きっと達紀とエッチしたら」 「あお、ダメ」  達紀はキスで口をふさいでから、苦笑いして言った。 「そんな可愛い顔して殺し文句みたいなの。僕、何にもしてないのにイッちゃいそう」 「え? ぁ……っ、ぁあっ」  達紀はゆっくり動き出した。  長く息を吐きながら眉間にしわを寄せていて、多分、イかないように我慢してる。 「ん、……はぁ、ぁ……っ、んっ」 「……ぅゎ、だめ、全然もたなそう……」  初めてで、お互い余裕なんかちょっともなくて――いつだったか達紀は、恥ずかしそうに『ひとりでするときはこんなに早くないよ』と言い訳していた。 「はぁ、……いいよ、イッて。イッて……ぁあっ」 「あお、あおっ」  何度も名前を呼ばれながら奥を突かれて、気持ちよさに、何度もビクッビクッと震えてしまう。  達紀は息を切らしながら言った。 「イクね、……大好きだよ」 「うん」 「…………ぅ、…………ッ、……っ!…………!……、……っ!」  お腹の中で、脈打つのが分かる。  体がきしみそうなくらい強く抱きしめられて、好きな気持ちが止まらない。 「…………っはぁ、……はあ、はぁ……」  俺の胸の上にぺたっとくっついた達紀は、重力のままにずるりと引き抜いた。  お腹の中の質量がなくなって、少し切なくなる。  呼吸を整えた達紀は体を起こして、ちょっと泣きそうな顔で笑った。  俺のおでこを何度もなでる。 「うれしい。あおの中でイけた」 「よかった」 「あおは? どうして欲しいとかある?」 「……えっと、じゃあ。口と手でして欲しい、かも」  尻すぼみなおねだりになってしまった。  達紀は目を細めて笑い、コンドームを縛って捨ててから、俺のゆるやかに勃ち上がったものを口に含んだ。 「……ぁ、ん、んっ」  じゅぷ、じゅぽ、と音を立てて、顔を上下する。  ちんちん全体が達紀の唾液で濡れていて、手で握って擦られたら、とんでもなく気持ちよかった。 「あっ、あん、んッ……ぁあっ、きもちぃ」  達紀はちんちんの先の方をくわえながら舌で刺激しつつ、根元は右手でしごいている。  ……と思ったら、左手がお尻の中に入ってきた。 「あぁッ、ん、それ……ぁ、はぁ、ぁあんっ」  こんなこと、されたことない。  中も外もでおかしくなってしまいそう。 「それだめ、ぁあ……っ、や、ん、ぁあッ」 「だめ? つよすぎる?」  くぐもった声で聞かれて、顔が熱くなった。  ほんとはダメじゃない。けど、恥ずかしい。 「ちょっとよわめようか?」 「ん、んぅ……、いい。そのまま、して……、」  消え入りそうな声で言ったら、達紀はぐっと中の1点を押した。  思わず声が裏返る。 「あぁッ」 「きもちいい? へいき?」 「ん、ん……っ、気持ちいい、ぁぅ、イッちゃうよぉ……」  しごく手が速まり、口での愛撫も激しくなる。  自分が乱れていくのが分かる。 「ぁあッ、も、……ぅ、イッちゃ、ぅ……っ」  達紀がお尻の中をじゅぶじゅぶとかき回した瞬間、頭が真っ白になった。 「あぁあ!……イクッ、イッ…………ぁああッ!…………!ああぁ……ッ!」  のけ反りながら、達紀の口の中に射精。  ビクビクと痙攣するのが止まらなくて、絶対達紀は苦しいって分かっていたのに、喉の奥を突くようにしてイッてしまった。 「ゲホッゴホッ」 「……ご、ごめんっ」  慌てて飛び起きると、むせる達紀は――いまにも笑い出しそうな顔をしていた。 「……ん。受け止めるのまで下手くそだった。あはは」  口元をぬぐった達紀がゆるっと両手を広げたので、体を寄せた。  ぎゅーっと強く抱きしめられて、とてつもない幸福感に包まれる。 「最後までできたね」 「うん。やっとできた」  達紀は俺の額にちょっとキスしてから言った。 「なんか、ホッとしてる。あおのこと好きだし、それって別に、セックスするとかしないとかなんにも関係ないはずだけど……でもやっぱり、普通のカップルがしてるみたいにしたいって、思ってたから」  優しい目でするすると頬をなでられたら……なぜか、いたずら心が湧いてしまった。 「達紀、エッチなことするときの慌てっぷりとか、すごい可愛いんだよ。優等生の小宮くんと全然違って」  わざとらしくクスクス笑ってみせたら、達紀は目を見張って言った。 「何それ。え、すっごい恥ずかしい。直す。そのうち慣れると思うしっ」  可愛いのは、そういう慌てっぷりだというのに。 「ううん。俺しか知らないからいいの。俺のせいでそうなってるっていうのも、なんかいいし。永遠にそんな感じでいて欲しい」 「永遠にはやだよ。そのうち慣れるから」  不服そうな達紀はやっぱり可愛い――可愛いなんて思う自分の変化にも、驚くけど。  俺は、まじまじと達紀の顔を見つめながら言った。 「なんか俺、達紀と出会って変わった。人って大事だよ。生きるためには、色々なものがものが必要だけど……食べものとかお金とか。でもやっぱり、1番大事なのは人なのかなあって、最近よく思う」  達紀に好きって言ってもらえたのも、バンドで楽しくやれている現状も、幸せなことだ。  自分や他人のキャラがどうとか決めつけていた頃とは、大違いだと思う。  達紀は穏やかに微笑んで言った。 「あおは、僕の人生の最重要項目だよ」  さらりと言う彼の凪いだ瞳に、俺は一生惹かれ続けるのだろう。

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