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第三章 第7話
「満足なんか…していないっ」
顔を上気させた彼の言葉は二通りに解釈出来ることに気付いた。
胸や足の付け根の反応は彼が感じていることを雄弁に物語っている。
全ての男性の感じる場所がそういう反応を示している上、男性とのセックスの体験がどうもあるらしい香川教授は胸までが紅の宝石のように硬くなっている。
――満足していないのは最後まで行っていないからか――
というのが一番目に思いついたことだ。胸を愛撫されてこれだけ感じるのは祐樹の知る限りゲイの中でも女役と決まっている。最後までしていないから満足していないと答えたのか。
それとも、「満足した」と白状してしまえば、大学病院では知らない方がモグリだろ…と思われる長岡先生との結婚話をしなければならないので口先だけでそう言っているのか・・・のどちらかだと推測する。
彼を満足させたと雄弁に白状させるには、自分のモノで彼の繊細な場所に入り込み、かつ、彼の熱情を吐き出させることか。
それとも、彼が我慢出来ない状態まで昂ぶらせておいて、意地悪く最終段階でせき止めてしまうのはどうだろうか。
彼の本音を少しは聞いていたが、全部聞きたい。どちらが有効かを考え、後者を選んだ。
祐樹の彼の中に包まれたい欲求は有ったが、彼の物言いが高飛車だったので意地の悪い方をツイ選択してしまう。
絶頂をせき止めるにはもう一本縛めるモノが必要だ。
自分のネクタイにしようかと考えた。が、セックスの場合肌を露出した人間の方が屈辱感を抱くのは分かっていた。自分はセックスに必要な場所以外、衣服を乱すことはするまいと思った。香川教授が切羽詰らないうちに紐のようなものを捜しておこうと思った。
浴衣の帯はどうだろうかと思い至る。先ほど冷蔵庫を探すために色々な引き出しを開けている。その中にはガウンと共に浴衣が収められている家具も有った。
このホテルは、日常使うもの(例えば、テレビ)も、家具の中に納まっていて、探すのに容易ではなかった。
「少し待っていて下さいね」
そう薄桃色に染まった耳に囁くと、ベッドから降り、先ほど見た箪笥状の引き出しを開け、浴衣の帯を取り出した。
香川教授の顔が不安げな表情を浮かべる。
「大丈夫ですよ。痛くはしませんから。まぁ、我慢は強いることにはなるとは思いますが」
その言葉を聞いて、安心したように微笑んだ香川教授は熱い吐息と共に祐樹に囁く。
「抵抗はしないから・・・ネクタイを外してくれたまえ」
口調はしおらしげだが、語尾が偉そうな命令語だ。多分香川教授は普段の言葉遣いに慣れきっているのでそういったのだろうと思うが、すこぶる面白くない。
「ダメです。思った通りの抱き方をします」
にべもなく言い切った。
そして、彼の既に昂ぶったモノを衣服から解放した。
彼のモノは驚いたことに先端から雫が垂れていた。もうこんなに感じていたのかと驚く。
「充分感じているじゃないですか」
「感じてなんかいない」
あくまでも強情を張る彼に、傍らに置いておいた浴衣の帯を手に取り、ソコの根元をきつく縛った。
これだと彼は絶頂を極めることが出来ない。
泣いて縋ってくるまで絶対に外すものかと決意した。
それから、舌先で男性が感じやすい先端辺りをまるで棒付きキャンディのように舐めまわすことに熱中した。
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