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第八章 第22話

 ふと気付いて、乳液に塗れた手を彼の細い鼻梁に近づけた。スパイシーな中にも甘い香りがライティングデスクの周辺に薫る。その香りを彼の鼻腔も捉えたのだろう、背中がより一層震える。きっと、以前の悦楽を思い出したに違いない。  震えると同時に、彼の身体が弛緩した。祐樹にとっては願ったり叶ったりだった。彼の秘密の場所を存分に視姦出来るし、指で味わえるのだから。  そっと、彼の白い双丘を更に開く。 「内部は綺麗な桃色ですね。それに震えている…それは期待からですか?」  返事は沈黙だった。彼の答えがないと、何故か面白くない。キチンと答えて欲しかった、祐樹の我が儘だったが。 まさかこれだけで感じすぎて返事が出来ないというわけではないだろう。  右手の人差し指と中指を彼の蕾に挿れる。傷つけないようにゆっくりと。  以前抱いた時も思ったのだが、彼の内部は祐樹が抱いた男性はもちろんのこと女性よりも感触が良い。  女性と違って、自ら濡れるということはないが、乳液の助けを借りて比較的浅いトコロを蹂躙する。 「綺麗な肌と同じく、内部もとても触り心地が良いですね。まさかご自分では気付かないでしょうが…極上の絹…そう、教授がいつも締めてらっしゃるネクタイのような肌触りですよ…。こんな極上の内部を持っている人を抱いたのは初めてです。どうですか?私の指の感触は?」  そう言って、内部に挿れた二本の指を広げた。といっても、男性の急所である前立腺は敢えて触れない。  祐樹の言葉が教授の脳に到達するのに時間がかかったのだろうか?快楽の虜になっている場合はそんなことが良くある。  彼は無言だったが、背中には汗の雫が浮き、何よりも内部で収縮が始まった。 「教授、とても淫らですね…普通はもっと太いモノを挿れた時にこういう締め付けが起こるものなのに、指だけでこうなる人は、私は知りません」  指に感じる絹の感触がとても気持ちが良い。もっと、締め付けて欲しくなる。  もっと収縮が激しくなるにはどう言えばいいか、一瞬考え、実行した。 「この机は、恐らくビジネスマン達が高級なスーツを着て必死にパソコンを打ったり、仕事に使ったりしているものなのですよ。だから机も大きく作ってある。その机に全裸で縋って悦楽を貪っている気分は如何ですか?白い肢体を惜しげもなく机に押し付けているのは多分教授が初めてですよ…」  このホテルの立地は、高級な水商売のお店が立ち並んでいる「キタ新地」から近い。一流のホステスさんが、これもまた一流のお客さんと「そういうコト」に使っている可能性は高いが、それには触れない。  相変わらず無言だったが、背中の汗は大粒になりますます背中の肌の色も紅くなってきた。内部の収縮も激しくなる。祐樹はほくそえんだ。熱い絹に締め付けられているかのようで、こんな感触は正真正銘初めてだ。 「私の指を千切るお積りですか?」  耳元に声を流し込むように言った。  紅の頬を机に付けて、目を閉じて涙の雫を睫毛に宿し、身体を激しく震わせていた教授がゆっくりと瞳を開ける。 「祐樹に触れられると、勝手に身体が…動く…んだ。だから…もう、中を探るのは…止めて…欲しい」 「本当に止めて欲しい?一番感じるトコロも触らないまま?」  彼が先ほどから腰を動かしていることは気付いていた。前立腺に当たるように。 「……ああっ、本当は…止めないでっ」  切羽詰った声だった。彼はもともと滑らかな声の持ち主だったが、その声に妖艶な響きが混じっている。 「思し召しのままに…」  ワザと丁寧に言うと、前立腺の周囲を焦らすために二本の指で交互に愛撫する。  彼が腰を動かすとワザと別の箇所に移動し、熱い絹の感触を楽しむ。  乳液が足りなくなり、指が動かしにくくなる。補充するために指を抜こうとした。 「うっ、抜かない……で」  そんな殊勝な願いと共に入り口付近の筋肉が引き絞られる。 「乳液を足すだけですよ…もっとたくさん塗りつけて、教授の良いトコロを存分に抉って差し上げます。皆が仕事に使うデスクで…」  羞恥心を煽るために直接的な言葉を選んだ。案の定、彼の背中はそれだけで綺麗に反り返る。  乳液を先ほどよりも大量に掌に出して、特に指にはしっかりと絡ませた。 「さあ、先ほどからお待ちかねのトコロをじっくりと触りますよ」  耳元で囁く。すると彼は手に力が入らなくなったのか、震える全身を動かし、デスクの上に上半身を乗り上げた。  茶色のデスクに白い肢体が乗っている様子はとてつもなくエロチックな眺めだった。 「自覚していますか?教授の執務用のデスクと同じ色の机に何も纏っていない肢体を乗せていることに。…それに、教授のピンク色の蕾が誘うように動いています、とても綺麗です…」 「早くっ!中に…」  机の上に乗り上げてくれたせいで陶磁器のような白い双丘はずっと触りやすくなった。さっきからずっと悪戯をしているので、少しくらいは手荒にしても大丈夫だろう。力を込めて割り割く。 「ああ、先ほどよりも濃い紅色になっていますね。それがヒクヒクと物欲しげに動いている様子は絶品だ」  そう言いながら、中指を第一関節まで挿れ、前立腺を強く押した。  彼は頭髪を振り乱し、綺麗な細い身体をこれ以上はないほど反り返らせた。その拍子に綺麗な汗の雫も飛び散る。その反応に気を良くして、人差し指も挿れ、二本で攻める。 「ああっ、祐樹…もうっ」  身体中が痙攣している。絶頂も近そうだ。 「良いですよ。デスクの上で逝って下さい。茶色のデスクに白濁が飛び散るところを私も見たいです」  彼がこれほどまでに惑乱の虜になるとは思っていなかっただけに、妙な達成感があった。

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