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第九章 第5話

 流石に高層ホテルの中では、薫風は感じられないが昇り初めの陽光は爽やかさを感じる。  その光の中、淫らな行為に耽るのは背徳感を感じる。が、背徳感が募れば募るほど欲情が高まるのも事実だ。  そんなことを考えているのも、ガラスに手を付き、彼の秘められた場所に祐樹を迎え入れようとする彼のせいだった。彼の内部は挿れる前から収縮を始めていて――これは彼の体質のようだったが――挿入しづらいが、敢えて内部に侵入を試みようとすると祐樹の先端を極上のベルベットの内壁が擦り、先端部分を含ませただけで油断するとそれだけであっさりと天国まで連れて行かれそうだった。これは長く保たないと判断する。  となると、教授を先に極めさせないといけない。そうでなければ祐樹の矜持が許さない。  後ろから挑んでいるので、ガラス窓には夜ほどではないが、自分達の姿が映っている。  紅く染まった彼の濡れた表情をちらっと見て、目を閉じて快楽を貪っている様子を確かめた。 「聡…目を開けて…そして聡の状態がどうなっているか、私に・・・教えて下さい。まずは胸から…」  前立腺を強く突いて命令口調で言った。彼の汗の浮かんだ背中が反り返り、幾分細い肩甲骨の綺麗な形が露わになる。 「あっ…。でも、目を開けると…向かいのビルの人が・・・」 「それなら…もう動かないでおきましょうか?抜いて、断腸の思いで・・・自分で処理します」 「それはっ…ダメだっ!」  切迫した口調で言うと同時に彼の内壁がさらに絡み付く。さすがに昨日から挿れっ放しのせいで、随分と柔軟になっているようだった。満開の八重桜の中に居るような感じだった。あるいは、露を含んだベルベットローズの中に…。  ゆるゆると瞳を開けてくれる。感じ過ぎたのか、目尻に涙の粒が盛り上がっているのが見えた。それに彼の長い睫毛にも。 「胸…は、右がより一層紅く…。あっ…そこ…もっと…。紅くなっている。昨日、祐樹に噛まれたので…皮下出血を起こしたものだと…」 「そうですね。痛みはありますか?」   そう言って彼の両胸に掌を置いて弾くように転がした。彼の尖りがますます固くなる。汗が滴っているのだろうか、濡れた宝石のような手触りだった。 「痛くは…ない。むしろ…昨日よりも…感じる」  快楽を少しでも紛らわすためか、彼は頭を振って答えた。ただ、正直な彼の内壁は祐樹を優しく、そして強く締め付けていたが。 「あ、向かいのビルの窓に人影が有りますね…こちらを見ている。全裸でガラスに手を付いていて、しかも後ろには男が立って動いているのですから、教授が何をなさっているかは当然気付くでしょうね」  もちろん教授を感じさせるためのウソだったが効果は覿面だった。彼の乳液と精液で潤んだ極上のベルベットが独立した生き物のようにビクビクっと動く。 「祐樹…もうっ…立ってられないっ」  見られていると思ったのか余計に感じたようだった。予想通りの効果にほくそえむ。確かにすらりとした白い脚は震えている。 「気付いていましたか?このクラブフロアは各客室にもトイレは有ると言うのに…利用客が使えるトイレがたくさんあります…。駅前のHホテルとは違って…。そこの個室で貴方の濡れたベルベットのような極上の内壁を私のモノで突き上げたいと思っています。いつ、誰が入って来るか分からない、そういう場所で…ね。そこで聡の辛そうで悩ましい声を聞きたいし、さっきからしている私のモノと聡の内壁が擦れる濡れた音も聞きたいです」  彼の内部の収縮が細やかで少し強くなる。が、感じすぎて手には力が入らなくなったのか、身体は倒れそうになった。 「おっと、では、床に膝をついて腰を高く上げて下さい」  身体を支えながら言った。抗うか、詰るかと思っていたが。 「祐樹が、中に居て続けてくれるなら…そうする」 「もちろん。そうしますよ…もしそんな体位を取って戴けたら聡の仰せの通りに動きます」  彼の動きに全て合わせた。 そして瞠目する。いくら一流ホテルの絨毯の上とは言っても、所詮は床だ。そこに跪いて秘密の場所を晒すとは…それも、仕事の上では部下相手に。先ほどはそう言ってはみたが羞恥心を煽るのが主な目的だった。  ただ、この体位の方が彼には負担は掛からないだろうと思う。昨日からかなり無理をさせているという罪悪感は有った。 「よく出来ましたね。ではどうして欲しいですか?」 「動いて…もっと突いて欲しいっ」  淫らな要求だったが、凛とした声だった、欲情の色は滲ませていたが。 「仰せのままに」  一回抜いて、全体で突くのも今なら大丈夫そうだと判断する。退きかけると彼の内部が未練げに絡み付く。 「あっぅ…全部は抜かないでっ」 「どうして?その方が感じますよ?多分」  それ以上は聞かないで、一旦全部抜く。彼の内部から白濁が零れた。彼の薄桃色に染まった太腿まで流れ出て、とても扇情的な眺めだった。祐樹も興奮のあまりぶるりと震えた。 「あ、流れる感触がっ」 「感じますか?でも綺麗ですよ。ピンクの薔薇の上に真珠が散っているみたいで…」  そう言いながら昨日の彼が快楽を得ていた速度で突いた。彼の背中の上気した背中が反り返り、とても艶かしい。汗の粒が浮いているので特に。 「あ、もっと強くっ。でも、もう…保たない…かもっ。何回でも突いて」 「こうですか」  昨夜彼が最も悦楽を感じた速さで挑む。彼の嬌声が切なく室内に響く。 「聡…過去の男性は…貴方の中はベルベットか絹のようだと褒めてくれませんでしたか?  身体は褒めて貰っていたのでしょう?」 「もっと…強くしてっ、欲しいっ」 「しますから…答えて下さい」  彼の内部をしばらく堪能する。やはり彼は稀有な身体の持ち主だ。 「褒めて貰ったことは有るような気はする…っ。けれど、あっ…向こうでは褒めるのがマナーなのだから…。祐樹もっと…動いて…欲しいっ。祐樹の言うようなセリフは聞いたことはな…っいっ」 「私も達しそうです。あと少しで…。貴方の内部は濡れた絹かベルベットのようで…油断すると、スグに逝ってしまいそうだ」  彼の内部が煽るように動く。 「あっ。もっ・・・もう少し待って…欲しい」  頂点を極めそうだったので、背後から充分に反応しているモノを激しく扱く。と同時に強く突き上げた。 「ああぁ。もうっ…ダメっ」 「同じです。あと一回突いた時に逝って下さい」  思いっきり突き上げると、彼の身体が弾けた。たまたま先端を両手で弄っていた時だったので掌に白濁が湛えられる。と同時に彼の中に欲望の雫を撒き散らした。  脱力して背後から覆いかぶさると、彼が満足げな溜め息を吐くのが聞こえた。

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