199 / 403
第九章 第7話
脚と腰に力が入らないのだろう。ふらつく彼の身体を支えてバスルームまでゆっくり歩いた。
シャワーブースと浴槽が洗面台を中央にして分離して設置されている。バスタブに湯を張る。
ゲストを落ち着いた気分にさせるためかごく薄い茶色の室内だった。
シャワーブースの扉を開けると、彼をゆっくりと中に入れる。
湯の温度を少し温めに設定し、シャワーノズルを教授が先ほどまで気にしていたところに当てようと上体を倒した。
決して下心はなかったと断言出来た、その時までは…
すらりとした脚の付け根や、その行き着く先や、太腿がほんのりとした紅色に染まっている。そこに祐樹の放ったモノと乳液が、滴って筋になったものも有るが、珠になっているものも有る。薄いピンクの花びらに散った真珠が幾つも乗っている。薔薇が朝露を宿すように。
その眺めに絶句した。過去に祐樹が関係を持った男性は、コトが終るとすぐに浴室へ追いやったものだが。
そして儚げに収縮を繰り返す彼の秘密の入り口からは白いモノが名残惜しげに零れかけては皮膚の動きに合わせて動いている。
昨日の彼の内部は祐樹が知る中では、極上の肌触りだった。締め付けるのではなく、濡れた絹のように祐樹自身をこれ以上ないほどの悦楽に駆り立てた。普通は強く締め付けるハズの括約筋が、どうしてあんな動きが出来るのか…という興味も湧く。
シャワーノズルを放り出してしまった。その音はガラスで仕切られたシャワーブースに大きく響いた。
後ろ向きになっていた教授はその音を聞いたのだろう。首を後ろに傾げて祐樹を見る。
目は涙でしっとりと濡れ、目蓋や目尻がほんのりと紅い。
「洗って差し上げようと思いましたが、聡の…秘めた蕾の内部がとても見たくなってしまいました…余りにも扇情的過ぎて…。だから、両手で双丘を開いて見せて下さい」
そう言って、彼の太腿から上を彼が感じるように撫で上げた。
「そんな…恥ずかしい…」
ゆるゆると首を振る。
「どうしても…駄目です…か?聡…貴方の身体は全て知りたい」
真摯な口調で告げる。彼は揺れる眼差しで祐樹を見ていた。そしてポツンと言った。
「祐樹は、誰にでもそういうことを言って来たのだな…」
「まさか…。こんなことをお願いしたのは聡が初めてです・・・よ。自分が挿った証が見たい」
彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。彼はしばらく躊躇していたが、おもむろに両手を自らの薄桃色の双丘を広げてくれた。
「ああ、とても素敵です。きっと擦られたからでしょうね。内部はとても紅くて、ところどころ私の白いモノが紅い薔薇に真珠を置いたように綺麗なコントラストを描いている…。それに…入り口辺りは白いものでねっとりと濡れている」
目で見るだけでは満足出来そうにない。こんなに淫らかつ神聖なものを触るには、指だけでは不敬のような気がした。
指で味わおうと、二本の指を挿れた。すると彼の濡れたベルベットの布が蠕動を始める。思わず指を動かすと濡れた音がガラスで仕切られたシャワーブースを満たす。やはり、彼の内壁は天国を味わう気持ちがする。祐樹の知らない極上の触り心地だった。
「あ、ダメだっ!それは…。とても感じる…からっ」
「そういえば覚えていますか?昨夜は痛いと制止した律動の速さを今朝は平気で受け入れていました…。覚えが良いですね。私のせいで貴方の身体が変わるのが嬉しいです…」
「え…?それは覚えてい・・・ない…。昨夜も今朝も祐樹をソコで感じた時は頭に薄紫の花火が散っているような、頭が真っ白な感じがして…切れ切れにしか祐樹の動きが思い出せっない」
指を動かす度に彼の声の音程が上下する。
祐樹のセックスでそんなに感じてくれたのかと思うと、誇らしげな気持ちになる。ビデオカメラのような記憶力を持つ彼ですら覚えていられない程の快楽を祐樹が与えたかと思うと。
衝動に駆られて唇をソコに押し付けた。彼の身体が驚いたように跳ねる。
「嫌だ…それはっ…恥ずかしい」
「私だって、生涯で初めての場所に唇を落としています。こんな衝動を感じたのは聡が初めてです…」
少し唇を離して告げる。すると彼の羞恥で強張った身体が僅かに弛緩する。綻びかけていた場所も…。
すかさず舌を内部に挿れる。
熱心な信者が神像を愛でるように彼の内壁に舌を這わすと、彼の吐息が色を帯びたような感じがした。
舌で味わう彼の中も絶品だった。自分の注いだ白濁と乳液はお世辞にも良い味とは言えなかったが、彼の中に居たものだと思うと全く気にならない。
祐樹の唾液の温かい感触を得たせいか、白い双丘を支えていた手が震え出した。
「感じてます…よね?胸と、前どちらか弄りましょうか?」
「いや…それは駄目だっ!」
拒否されたことは正直ショックだった。舌を離すと、名残惜しそうに蕾が震えた。
「どうして…ダメなのでしょうか?」
大人げなかったが、声が尖った。それが分かったのだろう、教授は怜悧な濡れた瞳と紅い頬で告げてくれる。
「これ以上、どちらか一方でも触られたら…中に祐樹が欲しくて身体が変になる…。祐樹は欲しいが…多分今日これ以上祐樹に抱かれると…月曜からの仕事に支障をきたす。
どうか、私の気持ちを察してくれたら…有り難い」
昨日から無茶をさせている自覚は有ったので、大人しく引き下がることにした。教授を必要としている患者さんのためにも、教授の理性的な判断が好ましく思えた。
「残念ですが…教授の仰ることのほうが正論です。またの機会に、淫らな貴方を見せて下さい。お湯も張れたようですし、シャワーで流しますね」
「ああ、またの機会が、なるべく早く来るように…待っている…」
ともだちにシェアしよう!