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第十五章 第11話
彼の水晶よりも綺麗な涙を唇で恭しく受け止めた。
「この涙は……嬉しさの発露ですよね?そうでなくては……困ります」
彼の祐樹の背中に回った手の力がますます強くなる。
「大の大人が泣くなんて……恥ずかしいが……。さまざまな思いが交錯して……勝手に出てしまった……」
羞恥の色を滲ませた声でポツンと告げられる。
彼の肢体がオレンジ色の照明を受けて綺麗なラインを余すところなく祐樹の視線に晒されている。照明よりも照り輝いているのは彼の羞恥に染まった紅色の肢体だったが。彼も全てを告白し、なおかつ何も纏っていない肢体を祐樹の前に晒しているのが、途轍もなく恥ずかしいらしい。
今までは平気そうに振舞っていたがそれは彼が祐樹のために必死に演技していたからなのだなと思い知らされた。
「いえ、嬉しいです……よ?やっと素のままの聡に触れることが出来たような気がして」
彼の涙の膜を張った綺麗な光を放つ瞳を凝視した、瞳に力を込めて。
「愛しています。こんなに好きになった人は聡が初めてです」
彼の瞳からもう一粒涙の雫が盛り上がるのを見て、気を逸らせようと彼の白い双丘の狭間を割り開く。
彼が辞表を燃やしていた時に抜かりなく乳液のビンを取って来ていた。ベッドサイドの机から乳液の青いビン――と言ってもプラスチックだが――を取って一滴中指に落とした。その香りを彼の形の良い鼻梁に近づけた。
彼にとっても、この香りは情事だけを連想させる香りだ。
彼の瞳の光が仄かに薄紅色に変化し、表情も先ほどよりも硬さを無くしている。
白い乳液を左掌に乗せ、右の指にたっぷりと絡ませた。
「恋人になって初めて貴方を抱きます。良いですか?」
「ああ、とても嬉しい……」
呟く声は情欲の紅色に染まっていた。
「そちら側の枕を取って腰の下に引いて下さい」
当初の予定では、彼に何もさせたくはなかったが。ただ両手が乳液で濡れているので彼にしてもらう他はない。このホテルのスタッフは――プライバシーを厳守してくれているので、祐樹と彼の情事の痕跡が有っても大丈夫だろうが、枕に油分が付くのは流石に気が咎める。
普段の祐樹なら腰の位置を高めるために枕を下に引いた上で乳液や――過去のラブ・アフェアーの相手に使用した潤滑油――を指に塗る前に準備しただろう。ほぼオートマチックに手順は頭の中にインプット済みで。それが出来なかったのは、祐樹も彼と同様に平常心を失っているのだろうな……と不明を恥じるだけでなく、彼に対する愛情の深さを再確認してしまう喜びが有った。
彼の白い指が、同じように白い枕を掴み、腰の位置に当てる。
「これで……いいのか?」
「ええ、腰の位置を固定して頂くと、貴方の秘められた花園がはっきりと見えますので……」
すっかり育ちきった彼の先端部分も驚喜にわなないて密をとめどなく零している。それが幹を伝う様子がオレンジ色の照明の下で様々な色彩に反射しているのも綺麗だった。
彼の蕾の周囲をぐるっと一回りする。祐樹の指が動くにつれ、彼の吐息も切なげな紅色を帯びる。
白い乳液と彼が零す先走りの露が真珠と水晶が互い違いに並んでいるネックレス――というには小さいが――を思わせる。
彼の秘められた箇所が不随意運動を開始している。祐樹の指を早く欲しいと言いたげに。
「貴方の秘密の花園が、私の指を欲しがっています。挿れても……いいですか?」
今夜だけは、彼の許可を言葉で欲しかった。
「っ……恥ずかしい……。祐樹を求めて浅ましく動いている……ので」
「貴方を愛する私と同様に貴方も求めて下さっているのですよね…?何も恥ずかしいことではありません……よ?」
諭すように言うと、彼の秘められた場所はさらに大胆な動きを開始した。
「ああ、挿れて……欲しい。祐樹の指も……私の中で味わいたい」
羞恥に震えていたがキッパリと断言された。指を中に挿れると彼の濡れたシルクの内壁がいつもよりもひたりと祐樹の指を包み込む。それだけではなく、祐樹の指を緩く、キツク絶妙な力加減で締め付ける。
「ああ、いつもよりもずっと繊細な動きをしますね……貴方の秘密の筒は……以前から貴方の秘密の花はとても気持ちが良かったのですが……私が知っている限り、こんな奇跡のような場所を知りません。
女性にも名器があるのと同じく男性にもあるのです……ね。今日の貴方の収縮は今までよりも……さらにイイですよ?」
彼の濡れたシルクの内壁が嬉しそうに祐樹の指をもっと中へと促す。
「その話も……本当なのか?お世辞だと思っていたのだが……」
彼の紅色に染まった唇から吐息と共に零された言葉に祐樹は苦笑する。
「私は嘘を申し上げないと言ったばかりですが……。私が知っている中で、貴方の秘密の場所が一番しなやかで、そして密着度も素晴らしいです。こんな造化の妙の身体を私だけが味わえると思うと、とてもとても嬉しいです」
「そうなの……か?ああっ……。そこはっ……」
前立腺の周りを撫でてから中心を強く押した。
全裸の彼の紅色に染まった肢体が、ベッドの上にしなやかに弓の形を作る。彼自身の先端からはオパールの液体が涙のようにとめどなく溢れている。
「中が勝手に動いて……いるのは……分かる。祐樹を喜ばせて……いることも……。しかし、やはり恥ずかしい」
今夜の彼は、自分の思っていることを全部言おうと決めたらしかった。前立腺を押されたことによって、彼の綺麗な瞳からは涙の粒がはらはらと落ちる。
「恥ずかしくなんて……ないですよ?私を求めて頂いている。そう思えて……とても嬉しいです。それに貴方のこんな極上の名器は、私一人しか知らないと思うと……気が狂いそうに嬉しいです」
耳元で真摯に囁くと、彼の身体が若木のようにしなやかに反る。と同時に、内壁も祐樹の指をひたりと柔軟に包み込む。
「そろそろ、大丈夫のようです。私も限界です……。
これ以上ないほど貴方に恋焦がれている私です。貴方の中に私自身を挿れて……良いです……か?」
耳元で哀願した。
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