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第10話 少女

 「見つけた!!」  アイツの声に僕は眠りから一気に現実に戻り、跳ね起きる。  アイツの視線と、指し示しす指の先を確認する。    アレ?  でもアレは・・・。  「捕まえるんや!!」  アイツが怒鳴った。  そう、自分では捕まえられないから。  コイツは足は遅いし、ページをめくる以上の筋力もないのだ。  子供相手でも捕まえられない。  僕がおらんかったらどうやって捕まえるつもりやったんやろ。  まさか白に頼むつもりやなかったんやろな。  アイツの影にすむ、アイツと契約している怪異。  アイツの精液と引き換えに取引する・・・。  ムカムカした。  「早よ、捕まえてくれ!!」  でも泣きそうな声で好きな子が頼むから・・・。  僕はソイツを走って駆け出し、つかまえた。  通りの向こうを歩いていたソイツを。  ソイツは僕に腕をつかまれ、細い叫び声をあげた。  「やだっ   何、離して!!」  その声をききながら、僕は納得いかないまま、ソイツを見つめていた。  強く腕をつかんだまま。    「痛い、離してぇ」  その女の子は泣いた。  僕を恐がって泣いた。    そんなにいないとは言え、通り過ぎる人達が僕を怯えたように見ていた。  15才くらいの女の子の腕を掴んで、泣かせている僕を。  ええ?  いいの?  これなの?  捕まえて良かったの?  僕は混乱した    「離してぇ」  女の子が泣き叫ぶ。  細い腕に僕の指が食い込む。  でも離さない。   アイツが捕まえろって言ったんや。  でも困る。    でも力は緩めない。  だって命令されたんやもん。  女の子は結構可愛かった。  僕はもうアイツ一択なので、可愛いくてもなんともないんやけど、でも可愛いもんは可愛いかった。  細くて、小さくて、髪が長くてサラサラしてて。  泣き叫ぶ小さな顔は、お人形さんみたいやった。  「誰?誰なん?・・・なんでこんなんするん?」  女の子が泣きながら僕に聞く。  「僕もわからん」  僕は正直に答えた。  女の子が僕のことを蹴りに来たから、指にさらに力を入れた。  「痛いっ・・・お兄ちゃん助けてぇ」  女の子は泣き叫んだ。  そんなん言われても。   しゃあないやん。  命令やし。  僕は困った。  でもしゃあないやん。   アイツの命令やで。  可哀想やけど、仕方ないやん。  諦めて。  「アホ!!力緩めろ!!」  やっと来たアイツが、息を荒げなが言ったので、力を少し緩めた。  アイツはゼイゼイと肩で息をしてる。  ちょっと走っただけでこうなるし、小学生より遅い。  コイツは凄まじい運動音痴の上に体力がまったくないのだ。  「なぁ、ちょっと今度から走ろうや一緒に。お前体力無さ過ぎ」  僕は心配になってしまった。  もうちょい体力つけへんと、セックスも出来へんやん。  そこは深刻な問題なのだ。  検討してもらいたい。  ただちに真剣に。  「そんな時間があるかい。研究の邪魔や」  アイツに断られてしまう。  でも、趣味の料理と僕とのセックスの時間以外は全て考えたり、調査したり、読んだりなんか書いたりしていて、それが一番大切なのは知っているので諦める。  その時間を割いてまで僕とセックスしてくれてるんやし。  そうそう。  研究と同じ位僕のことを愛してくれてるんや。  うん。  うん。  「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・、怖いよぉ、助けてぇ・・・」  女の子は僕に手を掴まれたまま泣き叫んでいた。  お兄ちゃん呼びながら。    その女の子をアイツはキラキラした目で見つめていることに僕は気付いた。。    え、何、その顔。  僕にもそんな顔したことないやん、お前。  「なんて・・・なんて・・・美しいんや!!」  アイツは興奮したようにいった  え、何。  お前・・・お前・・・ゲイやなかったんか?   「まさか・・・本当に出会えるなんて!!」  いつもは真っ白な顔に、鮮やかな血の色が見える。  目が興奮で潤み、分厚い前髪の奥の目が煌めく。  「会いたかったんや・・・、ずっと!!」  アイツは叫び、あろうことか、恋人の僕の目の前で女の子に抱きついた。  「何やねん!!嫌やぁ!!」  僕は女の子の叫びより大きな声で泣き叫んだ。      「手ぇ離せ!!離せ!!」  アイツが叫ぶ声が聞こえたから、やっとのことで僕は止まった。  僕は自分が川沿いのフェンスまで来ていることにきづいた。  そして、女の子を頭の上まで持ち上げて川に投げ込もうとしていることにも気付いた。  なんてことや!!  嫉妬で意識が飛んどった。  僕は思った。  せめて投げ捨ててから正気に戻るべきやった、と。  でも、アイツの声か聞こえてしまったので、投げ捨てる寸前の姿勢のまま、高く女の子を持ち上げたまま止まる。  勢いあまって投げちゃったってのはダメなん?  ダメかな?  後で謝ったらよくない?   女の子は、ひんひん泣いてる。  声もでなくて、カチカチ歯を鳴らし、ガタガタ震えて泣いてる。  ムカついた。  僕の恋人に抱きしめられたのだ。     僕じゃないのに。  赤と黒でも本当は本当は不愉快なのに、まして人間が、しかも、「あいたかった」と言われて僕の恋人に抱きしめられるなど、絶対に許せるものやないやろう。  「ゆっくり下ろせ、いいな」  アイツが宥めるように言う。  僕はボロボロ泣きながら怒鳴る。  「会いたかった、て言うた!!僕にも言わへんのに。美しいって言うた、僕にも言わへんのに」    僕は鼻水まで流しながら怒鳴る。  「お前、お前なぁ、誤解をしてるんや」  なんかアイツが慌てる。  なんか周りに人が集まってきている。  そんなに人通りはないけれど、人がいないわけではないのた。  泣いてる女の子を持ち上げて、川に投げ落とそうとしている僕。  そして、それを必死で止めようとしているアイツ。  まあ、面白そうな見ものやろ。  だが、そんなことはどうでもいい。    「酷い。酷すぎるやん。お尻の穴をガンガン突きまくって、奥まで犯して、めちゃくちゃ中で出しまくって、イカせまくらないと僕には【好き】ってことも言うてくれへんくせに、この子にはそんなん言うんズルイやん」  僕は泣き叫ぶ。  そう、犯しやまくって意識飛ぶ寸前までにしないと僕は好きって言ってもらえないのだ。  遠巻きに見ている人達がざわつく。  アイツが真っ赤になる。    「おま、お前・・・こんなところで何言うて・・・」  慌てふためくアイツに腹が立った。  お前が止めろ言うから、この女の子を川に投げの止めるくらい僕はお前が好きやのに。  「僕が一番お前を好きやのに!!」  僕は女の子を振り回しながら泣く。  肩と腕をつかんだまま、ブンブンふりまわす。  女の子のスカートが翻り、腕や脚が操り人間みたいに左右に揺れ動く。  「!!!!」  女の子がなんかわからんこと叫んでるけどそんなんどうでもいい。  嫌い。  アイツが僕より好きなモノは嫌い。    「わかった!!わかったから!!解った!!」  アイツが両手を挙げた。    何それ?  何降参してんの?  「お前を世界で一番愛している。お前だけや・・・だからその子を離せ!!」  真っ赤な顔でヤケクソみたいにアイツが叫んだ。  それは、嘘ではないと知ってるので、僕は満足して女の子をブンブン振り回すのを止めた。  女の子は振り回されすぎたのか地面にゲロを吐き、アイツは真っ青になって駆け寄り、パトカーの音がしていた。  僕は幸せそうに、アイツの言葉を脳内で反芻していた。  幸せだった。  だって世界で一番愛しているねんで。  僕を。  ・・・そして僕達は警察に捕まり、連れて行かれることになった。

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