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第16話 飼っているものは何か

 「足りない」  占い師はポン引きに訴えた。  あの子はすやすやと眠っている。  その裸の身体にポン引きが毛布をかけてくれた。  ポン引きは今、皮だけになった男と女をゴミ袋に詰めている。  綺麗に洗って、この二人が裏切った幹部に渡すのだそうだ。  それでいくら貰えるのかまではわからないが、幹部は裏切った二人の生皮に満足するだろう  幹部が思っていたのとは違い、二人は快楽と幸福の中で死んだのだが、まあそんなことはいい。  「誰でもいい。もっとしたい。足りない」  占い師はポン引きに頼む。  あの子の餌には十分だが、占い師にはあの程度では足りなさすぎた。  もっと沢山・・・しなきゃ。  身体を変異させ、力を沢山使った。  足りない。  これでは足りない。  ポン引きを襲いたかったが、殺してはいけないから諦めた。  この男は必要だ。  まだ。  「どんな酷い目にあってもいい」  占い師は訴えた。  どうせ、治る。  ポン引きはため息をついた。  「今までのような気弱な連中やなくなるで。今からすぐに用意出来るとなると。これでも、あんたのために選んでたんやからな」  人を売った金で生きてるポン引きは言った。  「なんだっていい」  占い師はせがんだ。  「・・・・・・知らんで」  ポン引きはつらそうな顔をして占い師の頬を優しく撫でた。  「あんまりかわいそうな目には合わせたなかったんやで」  散々人に嬲られた占い師の身体を誰よりも好むくせに、ポン引きはそんなことを本当のように言う。  「早く」  占い師はそうとだけ言った。    ポン引きは困ったように笑った。  本当につらそうな笑顔で。        押さえつけられて殴られた。  鼻から血を吹き出す。    男達は血に興奮していた。  セックスそのものでなく、暴力に勃起するような連中だった。  むしろ、暴れて抵抗しない占い師はもの足りなかっただろう。  ポン引きが、占い師を連れて行ったのはどこかの倉庫だった。  ポン引きがしっかり金を受け取っていたのは見ている。  車から引きずり出されて、倉庫の中でそれが始まった。  暴力が。  セックスの前の前戯のつもりなのだ、このクソみたいな連中にとっては。  耐えた。  必要だったからだ。  こんな連中すぐに殺せる。  だが、殺してしまうと精気を奪えない。  大量の精気が必要だった。  出来るだけ早く。  でなければ、この身体を保っていられない。  人間の形を保たなければならなかった。  あの子といるために。    もう形だけでもよかった。  あの頃のままでいるためにあの子の形を蘇らせた。  ならば、この形だけは守らないといけない。    「そんな外法長く続かへんぞ」  そう言われた言葉を思い出す。  やれるだけやるさ。  占い師は切れた口の中の血を飲み込みながら思う。  激しく腹を蹴られ転がった。  呻く。  そのうめき声に連中が興奮していた。  変態どもが。  占い師はそう思った。  服を乱暴に引き裂かれ、強引につっこまれた。  少し前まで男のモノを受け入れ、中にたくさん出されていたから、受け入れることはできたが、乱暴に広げられた脚、ただ痛めつけるためだけに動かれ、苦痛の声しか出ない。  乳首を血が出る程噛まれた。  汚い笑い声がした。  腹や肩を噛み切るかのように噛まれる。  動物が獲物を貪るように奴らは占い師の身を噛む。  血が流れていく。  占い師は叫んだ。  悲鳴をこらえるようなことはしない。  コイツらは悲鳴を欲しがっているのだから。  そして、乱暴に腰をぶつけつづける奴が狂ったように叫ぶ  「すごいっ!!なんだコイツ!!」  違う誰かのモノが顔に押しつけてられる。  顔を掴まれ、強引に咥えさせられる。      そんな中、それでも占い師は彼等が何人いるのを数える。  4人。  これなら足りる。  十分だ。      乱暴に始まり、暴力を受けはしても結果は同じだった。  男達はいつも通り占い師に狂った。  奪い合い、殴り合いさえおこしながら占い師の中に入りたがった。  「のけや!!変われ!!」  占い師の肉体を貪る男を殴代わって占い師にのっかりたがった。  それでも最初に入った男は、どんなに殴られようと占い師の中から出て行こうとせず、ひっきりなしに精を放ち続けた。  ふひぃ  ああ、いい、  最高やぁ  眼を見開き叫びつづけながら。  顔が倍にふくらんだ頃、やっと身体から引き離された。  引き離されても、男は一人身体を震わせ射精し続けていた。  占い師には十分だった。  一人分の精はもらったからた。  残りの3人で占い師の身体をシェアした。  一人は口にそして残りのふたりで一つの穴を共有することに男達はした。  占い師は2つのモノが自分の中で擦れあう度に塞がれた唇の中で、叫びながら、精をしぼりとった。  その喉にも男の精は注がれる。    口から、穴から、男達の精気取り込んでいく。  ああっ  なんでこんな  うわぁっ  ひぃ  男達は狂ったように喚きはじめた。  いいっ  めちゃくちゃいい    叫びながら後ろから突いていた男は自分の指を噛んでいた  肉に歯が食い込み、血が滴る。  それでも男は指を噛み締める。  おかしく、なるぅ  男はそう叫び指を噛みきった。    下から突いていた男は涙をながしさけんでいた。  狂ったように動く腰に、脚が引きつけを起こしていた。  でも止められないのだ。    あかんあかんあかん  もう無理やぁ  喉を犯していた男は笑っていた。  壊れたようにリピートされる笑いを繰り返す。  目は見開かれ、恐怖をその目にうかべているのに笑うことも腰を振ることも止められないのだ。  ぎもち・・・いい  男は苦痛の叫びのようにそう言った。    男達は生涯最高のそして最悪の快楽に、脳まで浸され、窒息させられていた。  占い師の白い身体は薄暗い倉庫の中で、白く浮かびあがり蠢いていた。  占い師の失った腕が伸びていた。  当たり前のように。  誰もそれを奇妙に思わなかった。  あとはいつもの通りだった。  ポン引きが現れ、閉められていたドアを開けた。  泣く男達を慰めながら占い師から引き離してやり、宥めながら勃起がとまらない性器を何なら射精さえ手伝いポン引は服を着せてやった。    ポン引きの手で射精したなら、不思議なことに男達のそれは落ち着いた。  指を噛みきった男の指先を見つけハンカチで包みもたし、ちぎられた先も縛って止血してやった。  子どものように男達は泣きじゃくっていた。  どこまでも永遠に誰かを犯し続けたい、そういう狂った願望は叶えられた。  だが、それの恐ろしさを知ったのだ。  犯すことは犯されることだった。  怖い  怖いい  許してぇ  許してぇ  男達は子どもに戻って泣いていた。  ポン引きは一人一人を優しく子供を慰めるように抱きしめてやると、用意していたらしい紙コップにブランデーかウイスキーを注いでやり、飲ませた。  「お迎えが外に来てはる。ここ出るまえにしゃんとしなあかんで」  優しく言い聞かせた。  一杯の酒を飲み終わる頃には男達は少しは落ち着いていた。  男達はボロボロの自我を辛うじて立て直し、非道で残酷な仮面を辛うじて身につけ、ヨロヨロと外へ出ていった。  「その辺のアホとは違って筋金入りのイカレた奴らを壊しやがって・・・あんた本当に恐ろしいな。あれじゃ、もう二度と勃たへんかもな・・・セックスが怖くて泣き叫ぶようになるで・・・」  ポン引きは彼らが出て行ったあと、呟いた。  占い師はうずくまっていた。  その身体には暴力の跡や、手酷い性交の跡があり、奴らを食い尽くしてはいても、占い師も無傷ではないことがわかる。  「可哀想に」  ポン引きは優しく言った。  今目の前にいる男が愛おしくてたまらなかった。  男達に引き裂かれた姿が。  血に汚れた顔も。  精液に汚れた口周りも、血を流しているアナルも。  痣が浮かび始めた身体も。   「痛かったやろ?・・・苦しかったやろ?」  そっと寄り添い抱きしめる。  胸の中で震える身体に優しさを与えてやりたくてたまらなくなる。  他人に汚された身体を舐める。  癒やすように舐めていく。  噛み千切られかけた乳首はもう血が止まり癒えつつある。  傷の治りの早さから、もう人間でないことはわかっている。  だが、この身体に与えられた苦痛は本物なのだ。  それがポン引きの心をかき乱し、そして、股間を疼かせる。  乳首の血を舐めとれば、腕の中の可哀想な男は喘いだ。    ああっ・・・  その消え入るような声に胸がしめつけられ、同時に欲望が滾る。  男達に嬲られ、そして逆に喰い殺していた時の声とはあまりにも違う。  切ない喘ぎだ。  「綺麗にしたる」  優しくポン引きは言って、全てを舐めとっていく。  男達の精液さえ、舐めとることを厭わない。  身体のあちこちにある噛み跡を舌で舐める。    白い身体が震え、再び勃ちあがったそこが滴り落ち始めるのを、ポン引きは愛しげに見つめた。    でもそこには触ってやらない。  まだ。  全部綺麗にしてやってからだ。  脚の指の先まで舐めてやった。    そしてポン引きが血の滲んだ後ろの穴を舐め始めた時には、占い師は切ない声が止まらなくなっていた。    「沢山出てくる・・・なぁ?」  こぼれ出る二人分の精液をすすりながらポン引きは言った。  指でかき出した。  必要以上の吸収しきれない精液。  「あんたの中から出てくるもんは綺麗なもんや」  ポン引きの声に占い師の身体が震える。  大切なものを扱うように、尻なら脚へと優しい手が撫でる。  「あんたは綺麗や。誰に何をされても」  それを示すようにまた穴を舐め、すする。  優しい優しい舌遣いは、動物が我が子を舐めるようなもので、性的なものではなかったのに、占い師はそれでイった。  「ボクのをここに入れて、残ったもん掻き出して、ボクのを注いだる。ほんなら、アイツらがあんたにしたことなんて消えるから」  どれだけの身体を売る女や男達にそう囁いてきたのか。  そしてその身体を売った金で生きてきたのだこの男は。  だけどだからこそ、ポン引きの囁きは甘い。  だから占い師は身体を開く。  喰うためではないセックスを始めてしまう。  「ああ、可愛い・・・あんたホンマに可愛い」  ポン引きは白い脚を押し開き、身体を脚の間に割り込ませながら夢見心地に占い師に囁く。  まだ腫れた顔が堪らなく可愛い。  血こそ止まっても歪んだ鼻が堪らなく可愛い。  塞ぎかけた目が堪らなく可愛い。  腫れた唇にそっと口づける。  もう血は止まった舌を吸い、優しくまだ癒えてない穴に挿入していく。  苦痛で歪みながら、でも、占い師は感じていた。  快楽以上にポン引きの「優しさ」に。  感じてしまっていた。  感じずにはいられなかった。  それが悔しい。  「ボコボコにやられたヤツにしか・・・欲情できない変態・・・ああっ」  罵りながら、でも白い喉をそらす。  喘ぐ。  優しい腰遣いに。  欲しがるところに、与えるようにしか動かないその動きに。    「あんた・・・可哀想すぎて、たまらへん・・・めちゃくちゃ優しくしたなる」  ポン引きは占い師の腫れた目蓋に口付けた。  快楽をひきだされる。  そこを何度も擦られて。  ああっ   いいっ  占い師は声を漏らす。  認めてしまえば、もうそれ無しではいられなくなる。  占い師は快楽に溺れる。  癒やされ、甘やかされ、溶かされる。  「可愛い」  その声の甘さも優しさも心からだとわかるから、腕を回して抱きついてしまう。  熱く中をかき回す、焼かれているのに甘いそれを求めて、自分からも動き出してしまう。    こうやって何人もの女や男が身体を使い捨てていったのか。  この男が抱いてくれるなら、どんなことにでも耐えられると思ってしまう。  男が傷を癒やし、清めてくれるから。  そうやって・・・落ちぶれていくのだ。  際限なく。    危険な男。  占い師は思った。  この男は必要だ。  まだ。  癒やされたい。  甘やかされたい。  その危険さがわかっていても。  何より、コイツは餌を持ってくる。  「ほら、イったらええで?」  優しく絶頂に導かれる。  苦しみのない絶頂の中、占い師はポン引きにしがみつく。  「可愛い。可哀想で可愛い」  ポン引きは嬉しそうに震える占い師を抱き締める。  そしてそれが本音であることを占い師は知っている。  この男は破滅する人間を破滅するまで愛し抱き締める化け物なのだ。   何人もの男や女がこの男の元で破滅して行ったのか。  酷い目に遭えば遭う程愛してくれるから、酷い目に遭うことを繰り返し・・・消えて行ったのだ。  人を破滅させる化け物。  占い師とは違って人間のままでありながら。  「もう一度・・・」  それでも、占い師はせがんだ。  ポン引きは笑って、占い師の唇を甘く噛み始める。  舌をつきだし求めたら、舌を舐められ絡められ、吸われていった。  優しいキスと共に、セックスというにはあまりにも優しいそれがまた始まった。  優しいのに。  滅ばされるまで焼かれる。    この男を飼っているつもりだったが、この男は占い師が体内に飼う蟲達よりも恐ろしいのかもしれない

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