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第19話 生け贄

 真っ白な身体に群がるのは男達だ。  少年は慣れた行為に、ただ喘ぐ。  男達は少年の身体を舐め、その性器を咥え、後ろの穴に挿入し、少年の口に射精する。  恭しく、文言を唱えながら。  乱暴に扱われることはないが、まだ10に満たない頃から始まったこの行為を少年には拒否する権利はない。  「たかみたかみところ、いやしいやしみ」  男達は文言を唱えながら少年の脚を押し開き、挿入する。  「じゅすな様、じゅすな様、お身体をお与え下さい」   散々弄られ尖った乳首を舐め、しゃぶりながら男達が叫ぶ。  二人で一つづつ乳首を吸う双子のように。  一回に4人の人間によって行われることは決まっていた。    「たかみたかみところ、たかみたかみところ、いやしいやしみぃ」  脚の間にいる男は、髪を振り乱しながら腰をぶつけてくる。  少年は身体を震わせる。  慣れた身体は快楽を当然のように受け入れる。  その口にはまた違う男の性器が顔に跨がるやうにして咥えさせられているため、あげる声が聞こえることはない。  「じゅすな様・・・じゅすな様・・・たかみたかみところ、いやしいやしみ」  少年の喉を犯す男も文言を叫び続けている。  少年に触れていない男達は全員裸のまま、座敷の中央で行われるそれを文言を唱えながら見つめ続けている。  今日は男の日だが、女の日もある。  やられることは同じようなモノだ。  女達は張方と呼ばれる、水牛の角で作ったそれで少年の尻を犯しながら、少年に跨がるのだ。  10数人全員に犯され終わるまで、これは終わらない。  「うぉぉっ!!」  男がさけびなら少年の中に射精した。  口の中でも弾ける。  「じゅすな様」  「じゅすな様」    射精した男達は恭しく少年の足先を額に押し付け、平伏したあと、下がり、また新しい男達がやってくる。  まだ乳首舐めていた男達が今度は口と後ろの穴に挿入する。  まだ精液が残る口や、精液がこぼれだしてぽっこりと開いたままの穴に、恭しく、でも待ちきれなかったことを隠しもせずに。  そして今度は違う二人が脚の指を舐め始める。  「たかみたかみところ、いやしいやしみ」   男達は腰を降り始める。  指をなめていた男が、舐めながら、少年の勃起することなくダラダラとこぼれているそこを扱き始める。  くぐもった声が少年の塞がれて唇から聞こえて、男達は満足する。  少年の身体が快楽に震えている様子にも。  儀式にはそんなもの関係ないはずなのに。  聖なる入れ物としてこの儀式では扱う少年を、儀式の外ではこの村専用の性的玩具としても扱っていることは公然の秘密だ。  儀式は半年に一度だけれど、誰かが常に少年を使っている。  男も女も関係なく。  儀式に耐えられるための練習のためという名目で。  その白い身体を弄び、その身体で快楽を得るために。  でも今は。  この少年は聖なる入れ物だ。  この村の儀式にはかかせない。  「たかみたかみところ、いやしいやしみ」  男達は腰を打ちつけ、少年の中で放つために動き始めた。  少年の身体は従順に淫らに揺れて、揺れる焚かれた火の明かりに白く淫らに照らされていた  夜毎、押し開かれ、誰かに蹂躙されることに慣れた白い身体が、妖しく自ら腰をうごめかし、中から、喉から、男達の精を搾り取る。  「ああっ・・・いいっ・・・じゅすな様!!」  「ダメだ・・・もたな・・・じゅすな様!!」  少年の中にいる男達は叫び、  「じゅすな様」  「じゅすな様」  それを見ている男達も口々に叫んだ。  男達が達する度に、少年が極める度に、その声は大きくなる。  村に幸運を呼ぶ、その名を。  抱えられるようにして帰ってきた少年は、布団の上に寝かされる。  もう清められ、落ち着くように薬湯も与えられている。  さすがにしばらくは誰もこの身体を玩具にしに来ることはない。  少年は儀式が死ぬ程嫌いだが、儀式が終わった後の数週間は好きだ。  触れられることがないから。  「しっかり、じゅすな様の面倒を見るんだよ」  誰かがあの子に言った。  あの子は小さく頷くだろう。  あの子が声を出して話すのは自分にだけだ。  少年は知っている。  それが嬉しい。  玄関の戸が閉まる音がした。  そして、玄関からやってくる小さな足音を少年は深く愛した。  「お兄ちゃん・・・」  あの子が自分の前だけで出す声の甘さに酔いしれる。  薬のせいで重く閉じようとする目を薄く開ければ、自分を見下ろす心配気な小さな顔。  「心配しないで・・・いつものことだから」  少年は薄く笑う。  少年が微笑むのはあの子にだけ。  「お水いる?お薬は?」  あの子の話し方はたどたどしい。  少年は15になったがあの子はやっと10になったところか。  でも年の割には幼い。   外見も。  精神も。  それは多分少年があの子に大人になって欲しくないから。  知らないでいて。  ボクにされていることが本当は何なのか。  「大丈夫・・・一緒に寝てくれる?」  少年はあの子に頼む。  この世界でただひとり、触れていたい触れていてほしい人間に。  「うん」  あの子は布団に潜り込んできた。  少年の胸に顔をうずめて、当たり前のように抱きついてくる。    少年は暖かいその身体を抱きしめる。  暖かい。  暖かい。  愛しい。    これは違うものだ。    あの中を擦りにくるものとも、舌で舐めにくるものとも、根本的に違う。  少年はあの子の頭の天辺にキスをした。  お日様の匂いがした。  薬草を使っているから、草木の匂いも。  あの子も少年の首筋にキスをした。  沢山吸われた跡があったが、あの子はもう慣れているので気にしない。  そのキスだけがちゃんとキスだった。   他の奴らのはそうじゃない。  少年は知っていた。    「愛してるよ」  少年は囁いた。  「あたしも愛してる」  あの子も言った。  少年はあの子を抱きしめて眠った。  しばらく。  しばらくは・・・。  二人の間に邪魔ははいらない。  少年は幸せだった。

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