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第24話 奪還

 僕は両手で顔を覆った。  あかん。  こんなん見たらあかん。  落ちたその部屋で占い師はお楽しみの最中やった。  うそお、こんなんAVでしかしたらあかんやんつやん・・・。  占い師は部屋の中央で、二人の男のものを後ろにくわえ込み、違う男のものを口に咥えていた。    3人の男と同時に繋がっていたのだ。  そんなん、2本も入るん・・・うそぉ。  そんなにひろがるん・・・  ええっ・・・     僕は慌てて両目を塞いだけど、広がりきったいやらしい穴とか、男のものを頬ばるヤらしい口とか見てしまった。  いや、僕、アイツ以外は男はあかんおもてたんやけど、おもてたんやけど、あの占い師、やらしすぎるやろ!!  いや、見たらあかん。  僕はアイツ一筋や!!  勃起などせん!!    「お食事中悪いんやけどな、蟲を返してもらうで。あれはお前のもんやない!!」   僕と違ってアイツは全く平気やった。  占い師の喉を犯しているガタイのいいオッサンの裸の尻を蹴飛ばしさえして言った。  なんで?  なんで?  僕とする時はあんなに恥ずかしがるくせに!!  泣きながら恥ずかしい言葉やっと云えるくらいやのに。  「オ、オマエ何や!!」  セックス覚えたてのガキみたいに、オウオウ声を出して腰を振っていたおっさんが、正気にかえった。  僕は指の間からそれを確認する。  まあ、みてた。   少しは。    アイツが蹴った尻も背中も綺麗な蛇が彫り込まれていた。  ヤクザや。  上と下から占い師を犯している男も。  みんな入れ墨もんや。  アホみたいになって、占い師の身体にすがりついてた連中が、正気に戻る・・・。  のを待つつもりはなかった。  僕は命令は待たずに飛びかかる。  占い師の口を犯していた男の鼻をへしおった。  倒れたら、その口を靴の底で踏みにじり、歯を折った。  そして、ぬらぬらと濡れて口から抜けたばかりの陰茎と睾丸を思い切り蹴った。  悲鳴すらなかった。    まだ他の二人の男と繋がっている占い師の白い腹を思い切り蹴った。  占い師の身体は吹き飛ぶ。  倒れ転がる占い師の尻が見えた。  2つの陰茎が後ろの穴から抜けたばっかりで、ぱっくり開いた占い師のそこの穴からドロドロの精液が零れるのはヤらしいとはおもった。    まだ勃起したままこちらを呆然と見ている、残りの二人の男の顔を殴り、睾丸を踏みつけた。  まかせろや、一瞬やで。  他愛もない。   自慢にはならんな。  まあ、油断してやってるとこ襲ったんやもん。  僕かて、アイツとしてるとこ狙われたらヤバいし。  男達は声すら立てない。   もう動かない。  「殺してへんやろな」   アイツが心配そうにいう。    「大丈夫や!!」  僕は請け合う。  知らんけど。  と小さく言うのは聞こえてないはずや。  手加減なんか教えてもらうたことないんやもん。  知らんし。  殺したいなんて思うわけないけど、やってもうたもんはしゃあないやろ。  アイツは部屋の端に目をやった。  ベッドがあり、そこにあの蟲の女の子が寝ていた。  「連れていく。これはお前のもんやない」  アイツは占い師に言った。    占い師はゆっくり立ち上がった。  僕はそんな甘い蹴り方はしてへん。  確実に骨は折っとる。  のた打ちまわって、泣く位のことはしとる。  効かんのや。  そういうことや。  コイツはおかしい。  ナメクジやなくても。  「あの子を奪う?私から?この私から?」  占い師は歯を剥き出しにして言った。  美しい筈の顔が、真っ黒に充血して腫れ上がり、目が外れそうなほどに見開かれた。  あの白い人形のような顔が悪鬼のように変わった。    怒っていた。  瘴気のように怒りが立ち込めていた。  背中がまがり、獣のように顎が外れんばかり開かれ、とがった歯がむきだしになる。  僕は後ずさる。   怖っ。   「お前の【あの子】はもうおらん。あれは蟲や。蟲は飼われるもんやない。解放したれ」  アイツは気の毒そうに言った。    「あの子は誰にも渡さない!!あの子は私のモノ だ!!」  占い師の声は嗄れ、もう獣の声だった。    充血した白目、瞳孔が開いた目は猫のように光った。  精液をまみれの身体、股間から自分の精液を、後ろから男達の精液を垂れ流しているのに、全く淫らでも、笑える姿でもなかった。  僕は下がったことを後悔する。  気圧されたらあかん。  まだ、ナメクジモードじゃないのに。   「死んだ人間は帰ってこん!!諦めろ!!」  アイツの怒鳴り声は悲しく聞こえた。  なんなん。  お前。  誰や。  誰が死んだんや。    それは一つの疑問にいきつく。  ソイツを僕より好きなんか?  もし、そうなら許せへん。  誰かしらんけど。  死んでるくらいでは許さへん。  だけど今は待つ。  今は、化け物と向かい合う時間やから。  「お前に何がわかる。人間風情が!!」  占い師は獣のような顔で、獣のように言った。    皮肉っぽくその言葉にアイツは笑った。  「お前かて、人間やぞ。所詮な。俺と同じ人間や。死んだ人間をこの世界に留めるなんて・・・人間にはできんのや。蟲の力を借りてるだけや。蟲が人にならんように人も蟲にならん。あの子は蟲やし、お前は人や。諦めろ」  その言葉に占い師が激高した。  髪の毛が逆立ち、目はつり上がり、口は裂けるんじゃないかと思うくらい開かれた。  「黙れぇ!!」  獣の咆哮。  「図星やろ・・・図星さされて怒るなんて小さいねん」  アイツは鼻で笑った。  すがすがしい位にムカつく言い方やった。  僕は愛してるから可愛いとしか思わへんけど、他の人やったら殴りたくなるやろ、とは思った。  でも、だからこそわかった。  占い師が人間ではない跳躍力でアイツに襲いかかってくるのを。  ぎぉぉぉお    占い師は吠えた。  悪鬼の顔で。  でもその長い髪だけは美しく、宙に広がる。  占い師は手で殴ったり、脚で蹴ったりなんかしてこなかった。    尖った歯が白く光った。  獣のようにその尖った犬歯がある歯でアイツの喉を狙いにきたのだ。  瞬間にアイツの前に出て、アイツの喉に届く寸前のその横っ面に思い切り拳を叩きこんだ    占い師は吹き飛ぶ。  だけどこんなものでは効かないことはわかっている。    でも構わずその部屋の隅にあった椅子を占い師に向かって叩きつける。  どうせすぐ回復される。  でも、わずかでもいい逃げる時間が欲しかった。  確実にコメカミを狙った。  脳があるなら動けなくなるからだ。  血が飛び散る。  骨が折れる音もする  でも効かないんだ。  どうせ。  でもぐったりとなった。  すぐに目を覚ますし、地下へ向かってくる連中の声もする  「椅子を胸の上におけ!!」  アイツが叫ぶ  わかんないけどその通りにする。    「なやわまらさはり!!」  アイツは怒鳴った。    椅子は気体のようになり、ゆっくりと占い師の身体と床をすり抜けるように沈んでいく。    「なかさやな!!」  アイツの声と共に、椅子はまた実体化した。  同時に占い師の身体から血が吹き上がった。  実体になった椅子が占い師の身体を床まで貫いていたのだ。  ウギャァ!!  占い師は叫んだ。  椅子はまるで柔らかい泥に深く突きささった様に、占い師の身体と床にその4本脚のうち、2本をめり込ませていた。  床と占い師の肉体にめり込んだ脚のため、斜めに傾いだ椅子は、暴れる占い師の身体に合わせて揺れる。  だが、床や身体に深くささった椅子は抜けそうにない。  椅子をピン代わりにして留められた昆虫の標本のように、床に占い師は留められた。  占い師は叫び手足をバタバタと動かした。  気体になったモノがすり抜け終わる前に実体化したら・・・こうなるんや!!  僕はゾっとした。  壁や床を抜ける途中で黒がそれを止めたら・・・。  壁に身体を貫通されて貫かれて死んでる僕を思った。  「いくぞ」  アイツが叫んだ。  ベッドの女の子を指差しながら。  アイツに女の子を担いで逃げることなど不可能だからだ。  何度も言うがアイツには本を持つのがやっとの腕力しかない。  僕は女の子を担いだ。  「さはら。やかなやわら!!」  アイツが叫ぶ。    影に向かって。  そして、僕に言った。  「オレがドアを開けるタイミングで壁をぬけろ!!そして外からドアを塞げ!!」  命令だった。  上の部屋から僕達を追ってきた連中はドアを壊しにきている。  重い固いものをドアにぶつけてる。  ドアがガンガン揺れでいた。  アイツはドアのカギへと手を伸ばす。    「いくぞ、1、2、3だ!!」  1  2  3  アイツはドアを開け、僕は女の子を抱えて壁を抜けた。  ぎいしゃぁ   ぎいしゃぁ  占い師の叫んだ。  その声が耳についた。  愛する者を連れ去る者への呪いの声だ。  壁を抜けると、開いたドアから部屋に吸い込まれていくヤクザ達が見えた。  部屋の中に意識が向きすぎて、僕に気付いてない。  最後の一人が入ると僕はドアをしめて、「何故か部屋の外にあった」錠を下ろした。  大きな鉄製の重い錠を。    アイツはこのドアが中からでなく、外からも鍵がかけられることを知っていたのか?  下ろした後、閉じ込めれたことに気づいた連中が今度は中からドアを叩き始めたが、外に転がっている椅子や工事用のハンマーは中にはない。  あるのはエアマットのベッドと、占い師に突き刺している椅子だけだ。  簡単には開かないだろう。  でも、アイツはどうやって出るの?   ヤクザと今この部屋の中にいるはず・・・  心配になる。     考えがあるはず・・・。  「行くで」  アイツが悠々と壁をぬけてきた。  「どうやったん?」    思わず聞いた。    「赤に壁の幻覚を作らせてな、ドアと壁の間に立ってたんや」  アイツは笑った。  冷静なら壁の在り方が不自然なことに気づいたはずだが、冷静じゃないから騙されてくれた、と。  「なんで外から閉められるって思ったん?」  それも聞く。  「明らかにあそこ拷問部屋か監禁部屋やん。むしろ中にも鍵があるのに驚いたわ。占い師が使うようになってから後から中につけたんやろ」  アイツの言葉に納得する。    「さあ、逃げるで、占い師のヤツ、身体を引きちぎってでも出てくるで」  アイツは言った。  僕も頷く。  占い師が女の子を諦めるはすがないのだ。    僕ら堂々と入り口から出て行った。  女の子を担いで。  まあ、走ったところで、アイツは歩いてるのと変わらんしな。  屋敷に向かうとおもっんたんやけど。  違った。  アイツに連れられ、街の隙間を歩いていく。  女の子を担いでるから、表通りは歩かれへん。  間違いなく、コレ僕が悪者みたいやもん。  「追ってくるんちゃうんか?」  僕は聞く。  「ああ、だからや。屋敷に逃げ込んで、占い師が死んで、この子が人の形を取れんなるまで待つことも考えたけどな。人間の生き餌がなくなって、この子が人間の形とれんなっても、占い師は人間の精気絞りとってでも生き延びて、蟲を取り返しにくるやろ。もう、この蟲達と占い師しか、その女の子の記憶は残ってへん。女の子の姿をしてなくてもな。占い師は蟲を離さん可能性がある。だから占い師とやり合うしかないんや」  アイツの説明はわかる。  でも、どうすんの?  その具体的が欲しい。  「俺かて、そこまで綿密に計画立てられてるわけやないんや。今回は。即興でやるしかない。でもな、ここは姫様にお願いしようと思う」  裏通りをぬけて、繁華街の中にある小さな御堂の前でアイツは止まった。  僕達の町には、角や辻に小さな御堂や地蔵や道祖神がやたらとある。  この柄の悪い街は、それでもそんな小さな御堂に花やお酒が捧げられているのも、特長的だった。  アイツ曰わく、この街は狭間が多いから、不思議なことが多いから、人は神を恐れて御堂や地蔵を置いているのだろうということだ。  お寺や神社が沢山あつまる寺町があることも関係しているのかもしれない。  まあ、寺町の隣りにあるのは、風俗街だけど。  聖と俗の町なのだ。  「姫さま・・・なん」  僕は顔が蒼白になる。  「でも、ここ前に姫様がおった御堂やないやん」  僕は震えながら言う。  僕も前に姫様に会った。  姫様の背中にも乗った。  だからこそ、もうお会いしたくなかった。  「御堂の場所と姫様がおる場所は関係あらへん。ようは狭間さえ重なればええ」  アイツは言った。    わからへんけど、そうですか。  僕は白い顔のまま、頷く。  「あなわらはさはら、はな」  アイツは恭しく、御堂の前で唱えると、ゆっくりと御堂の扉を開いた。  「あなかはら、やなのら」  御堂の中の闇から、美しい声がした。  御堂は僕の背丈しかないし、奥行きもない。  だが、次の瞬間、その小さな御堂の戸口からぎっしりと、人間の手が何本も何十本も伸びていた。  無理矢理花瓶に詰め込まれた花のように。  指がもがくように動き、腕はしなう。  老人の腕、女の腕、子供の腕、男の腕、太った、痩せた、様々な腕が御堂から飛び出て揺れる。  「やなやりしら、やたは」  アイツはそう言うとゆっくりと頭を下げた。  僕も女の子を担いだまま頭を下げた。  さあ、お出ましになるで。  アイツのお気に入りの怪異。  蟲姫様や!!  そんな小さなところから、出てくるはずか無いものがズルリズルリと這い出てくる。  いちど沢山の腕が引っ込んだ。  そして、美しい女の頭がまず出てきた。  その後に美しい白い二本の腕が。  白い露わな豊かな胸。  なだらかな腹。そして淡い陰毛の下の性器さえ見える。  でもその女の腰から下には、白い脚ない。  巨大な沢山の手足が生えたムカデのような身体が伸びている。  ただムカデの脚の代わりに、人間の腕が何本も何本もその身体には生えているのだ。  人間の上半身にある一組の腕だけは美しく真っ白な女のモノだが、後の腕は大きさも年齢も性別も様々だ。  その腕が先程、御堂の入り口から飛び出していたのだ。  その蟲の化け物は這い出してきた。  全てじゃない。  おそらく、全てでてきたら、6メートル以上はあるはずだ。  御堂の中に収まる長さではない。  でも、怪異は物理法則を曲げるのでもう気にしないことにした。  だが、顔は美しい。  とても美しい。  「蟲姫様」とアイツは読んでいる。  この町に古くから住む怪異の一つ、だ。  蟲姫様は真っ赤な唇を少し釣り上げて、真っ黒な切れ長の瞳をアイツに向けて笑った。  「かならはさらた」  美しい声で。  アイツは蟲姫様の美しい手に、映画の貴族みたいな口付けした。  「かならはさた」  アイツもいった。  ふたり(?)は見つめ合い微笑みあった。  蟲姫様は悪意喰いと共にアイツに好意的な怪異だ。  もっとも、アイツの受け売りだが、怪異からの好意は全てが人間に良い方向に向かうとは限らない。  赤と黒かて、アイツが好きやけど、アイツの死体は完食する気満タンやからな。  もちろん喰わさん。  もしもそんなことがあったなら、僕が喰う!!  「ならはやかはらわなや、またなやらさらな」  アイツは社交を終えて、蟲姫様に頼む。  蟲姫は少し考えこむ。  美しい髪は艶やかに流れる。  美しい。  美しい。  でも、無理!!  僕は蟲はむり!!!!!  僕はさっきから膝がガクガクしてる。  占い師みたいなナメクジも嫌。   芋虫みたいなこの女の子も嫌。  でも、この脚が沢山ある系は・・・絶対絶対無理なんや!!!    いくら美しい顔見てても、そこしか見んようにしても無理や!!  「かなさりわやなか・・・なやらはかなた」  蟲姫様が少し恥ずかしげに言った。  アイツが困ったような顔をした。    「ええ・・・俺には・・・わからん・・・」  目を泳がせ、悩んでいたが、なんかわからんが腹を決めたらしい。  「なやらはたわゆら、なやわらにさはら!!」  アイツは胸を叩いて言い切った。  わからんけど、大丈夫か?  心配になった。  怪異はどれほど親しくても、交換条件じゃないと動いてくれない。  アイツのボディーガード赤と黒が、アイツの死体を褒賞として求めているように。  蟲姫様もアイツに何か条件を出したらしい。  何言われたんやろ  とにかく蟲姫様はお喜びや。  頬を上気させて、嬉しそうに笑ってらっしゃる。  沢山の手足も嬉しげに手を叩いている。  「かなり、やひれな」  虫様が言った。  嫌な予感がした。  「乗れって。ありがたいことやぞ、姫様の背中に乗れるなんて」  アイツがニコニコ言った。  やっぱりか。  僕は口だけ笑いながら泣いた。    嫌とか言うたらまたおこられるから。  僕は、蟲姫様の黒く光り、硬い背中に、百足の背中に・・・アイツと一緒にまたがった。  そう、女の子は僕の前に乗せて。  沢山ある腕の何本かが、僕とアイツと女の子をシートベルトのように固定してくれた。  硬い虫の皮膚の独特の触感と、生暖かい人間の腕の触感に吐きそうになった。  そして、蟲姫様は僕達を乗せて・・・疾走したのだった。  薄暗いビルの隙間だったその場所の、壁を蟲姫様は駆け上る。  だって、虫だしね。  何十という人間の腕が波打つように、壁を駆け上がらせていく。  波打つように虫の身体が動き、蟲姫様の綺麗な髪が、靡く。  前にも登った。  蟲姫様に連れられて。  アホ程高いビルの壁を。  僕は泣きながら吐いた。    蟲姫様にゲロかからないよう、壁から垂直になって身体の首を下にむけて。  その高さにさらにえづいた。  泣いて泣いてしゃくりあげる。  「無理ぃ、こんなん無理ぃ・・・」    泣いちゃう。    百足だけじゃない。  僕は高所恐怖症なのだ。  でも。  でも、今回は・・・。  屋上にたどり着いても蟲姫様は止まらなかった。  どこへいくの?  どこに?  蟲姫様は壁のない場所へと跳ねた。    僕は自分が宙にいることに悲鳴をあげた。  落ちる。  落ちる。  落ちる!!!!  目を閉じた。  地面に叩きつけられる感覚を待つ。  ただ、落下する感触はなかった。  そして、別の浮游感。  恐る恐る目をあけた。    ありえなかった。  いくらなんでもやり過ぎや。  僕達は、僕達の町の上空を、蟲姫様に乗って飛んでいた。  「ウソやんこんなん・・・!!」  僕は泣き叫び、また吐いた。  地上にむかってゲロは落ちていったがその行き着く先など気にしてられなかった。  「最高や!!」  アイツが興奮して叫んでいるのが見えた。  僕は頭が綺麗な女である百足に乗って、空高く飛んでいることを受け入れられず、もう一回吐いて気絶した。  どこへむかっているのか、そんなの僕が知るわけもなかった。 [

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