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第30話 始まりの場所

 「あいかやわはら、すささ!!」  「なからさらなや、すささ!!」  赤と黒が声を掛け合って跳ねるように僕の隣を歩いている。  僕と赤と黒は、山の中を探索していた。  僕は慌てる。  時間がないのだ。  アイツの話では、空を飛んできた僕達より時間はかかったとしても、間違いなく占い師はもうすぐ、やってくるからだ。  あの女の子を取り戻しに。  良く知りもしない山を歩くのは危険なのは僕にでもわかる。  なので僕はロープで赤と自分をくくって離れないようにしている。  コイツらが僕を山奥に捨てていく可能性は十分あるからや。  コイツらが僕を嫌ってんのは知っとる。  置いていかれたらたまらへん。  つなぎ目にアイツの血を垂らしてあるので、黒がロープを気体化するのは不可能らしい。  赤と黒はアイツが取り出したナイフで切った人差し指の傷口を必死で舐めて、味見してたけどな。  むかついたのでコイツら押しのけて僕が舐めた。  血の一滴まで僕だけのもんや。  指舐めてたらオカシイ気持ちになって、アイツのチンポ舐めてるみたいな気分になって、押し倒しかけたけど、怒鳴られて止めた。    「そんな場合やないやろ!!」  アイツが真っ赤になってた。  しぶしぶ離れたけど、アイツ絶対勃ってたはずや。  またしよう。  指舐め、ええなぁ。  とにかく、僕は赤と黒と一緒に山の中を引きずりまわされているのだった。  「あなたら、さ」  黒が急に立ち止まって言った。  赤と僕も止まる。  「何や?」  尋ねた僕の頭を飛び上がって赤が殴る。    「痛っ!!」  悲鳴をあげたらまた殴られた。  赤は猿に似ているが指は人間のように器用に動く形をしている。  ただ、指の数は6本だ。  その指を一本口の上に立てた。  黙れということか。  黒のうさぎのような耳がピクピクと動く。  まるでアンテナのように。  いや、音をひろっているのだ。  黒の聴覚は遥か先の物音さえ拾えるのだ。  その気になれば。  ある方向で耳が止まった。  「かなさろら、さ」  黒がいう。  赤がその黒の耳が向けている方角へ目をやる。  赤の目は(以下省略)  赤の普段は赤茶色の瞳が七色に光った。  フラッシュのように発光する。  「かなさらは、や」  赤が叫んだ。  そして、赤と黒が跳ねた。  ものすごい勢いで駆け出す。  僕も引きずられるようにはしる。  嘘ぉ、コイツらめちゃめちゃ速い・・・。  僕やなかったら死んでたと思う。  崖を駆け、木々の間をロープを離さないように駆けるのだ。  何度も転びかけ、必死で体勢を立て直した。  転けたら死ぬようなところばかりを駆けていたからだ。  そして。  赤と黒が立ち止まった。  森の中だった。  「ならはさかや」  「ならはさかや」  赤と黒が僕に言った。  ここからは僕の出番だと。  ああ、そうですか。  そうですよね。  僕でないとダメなんやね。  そして、僕はその場に座り、アイツに言われた通り、別に「思い出さなくて良いこと」を思い出し始めていた。  「忘れても構わない」ことを。  それが餌になる。  僕は僕を囮にした。

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