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第33話 滅ぼせ

 そこにあった。  そこにあった。  じゃすな様の中に生まれたそれが。  女王が産卵する時に生まれたその変異した蟲が。  それは。  それは。    何代目になるかの入れ物であるじゃすな様を食い破り出てくる幼虫達と、新しい女王と共に生まれてきたのだ。  それは他の蟲達とは違い、ナメクジのような形状をしていた。    泣いているのは・・・・、次の入れ物であるじゃすな様になるはずの少年か。    新しい女王だけは卵のまま生まれてくる。  他の幼虫達は蟲部屋の蟲達の中に紛れていく。  じゃすな様は120年に一度位の間隔で総入れ替わりする。   これは60年に一度の女王の入れ替わりとは別にある、女王以外のじゅすな様の入れ替わりだ。  卵の女王以外は数ヶ月後に年を得たじゃすな様達は死に、変わらぬ大きさになった新しいじゃすな様達に代わるだろう。  そして、その女王の卵を新しい入れ物である少年は挿れること要求されていた。  沢山の男達に犯されてた後に。  占い師もそれを知っている。  あの緑のモノを精液が零れる穴に挿入されるのだ。    数日以内にの中で卵は孵るだろう。  そして、女王の代替わりする日まで、少年の中で生きるのだ。    腹を食い破れた先代のじゅすな様の前で少年は犯され、蟲を身体に受け入れさせられたのだ。  そして、少年がじゅすな様になる。  少年は泣いている。  その少年に寄り添う少女も泣いている。  「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん」  その光景は何かを思い出させられ、占い師は初めて胸の傷みを覚えた。  だが、時間を遡りすぎたようだ。  でも、占い師はその小さな生まれてたてのナメクジが小さなじゅすな様にまじって蟲部屋に紛れ込んだのは視た。  そう、これが始まりなのだ。  それが生まれたのだ。  変異した蟲が。  占い師はこの10年ほど後に飛ぶ。    嫌気がさすほど同じ光景が視えた。  美しい青年を犯す村人達。  青年に寄り添う少女。    何も何も変わらない。    「お前に卵を産んでもらう。何、安心しろ、先代のように死にはしない。あれは完全な代替わりだからな。あれほど沢山のじゅすな様を産む時には女王も死んでしまう。今回は、薬でじゅすな様の身体を変化させて、新しい女王様だけを産んでもらう」  当時の宮様が、青年に言う。  青年は青ざめる。  「その卵を誰に挿れるの」  青年は震えながら聞く。  「わかっているだろう。お前もあの子もじゅすな様に仕えるために存在しているのだから。お前がじゅすな様と呼ばれるのはそのためだ。お前はじゅすな様で、じゅすな様そのものなのさ」  宮様が冷めた声で言う。  青年は黙る。  逆らうようには教育されていないからだ。  「安心おし、お前の中のじゅすな様はお若いじゅすな様だ。お前のじゅすな様が死ぬようなことがない限り、あの子に挿れたじゅすな様は眠ったままだ。あの子はただの入れ物でしかない。殺して中のじゅすな様を取り出されたりはしないさ」  宮様の声はどこまでも冷たい。    青年は黙って唇を噛む以上のことは出来ない。  占い師は歯噛みする。  自分ならば、少女を連れて逃げるのに。    連中があの子を殺すなんて知っていたら決してそんな真似させなかった。  この「じゅすな様」は必ず死ななくても、少女に蟲の卵を挿入れることをを許すつもりか。  占い師は「じゅすな様」である青年の弱さを軽蔑してしまった。  だが、青年は反対の意志こそ示さなかったが、蟲部屋にむかった。  蟲部屋の蠢く沢山のじゅすな様達が、青年が部屋に入った瞬間反応する。  体内にいる女王に。    ちっちっちっ  ちっちっちっ  肉を噛みきる刃物のような口もとをじゅすな様達は打ち合わせて、女王を迎える。  部屋に満ちたじゅすな様達の鳴らすその音は、女王への従属を示す音だ。  じゅすな様。  それは、じゅすな様を宿すもの。  蟲達。  女王。  そして、入れ物になる少女。  これら全てに与えられる名前なのだ。    青年はじゅすな様達を憎み、それと同時に人間に彼らも縛られているからこその、共感を感じる。  「あの子を死なせない」  青年は呟いた。  卵を入れられたなら、今の女王に何かあった時、殺して取り出される。    そんなこと、許せない。  あの子にだけは手を出させない。  入れ物である少女は同時にじゅすな様である青年を繋ぎ止めるための鎖でもあった。  少女が村に縛られているからこそ、逃げることなく村にいる。  だが、少女の命がかかっているのなら、この村に従う必要などもうなかった。  青年の気持ちが占い師にはわかった。  それは自分もそうだったからだ。  あの子が殺されることを知っていたならば、何をしてでも二人で逃げたのだ。  「どうすれば・・・」  青年はでも無力だ。  生きるための知識、全てを与えられていない。  じゅすな様に対する知識と、セックスのやり方だけが「じゅすな様」に与えられる知識なのだ。  ちっちっちっ  ちっちっちっ  人間とは違い、純粋に女王を慕う蟲達が従属音を鳴らす。  蟲達は女王のためになら何でもするだろう。  だが、所詮・・・蟲なのだ。   だが、蟲は蟲にしか出来ないことがある。  あるはずだ。  蟲達を使って、奴らに逆襲できる方法が。  そして、青年と、体内にいる女王は気付いた。  ちっちっちっ  ちっちっちっ  全ての蟲が音を鳴らすはずの部屋の中に、鳴らさない蟲がいることを。  異物がいる。  違う何かが。  あり得ない。  蟲達は、異物がいたら攻撃し食べてしまう。  蟲部屋に入るには、蟲の匂いに似た草を煎じたモノをふりかける。  女王を体内に飼ってる青年以外は。  それはあの子の匂いだ。    淡い草の香り。  いつも世話をしてるから。  餌にする生き物には攻撃するモノへの蟲が放つ臭いに似た薬草を調合したモノをなすりつける。  そうすれば、蟲達はそれを喰らう。  そう、蟲達は異物を認識できる。  出来るはずなのに、この部屋には異物がいる。  そして、それは攻撃臭を青年と女王に向かって放っている  女王が放つ臭いがその攻撃臭を抑えているため、他の蟲達は従属音を鳴らしているが、女王の臭い、フェロモンがなければ、蟲達は青年と女王にむかって攻撃してきただろう。  基本的に肉食ではあっても蟲達は穏やかで、生きてるモノは襲わない。  生きたまま食べさせるためには、攻撃臭をふりかけるか、蟲と同調させるしかないのに。    どういうことだ?  青年は困惑した。    でも、女王と青年はソレに気付いた。  蟲の女王として。  青年は蠢く大勢の蟲の中からソレをみつけたのだ。    ソレはいた。  一匹だけ姿の違う蟲。  ナメクジに似た姿を持つ、蟲。  変異した、蟲。  女王に従わない蟲。  怒りに満ちた・・・・変異体    ドクン  青年の胸が高鳴った。  わかった。  これは、女王だ。  変異した、女王だ。  青年の中の女王は拒否の声を上げた。   だけど、青年にはその蟲が放つ憎しみの波動が必要だった。  「・・・お前が私の運命か」  青年はそのナメクジに向かって手を伸ばした。  ちっちっちっ  ちっちっちっ  従属音が響く中、青年の手にそのナメクジに似た蟲は自分から乗った。     ナメクジは大きく、青年の手のひらにやっと乗る大きさだった。  青年は白い一重の着物を脱ぎ捨てた。  午前中に犯されたばかりだから、後ろはまだ柔らかいだろう。  両足を広げて、股を開き、こしをあげた。  指で押し開き、ナメクジをその中に導いた。  ナメクジはゆっくりとのた打ちながら、そこに入っていく。  「あっ・・・ああっ」  中を蠢き擦りながら入っていくナメクジに、青年はイカされる。  腸壁を食い破り、内臓をかき回す感触にさえ。  今までされたセックスのどれよりも良かった。  ナメクジが放つ物質が、脳や肉体に快楽を与えているのだ。    青年は初めてセックスの意味を知る。  セックスは支配だ。   蟲は青年の身体を支配していた。  内臓を喰らい、そして作り替えながら。  全てを喰らわれ、そして作り替えられていく。  心臓を喰らわれる度に、そそり立った性器から白濁が飛び出す。  痛みが甘すぎる。  胸が痛むほどの快楽だ、文字通り。    背骨を齧られる激痛の甘さに、中でイク。  神経を齧られ絶叫した。  あまりにもダイレクトな感覚。  そここそが全てを感じるところ。  それを直接刺激されて、射精が止まらない。  脳がイク。  痛みこそ、無視することなど出来ない感覚で、それら全てが蟲によって快楽に書き換えられるのだ。  腸をぐちゃぐちゃにちぎられ、かき回される。  涎をながし、絶叫し、勃起したままのそこが、また吹き出す。  背中をそりかえらせ、つま先を伸ばしたまま、尻を無意識に揺する。   尻よりももっともっと奥を犯されるのが心地よかった。  体内にいる女王が、身体を再生させているから自分が生きているのがわかる。  ナメクジが身体を喰らいながら変えていき、女王が宿主である自分を生かしているのだ。  好き放題中を暴れまわる蟲。  喰われ、そして違う何かに再生されていく。    脳まで喰らわれ始めた。  恍惚となった。  そして、ナメクジは・・・青年の体内にいた女王すら,・・・喰らったのだ。   ちっちっちっ   ちっちっちっ  鳴り続けていた従属音がやむ。    蟲達は沈黙する。  女王がいない。   女王が。  だが、次の瞬間、また従属音がなり始めた。    新しい女王の存在に気づいて。    ちっちっちっ  ちっちっちっ    蟲達は鋭い歯を打ち鳴らす。  それが女王を喰い、女王を取り込んだナメクジだとしても、蟲達はそれを新しい女王だと認識したのだ。  青年もゆっくりと起き上がる。  凄まじいセックスに、上気していた。  皮の下全てを食い尽くされ、作り替えられる支配は最高のセックスだった。    でも足りない。  もっともっと食べなければ。  セックスとは何かについてもう青年は知っていた。  セックスとは喰い殺すことだ。  喰って取り込むことだ。  それこそが一番気持ちいいのだ。  青年は笑いながら立ち上がった。  始めよう。  自分は逃げる方法を知らない。  生きる方法も。  でも、セックスは知っている。  この村全員に与えてやるとしよう。  本当のセックスを。  占い師はその過去を見つめる。  興味深く。    ちっちっちっ  ちっちっちっ  蟲達は青年への従属音を送り続けた。

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