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第35話滅ぼせ

 それから行われたこと。  占い師は青年と共にそれを楽しんだ。  補償のように、村人を犯し、殺す。  そして死んだ村人を蟲達が喰う。  青年はもう、人の形をとることさえ止めていた。  それは巨大なナメクジの形ににていた。  美しい人間の顔を前方の一部に貼り付けた。  ナメクジとは違い、下方にある人間ではない方口には多量の触手があり、それで人間を犯すことも搾り取ることもできた。     子供達は犯さなかった。  ただ、痛みさえ感じないように殺した。  恐怖だけは取り除いてやれなかったが。  代々子供の頃から犯され、いずれ蟲に喰い殺されてきたじゅすな様達に比べたら彼らは幸せだっただろう。  生きていたら、いずれじゅすな様を犯しにきたのだ。  誰もじゅすな様の存在をおかしいとさえ思っていなかったのだから。  老人達も殺した。    当たり前だ。  彼らがこの村を支えてきたのだ。  村から誰も逃がさないようにした。  沢山の放れたじゅすな様がレーダーのように逃亡者を見つけてくれた。    じゅすな様を抱き、じゅすな様の力を少しは得ているからこそ、村人達はじゅすな様に逆らえない。  じゅすな様はその脳に直接作用して、幻覚の中に村人達を閉じ込める。  道を崩して、助けが得られないようにした。  村人達は逃げ惑い隠れ、それさえも青年は楽しんだ。  時間をかけて復讐を楽しんだ。  泣き叫ぶ悲鳴と、赦しの声と、貪る身体と、味わう血肉と。  誰かを犠牲にして得られた天国を地獄に変えることはこれほどまでに楽しいことだったのか。  あの子だけは、眠らせていた。  あの子だけは、何も知らないで良いように。、  ただ、楽しみ過ぎて時間をかけ過ぎた。    その男がやって来たのだ。  痩せた黒衣の男。  男は不意に現れた。   青年が楽しみをほぼ終えた時に。  どうやって、ここに?  蟲達は反応しなかった。  触手で中から引き裂いたばかりの村の男の死体を、痩せた男はゴミでも見るような目で見ていた。  落ちている生肉以上の関心はないようだった。  「・・・哀れやな」  むしろ青年にむかってその男は言った。  無表情な顔の表情は何もかえずに。  ただ、その言いぐさは気に入らないものだった。  「終わらせたろ・・・お前のためにな」  男はさらに傲慢に言った。  青年そして、青年に重なっている占い師は激高した。  人間ごときが。  「人間に戻れなくてもな、人間はやめれんのや。人間以外になれる思てるのはお前の傲慢やぞ」  男の声は嘲笑うようであり、そして、どこか同情的でもあった。  余計なことは言わせたくなかった青年は、男をその巨体で潰すべく、襲いかかったのだが・・・。  占い師はその記憶を早送りする。  本当に必要なのはここじゃない。  青年の復讐は楽しいものだった。  心から青年に同調するが、青年が失敗したのは知っている。  60年後、占い師とあの子は再興したあの村に存在していたのだから。  何故失敗したのかは、覚えておくが、だが、必要なのはここじゃない。  そして、占い師は終わりの場面にたどりつく。    「これで終わりや。二度と蟲を人間がどうにか出来るなんて思うんやない」  痩せた男が生き残った村人達に言っていた。  村人は3分の1になっていた。    「これはお前らが責任持って管理せぇ。俺でも消すことは出来へんからな、覚えとけ。また同じことが起こるぞ。蟲に手を出したらな」  痩せた男はまだ生き残っていた村長にソレを渡した。    ソレは緑の石のように見えた。   でも、もう占い師はそれが何かわかっていた。  それこそが必要なものだった。  だからもう占い師の興味はその後の風景には興味はなくなっていた。  白い翼のある顔のない化け物に抱えられて、去っていく痩せた男にも。  痩せた男が泣いてる少女を抱いていたことも。  残念そうに少しずつ散り散りになっていく、蟲達を眺める村長の姿なども。  じゅすな様達は本来群生しない。  巣別れの時期にだけ群生する生き物を、女王を人間の体内で飼うことによりコントロールしていたのだ。  本来女王は巣別れの時期にのみ存在し、卵を生むとすぐ死ぬモノなのを人間の身体をつかって長く生かさせてきたのだ。  散り散りに山に溶け込み、もう二度人間に支配されないだろう・・・  もう、村はただの山村になる。  あれほどの栄華を誇ったのに・・・。  散り散りになっていく、蟲達が去った最後にあったソレに村長は気付いた。    ソレ。  その美しい石。  淡く光るようなソレ。  村長は知っていた。  それは、女王の卵だ。  このまま放置していたら、人間や何かの力では壊せるものではないから・・・おそらく60年後に帰り、卵を生む。  一匹の蟲の死骸があった。  人間では裂くことのできない蟲が身体が裂けていた。  おそらく、女王を産むために群れの一匹が変異し、女王を産んだのだ。  似たようなことは、蟻や蜂などでもある。  女王の卵。  女王の。  これさえ在れば。  これさえ在れば。  村長は考える。  確かに今回失敗した。  でも、もっと上手くやれるはずだ。  それに、あの男が恐ろしい化け物は封じてくれた。  キチンと二度とこれが目覚めないようにすればいいだけだ。  村長は笑った。    新しい子供を買ってこなこければ。  今度こそ。   上手くやる。  村は栄える。  また栄える。  そして、美しいじゅすな様を再び自分達のものに。  その微笑みは醜かった。  だが、占い師にはそんなことさえどうでもよかった。  占い師は恐ろしいものをどこに封じたかだけが分かっただけで良かった。  ソレはお堂に奉られていた。  美しい木像の中に埋め込まれて。  卵に戻り、眠りについて。  必要なものはソレだけだった。  必要なもの。  もう一度、そして、完全にこの村を滅ぼすために。  あの子を殺した連中を全員殺すのだ。    占い師はそして戻ってきたのだった。  過去から現代まで。  蟲達は必要なモノを視せてくれた。  占い師を犯していた二人の男は気を失っていた。  死なないまでも・・・精をしぼりつくされて。  

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