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第38話終わりへ

 蜂は自由落下のスピードで前下方にむかって攻撃してくるのは知っていた。    20匹もの小学生位の大きさの蜂が一斉に僕に向かって降ってくる。    詰んだ。  もうどうしようもない。  僕はアイツのことを考えた。  アイツを残して死ねない。  誰にも渡せない。    嫌や!!  僕のや!!  僕だけの!!  死んでも絶対に離れない。   絶対にアイツも連れて行くんや!!  僕は肉体が無くなってもこの世界に留まれることを願った。  アイツを手放したりせぇへん!!  僕はせめて一撃でも喰らわせるために拳を振り上げた。  あんの蜂の黒いガラスみたいな目、拳をめりこませたる!!  ハサミのような顎が玄海まで開かれ、尻の毒針が真っ直ぐこちらに向けられ、6本の腕が僕を捕らえるために向けられながら、最初の1匹が僕の真正面にきた。  僕はその目に拳をめり込ませ・・・ようと。     ぐうん  衝撃に身体が揺れた。    次の瞬間、僕は宙にいた。  腕一本でぶら下げられて。  蜂達も地面も遥か下にある。  一瞬で相当高いところまで連れて来られたのだ。  「・・・・・・やれやれ。自分の身も守れないなら、あの子は守れないぞ」  溜息をつく声。  知ってる。    ムカつく声。  スカした喋り方。  僕は真っ白な翼を持つ怪異の鉤爪に掴まれて、空を飛んでいた。  白だった。  アイツの影に住む怪異。  真っ白な翼を二本の腕の代わりにもち、鉤爪のある鳥の脚と、顔のない頭を持つ怪異。  顔の代わりにあるのは、真っ黒な穴だ。  ただの穴。  どこに繋がっているのかわからない、深い穴を顔の代わりに白は持っている。  僕は間一髪のところで、白に助けられたのだ。  そして、それは。  「あの子の命令だ。お前に何かあった時は、と。お前の影に入っていた」  白が言ったので、僕は悔しさと怒りで目眩がした。  アイツが僕を危険に晒すわけがなかった。  アイツは僕を愛しているのだ。  なにがあっても僕を守るのはアイツの方だ。  自分の不甲斐なさに吐き気がした。  白なんかに助けられる自分に。  恋人に守られている自分に。  そして白が僕を守るという命令を実行したということ。  それは・・・。  それは・・・。  「アイツのんはしゃぶらせへんからな!!」  僕は敵意むき出しで白に向かって怒鳴った。  赤や黒がアイツの死体を報酬に約束されているように、白もアイツに報酬を約束されている。  白の報酬はアイツの精液や。  僕は白の顔の穴がアイツのチンポから精液を絞り出し、飲むのを見てしまって以来、この怪異を殺そうと思っているのだ。  しゃぶるも何も、白にあるのは顔やなくて穴だけやし、アイツの精気であるから精液を欲しがるのであって性的なモノではないとしても・・・許されへんやろが!!  「分かってる。・・・お前から報酬は貰うさ」  白は面白そうに言った。  白は僕とも契約している。  僕の場合、精液ではなく血液だ。  身体の三分の一の血液を白にあたえなればならない。  「・・・くれたるわ!!」  僕は即答した。  恋人のチンポを化け物にしゃぶられるくらいなら、血液なんかくれてやる。    「よろしい。では行くか。あの子のところへ」  白は下から追いかけてくる蜂達を見ながら言った。  僕はビニールに包まれたパーカーを抱きしめながら頷いた。  予定とは違ったけど、これでええ。  むしろこれだけの蜂がいるなら。    白は蜂達を振り切らないスピードで飛びはじめた。  僕は蜂を引き連れて、アイツのところへむかった。      「かなりはわゆり」  占い師は叫んだ。  人間の顔の方で。  ナメクジの口は大きく開かれ、中から無数の触手が生意気な目をした少年に向かって襲いかかる。    少年の細く長い手足に瞬く間に触手は絡みつき、少年を宙吊りにした。  触手は少年のシャツの下にもズボンの中にも潜り込んでいた。    宙吊りにされても悲鳴さえあげなかった少年が、ピクンと身体を、ふるわせた。  濡れた触手が舐めるように、性器や後ろの穴を嬲りはじめたからだ。  「嫌っ・・・」  少年は身体をくねらせて、触手から逃げようと、する。  触手はシャツの下にある薄い胸にある乳首にも嬲りはじめた。  濡れた触手がそこを押しつぶして、摘み、絡みつき、きゅっと締めてくる。  身体がビクンと痙攣する。  それに反応する性器や、ひくつく後ろの穴も、触手が舐めるように動く。  「ああっ・・・ううんっ」  少年は喘ぐ。  占い師は笑う。  この少年は相当開発されてるらしい。  占い師がされたように、どんな苦痛でも快楽として受け入れないといけなくなるように、散々いたぶられてきたのかもしれない。  恐怖も、苦痛も、快楽に書き換えようとする脳にこの少年はなっている。  嬲られ続けることを受け入れたモノの身体だ。  生意気な目が涙目になっているのが嗜虐心を刺激された。    触手が服を引き裂いた。   白い肌がむき出しになる。  その肌には、生々しい性交の痕がある。  吸われた跡、噛まれた跡。  毎夜吸われているのだろう、ぷっくりとした乳首。  間違いない。   この少年は、手酷く抱かれる、愛玩物なのだ。  縛られた跡さえある。  そう、かつての占い師と同じように。  占い師はそう思った。    「・・・いや、ちゃうから。俺は別に乱暴されてるわけやないから。その同情する目で見んといてくれる?」  少年は慌てたように言う。  しかし、占い師は冷静に見ていた。  全身の噛み跡。  縛られた跡。  掴まれた手首や足首の痣。  「これは・・・これは・・・違う、違うねん!!合意の上の・・・、そんな同情するような目で俺を見んなや!!」  少年がキレた。  合意なんだ。  乱暴されてるわけじゃない、俺が構わないと言っているんだからいいんだ。  少年が喚く度、占い師は同情する。  殺すとしても、同情する。  そう思いこまないとダメだったのだな、と。    身体は暴力的な行為に馴らされて、感じるようにはなっていても、少年がそういう行為を好むタイプではないことは、まぁ、身体を触ればわかるのだ。  そう、占い師も同じ。  ポン引きに優しく抱かれるのが一番感じたのだから。  だって、ほら。  占い師は優しく濡れた触手でその穴を撫でた。  優しく、優しく。  いたわるように。    少年の身体はいきなり蕩ける。    「ああっ・・・」  腰が甘く揺れている。  凶暴な快楽を叩きつけられ続けた身体は、優しさに飢えているのだ。    優しくされたいのだ。  大切に扱われたいのだ。  毎日、毎日、乱暴な快楽ばかり与えられて、そんな扱いに感じてしまうようになればなるほど、身体も心も、飢えてきたのだ。  それを占い師も思い知っていた。  だから、もう、占い師はポン引きが手放せない。  あの子を取り戻したら、ポン引きを飼って、優しく自分を抱かせつづけるのだ。  いつまでも。  占い師は、優しさに可哀想なまでに感じてしまうことを知り尽くしていた。  同情し、ゆっくり触手を一本、二本、送り込み、優しく穴を広げていく。    その間にも、他の触手は乳首を優しく愛撫し、へその中まで優しく濡らし、もう勃起している性器を包み込む。  「嫌ぁ・・・」  少年は泣くくせに、腰は甘く揺れて、胸や性器に 抵抗するようにむかった指は、力無く触手を振り払うことができない。  「・・・違う・・違う・・・俺は・・・が好きやのに・・・」  誰かの名前を少年は呼びながら、もう迎え入れるように腰は動いている。  少年の快楽を触手から占い師は味わう。  飢えからくる快楽はたまらなく甘い。  触手がよじりあい、太くなる。  甘く香る濡れた粘液をだしながら。  それが少年の後ろにゆっくりと入っていく。    「嫌、・・・やだぁ・・・」  気の強い顔がくしゃくしゃに歪むのも、無理やり突っ込まれることに慣れた身体が、ゆっくりと小刻みに動かされ、入られるのに感じずにはいられないのも、占い師にはそそられるものだった。  「   !!   !!」  泣きながら呼ぶ名前は、この少年の飼い主か。  夜毎犯して泣かせるサディストのその名前か。  可哀想なこの少年にはセックスとは乱暴な快楽で、心をすり減らすものなのだろう。  だからほら、触手を束ねた男根がゆっくり焦らすように甘く穿つのを、受け入れてしまう。  「   がいい!!やだ、抜いて、抜いて!!」  少年が優しい行為に怯えて泣くのも、占い師はたのしんだ。  触手を少年は言葉では嫌がりながらも、その穴は締め付け欲しがるのだ。  腰はもう貪欲に動いていた。  自分から。  深く、奥を犯す。  触手を増やして、よじった男根を大きくしながら。  「いやぁ・・・嫌だぁ・・・、  の以外でイキたくないぃ」  少年は泣き叫ぶのが楽しくて、奥を突いた。  高い悲鳴をあげて、少年が達する。  白い喉がそる。   細い背中も。  華奢な身体が軋み、痙攣する。  少年を犯しているサディストの気持ちがわかる。  普段の高慢さ、そして、この嗜虐心を煽る細く脆そうな身体のギャップ。  子供のような泣き顔。  サディストじゃなくても、少年を抱いたなら泣かせてしまいたくなる。  壊してしまいたくなる。  もっと優しく、もっと犯して。  心を壊してしまいたい。  占い師は笑った。  笑わずにはいられなかった。  「あ、・・・ダメ・・・まだイってるのに」  緩やかにまた動かれ、少年が喘ぐ。  中の触手の男根がまた動きはじめたからだ。    「いやぁ・・・ああっ・・うんっ」  喘ぐ少年の中を触手を通して味わう。  ポタポタとまだ零し続ける少年の性器も、尖ってコリコリとした乳首も、触手で味わう。  快楽を拒否したくてもできなくて、ながす少年涙も。  口の中に触手で入り込み、その舌や唾液、喉の奥まで占い師は味わった。  優しくされたら、可哀想な位少年は感じた。    そこに愛しささえ感じた。  自分と、同じ、だと。  酷くされるのに慣れた、哀れな玩具。  可愛いとさえおもった。  だが、あの子に餌は必要だ。  殺すしかない。    深い抜き差しをゆっくりとくりかえしたなら、少年はまた背中や首を反らし、続けざまにイく。  締めつける穴や、今にも壊れそうな繊細な表情を楽しんだあと、占い師は触手でその中から、脳の奥まで貫いた。  腸を内臓を骨を脳を、触手はブチブチと貫いた。  少年の眼球を突き刺したまま、触手は少年の身体から飛び出した。  尻から、目玉までを、一気につらぬいたのだ。  うぁぁぁっ  絶叫したのは少年だ。  少年は絶命しなから、射精した。  その締めつけも、痙攣も。  それは占い師をひどく満足させた。  占い師の人間の、そして、ナメクジの脳の両方に快楽物質が行き渡ったのだった。

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