42 / 43

第41話終わりへ

 狐が僕達を迎えに来た時には、記憶蜂達は消え、僕は死にかけていた。  白に代償を払ったんや。  僕の血液の三分の一。    アイツが泣いて嫌がったけど、そこはめちゃくちゃ怒って引き下がらせた。  アイツの精液飲ませるなんてあかん。  飲んでええのも、出させるのも、泣かせるんも、イかせるんも、僕だけや!!  影から現れた白は僕の手首に無い顔を近づけ、その穴みたいな顔から見えない歯を手首にたてて、僕の血液を容赦なく吸った。  さすがに僕も朦朧として倒れて、アイツが泣き叫んで、赤と黒か僕の周りで早く死ねと嬉しそうに踊っているところに狐がやっと来たんや。  アイツが蟲姫様に乗ってここに来るまでに、狐にメールを送っていたらしい。  僕は麓の病院に放り込まれ、生き延びた。  死なへんわ!!  アイツを置いて死ねるか!!     次からは自己献血ということを考えている。  血液って貯めとけるんかいな。  占い師の最期を狐はアイツから聞いて、報告書をあげて、狐の仕事は終了らしい。  「あんた楽な仕事してんなぁ、あんたヤクザから逃げただけやん」  僕はアイツの話を聞くために病室に来た狐に言った。  死にかけた僕や、単身で占い師と対峙したアイツと比べたら何もしてへんのと同じやん。  アイツが僕から離れへん(嬉しい)から、ここまで話を聞きに狐は来たんや。  「安定を求めて公務員になったのに危ないことなんかしたないね」  狐はあっさり言った。  潔いヘタレやな。  「次期当主、お見事でした。言いつけの通り、あの山は一週間は誰も入れないようにしてます」  アイツに狐は言った。   敬礼までした。  「一週間あったら判じ蟲の新しい女王が生まれてるはずや。女王の卵を人間が手に入れないようにさえしたら、後は自然に還る。そこは爺さんの手落ちやった。あれだけやられたくせに、また同じことを繰り返す程人間が愚かやと思わんかったんや。爺さんは賢すぎて愚かな人間のことがわかってへんとこが欠点や」  アイツはちょっと嬉しそうに言った。  爺さんより上手くやれたから嬉しいのだ。  可愛い。  可愛い。  病室じゃなかったら、狐がいなければ抱きつぶしたいのに。  明日で退院らしい。  ガマンや。  手首に小さな傷があるとは言え、多量出血になっていた僕に医者は首を捻っていたが、国家権力が全ての疑問を封じたらしい。  怖いわ。  「判じ蟲は死にかけた動物に優しい幻覚を見せて、自分達に馴染ませてから食べる生き物や。記憶や予知の能力を人間が悪用したけどな。これからは本来の蟲として生きて行く。もう二度と、利用させん」    アイツは言い切った。  それはアイツが占い師に約束したことだった。  アイツは約束を果たすのだ。  そういう男なのだ。  「じゃあ、明日迎えに来ます」  狐は立ち上がった。  また敬礼する。  「次期当主、あなたと仕事できてボクは嬉しいです」  狐は心から言った。    そうやろ。  お前危ない橋は渡らんで済むもんな。  「俺は嫌や。俺は研究に忙しいんや。二度とくんな」  アイツの冷たさは惚れ惚れするほどやった。  「まぁまぁ、末永くよろしく」  狐はヒラヒラ手を振りながら去って言った。  僕とアイツの二人きりになる。  昨日まで面会謝絶だったので、やっと二人きりになった感じだ。  僕はじっとアイツをベッドから見つめる。  「なんや。キモイな」  アイツが顔をしかめる。  通常運転。  アイツらしい。  だから嬉しい。  僕は笑う。  「うわぁ、何笑てるねん、マジキモイぞ」     アイツは嫌そうに言う。  「帰ったら優しく抱いたるからな」  僕は言った。  アイツは瞬間で真っ赤になる。  あれほど抱いてイカせて、欲しがらせてんのに、恥ずかしがり屋さんやねんね。  だから、虐めたくてたまらんなる。  でも、わかってるんや。   僕、お前をめちゃくちゃにしてまう。  好きやから。  でも、お前、ホンマは優しいされるん好きなんやろ。  たまに優しく抱いたら一番融けるねんもん。    僕、僕の好きをお前に押し付けすぎたんやろ。  出来るだけ止める。  出来る限りお前が好きなようにお前を抱くから。  これからは!!  だって、お前の愛はデカすぎるんや。  僕の独占欲じみた愛よりも。  僕。  僕。  僕かて、お前をもっと愛したい。  「アホ。・・・・・お前は来てくれるやん、お前はどこにおっても俺んとこ来てくれるやん。俺を諦めんと助けにきてくれるやん。俺、お前が追ってきてくれるってことだけが・・・俺には全部や。俺の身体はお前の好きにしてええ。好きにしてくれ。お前にやれるモンはそんなにないんや、お前が欲しがってくれることのが俺には価値があるんや・・・」  アイツが淡々と言ったから、歴史的な事実を述べる時の調子で言ったから、本音なんやとわかった。  僕は・・・嬉しくてたまらなくなった。  アイツに僕の気持ちは届いていたのだ。  僕がアイツを愛してることをやっとアイツは・・・認めて・・・  「俺にはお前の友情が必要なんや」   アイツが言い切った。  友情。  友情ですと。    こんのひねくれ者の自己評価の低い学者の割りに事実を認められない臆病者が。  この後に及んで、僕の愛を友情やと?  僕の中で何かがぶち切れた。    アイツの細い腕を掴んでベッドに引きずりこんだ。    「ホンマ、言葉で言うてもわからんし、行動で示してもわからんし」  僕はぼやきながら、アイツの服を剥いでいく。    個室とは言え、看護士さん達がいつくるかわからない。  でも、もう関係なかった。  「わかるまで、身体に教え込むしかあらへんな。我慢してもお前全然意味ないねんもん」  僕は病院のパジャマをずらしてはフル勃起してるチンポを押さえつけたアイツの顔にすりつけた。  「馬鹿、お前、こんなとこで・・・」  アイツの顔が真っ白になる。  僕が本気だから。   止まらないことがわかったから。  「人がくる・・・」  アイツが無理やとわかってるのに説得しようとするのを、その口にチンポを無理やり押し込む。  今日はシャワーはいったからええやろ。  「うん。僕が納得したら終わるから、頑張って」  僕はアイツの喉の奥を犯しながら言った。  アイツがえづき、苦しむ声を上げて、涙を流す顔を見て、愛しさがこみ上げてくる。  でも、全裸にした身体の股間は、膨ら始めている。  ああ、なんて可愛い。  どんなに酷くしても、この身体は健気に僕に応えようとしてくれるのだ。  可愛くて可愛くてしかたない。  締まる喉を楽しみながら、髪を撫でる。  「頑張ってな。お前が看護士さん達にエロい姿見せるんは僕も嫌やから。頑張って僕を納得させてや」  僕の声は自分でも呆れるくらい甘くて。  でも、アイツは絶望的な表情を浮かべたから、さらに僕のは大きくなってアイツを苦しめた。  たまらんわ、その顔。  愛してる。  愛してる。    また後悔してしまうんやろうけど。  僕はアイツを可愛く泣かせることに夢中になった。    「看護士さん来るで・・・どうする?」  そう言って虐めて泣かせるアイツは、最高にかわいかった。

ともだちにシェアしよう!