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第14話

 とくに結論がでないことを悶々と考えていると時間がたつのは早いものだ。気が付いたら、お昼の時間を過ぎていた。  小豆のホットマフラー(勝手に名付けた)は3~4時間は持つようだ。さっき、額のタオルとともに代えたが、京さんはぐっすり寝ていた。薬のせいか、インフルエンザのせいかわからないけど、よく眠れるもんだ。  退屈だ。基本的に独りでいるときはテレビの新聞もみない。自分の琴線がどこにあるのかわからないから。ニュースにしてもドラマにしても、畏怖となる事柄や視覚的な光景が負担になることがあるから。それでも以前よりは見られるようになった。ネット検索もできるようになった。  おかゆの作り方を検索した。病気しなかったし、食欲のない状態って体験はないから、それでも食べられる食事っていうものを考えなきゃいけないからね。どれをみても案外簡単にできることはわかったけど、画ずらにパワーがない。パワーというか、食欲をそそるものではないので、さらに画像検索をして、溶き卵と小葱のおかゆがいいと思って実践してみる。  すぐできたものの、それほど美味しくないなぁ。清原が買ってきたものの中には、普段京さんが買わないものが多くあった。冷凍食品は特に買わない。ベビーホタテがあったのを思い出して、チンして刻んでおかゆに入れたら、旨味が増した。練習作だからこのまま自分で食べようと思ったら、奥で音がした。京さん、トイレで起きたかな?  しばらく待ってたら、寝室の扉が開いた。遠慮がちに京さんがスキマから覗いている。ソファーに寝転んでいるとでも思ったのか、さらに顔を出してリビングを覗くので、キッチンから手を振ってみると、目があって京さんも手を振り返した。 「どう?」  大丈夫? って病人に聞くのもおかしいかと思って、そぎ落とし過ぎたセリフが出る。 「ちょっと、寝疲れた」  京さんが力なくほほ笑む。だよね、と笑い返す間に扉に手をついていた京さんがちょっと前傾姿勢になる。やっぱしんどいのかな。 「……ダメっぽいね。ベッド戻って」  顎で指示するように言うと「ごめんね」といって京さんは戻っていく。何にごめん?  おかゆをお椀によそって、梅干しと漬物をちょっと小皿に盛って持っていく。布団に潜ろうとしていた京さんの膝に置き、枕を立てて京さんを座らせる。 「ちょうど作ったから食べて」 「ちょうど?」 「うん、試作してたの。そんなおいしくないけど」 「おいしくないの?」 「うん、そんなにおいしくないから、半分食べて」  そういって自分の分もよそってきてベッドの足元に座ってお盆を前にする。食欲ないとか言わせない作戦。お預け喰らったようにじっと見ていると、京さんは「いただきます」といってレンゲを口に運ぶ。 「ん? おいしいよ?」  えへへ。 「えー、そうかなー?」とつまらなそうな顔で食べる。ホタテも利いてるけど、一緒に食べるともっとおいしい。  京さんは一膳平らげてくれた。リンゴの皮をむかないまま8分割して芯の部分を切って、楊枝に刺して渡すと京さんは素直に食べてくれる。 「ごめんね、皮むき苦手だから」 「そうなの? 皮むかないほうが栄養素あるって知ってるのかと思った」  へぇ。魚も皮と身の間がいいっていうのと一緒なんだね。 「あ、これ、すごくいいよ」  京さんが小豆のホットマフラーを持ち上げながら言う。えへへ。薬と白湯を渡しながら素気なさを演じる。 「看病させちゃってごめんね」 「こういっちゃ悪いかもしれないけど、案外楽しいよ」  そういうと京さんがまたほほ笑む。うーん、好き。

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