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第15話

   *  寝る前にパソコンとかスマホとかいじっていると、良くないっていうよね。ブルーライトのせいだとか、脳が興奮するからとか、理由は説明する人によって違う気がするけど、とにかく良くないって。  深夜2時だって気づいて、京さんのパソコンを閉じた。ちょっと画像加工とかしてみたりして、遊んでた。夢中になっちゃうよね、だから眠気が襲ってこないのかなー。でも、仕事や勉強でパソコンに向かってても眠い時は眠っちゃうから、なんか違うかなーとか思ったりするし、パソコンやスマホがなくてもこうやってグルグル脳が無駄なこと考え続けているときもあるし、パソコンとかスマホのせいじゃないと思うんだよねー。  うん。  そうやって1時間ほどぼーっとしてたみたいだけど、眠気は襲ってこなかった。きっとこうやってぼーっとしている間に、案外居眠りしてることとかもあるのかもな、なんて思う。さっぱり眠くならない。一日中出掛けないから運動量なんてゼロに近いから、身体的疲労感とかさっぱりないからしょうがないけど、炊事、洗濯、掃除はするから主婦並には動いているつもりだけど、それでも眠くならないんだから困ったもんだ。  京さんはお昼を食べてから起きてこない。お昼からだから半日もだよ? 12時間だよ? 薬のせいとかインフルエンザのせいとかあるかもしれないけど、12時間も寝るとかなくない? ね。そう思うよね。きっと俺がぼーっとしている間にやっぱり居眠りしてるんだよ、その間に京さんが起きてトイレいったり、お水飲んだりしてるかもしれないけど、俺を気遣って起こさないでそっとしてくれてたりすると、それは気づかないよね。で、結果12時間以上寝てるって話になるんだと思うんだ。  って、誰に話すでもなく自問自答してるわけだけど、どう返事していいのかもわからない。  カーテンを巻くって外を見てみる。曇っているのか空は真っ暗だ。川沿いの街灯がほんのりと光っている。それだけ見るとちょっと怖くなった。なんでだろう。  カーテンをきっちり閉めて、ソファーに戻って毛布にくるまった。ちょっと寒かっただけかもしれない。踵を中心に身体を揺すってみる。寒い。寒い。  太腿に固いものが当たって動きを止める。首から下げていたお守りだ。服の下にあるそれの紐を引っ張って掌に置いてみる。温かい。自分の温もりに癒されるとか……笑っちゃう。  人の生活エネルギーってやっぱり、一人でいるより二人、二人でいるより複数、コーヒー買ったりコンビニ行ったり、他人と関わることによって消費エネルギーが違うと思うな。会社の人と朝挨拶したきり無言で仕事してたとしても、満員電車で無言で過ごしていたとしても、人と接触するってやっぱりエネルギーを使っているんだとつくづく思う。それをストレスともいうんだろうけど。そういうのが疲労感に繋がるんだと思う。  それでもってきっとエネルギーに負荷をかけるのは、やっぱり感情なんだ。電車の中で、女性が長い髪を払って毛先が当たると俺は不快でしかないけど、ちょっと得した気分になる男性もいるんだって。不快感と快感、どちらが消費カロリーがあるのかわからないけど――。  あー。  また、無駄なことを考えて時間が過ぎていった。4時だって、もうすぐ朝だね。一日くらい眠らなくても問題はないけどね。  不快感と快感から展開して、片想いと恋愛真っ最中だったらどっちがエネルギー使っているかまで考えた。でも恋愛真っ最中なら、今日着ていく服とか、開口一番何話そうとか、考えるだけでカロリー消費してる。昨日の普通に幸せな俺と、今日看病で京さんとちっともしゃべれない俺とじゃ全然違うしね。  単純にプラスとマイナスの感情にわけるのなら、プラスの方がエネルギーを使っているんだと思う。元気すぎる人の側にいるとエネルギーを吸い取られそうな気持になるのはそのせいだ。マイナス感情は逆にエネルギーを使わない感情なんだと思う。底におちたバイオリズムは一定のまま起伏もない。いくらでも持続できるし、きっと、やっぱりエネルギーは使われてないからだと思う。  うーん、めっちゃどうでもいい。  つか、こういう無駄な考えを止めるために、眠りたいなぁ。

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