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第17話

 額にパフっとなにかがあたって、ウトウトしていたことに気づいた。そのなにかがゆっくりと押すように動き、頭がぐっと後ろに折れる。  ガウンを頭からすっぽり被ってしまったことを後悔した。俺のためじゃなくて、京さんはそもそも怖がりだから、寝てる間でも電気は消さない。ほのかな灯りがあるから、お互い寝ている顔もわかるのだ。  ガウンのせいでわからないけど、たぶん足元で寝てたから、京さんが足で俺の額を蹴っているってことだ。否、蹴るってほど反動をつけているわけじゃなくて、足を延ばしたらなんかあるから押しのけようとしているような、たぶん、寝返ろうとしても毛布が動かないから、俺とは知らずにベッドから押し出そうとしているってところだろうか。  3秒くらい押されただろうか、京さんの足らしきものがすっと引かれ、悪あがきするように毛布を引っ張られる感覚が身体の下であったが、それほど動かない。  モゾモゾと京さんが動くのがわかる。京さんが起きた。今、上体を起こしたところだね、なんか言うかな?  耳をすましていたけれど、なにも聞こえない。覚醒してないのかな? と思ったら、パフパフと羽毛布団を踏むような……ああ、手で前進しているのかな? こちらへ近寄ってくる感じがあ……る……。  ズシッ。  と、擬音が聞こえそうな感じで、全身に重みを感じた。肩にゴツっと当たって首筋のあたりに顔の重みを感じた。わわっ? 京さんの腕が俺の身体と毛布の間に入ってきて抱きかかえるように包んだ。え? あれ? と思っている間にさらにぎゅーっと抱きしめられる。ちょ…、嬉しいんですけ……ど……。 「こねこちゃん……」  喜びに浸ろうとしているところで発せられた京さんのセリフに、「は?」って文字がマンガのように頭の中に落ちてきた。  ……は?

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