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第23話
個人事業主はこういうとき替えがいなくて困るよね。定休日は暗黙の了解でカレンダー通りだけど、臨時休業はどうにもならないもんね。
熱は下がったようなので、メールの返信だけっていうからノートパソコンを渡してあげた。ベッドからはでちゃだめだよ。30分だけだからねって、釘をさしておく。すぐ無理するんだから。
洗濯物を干すためにベランダに出たら、めっちゃ風が強かった。バタバタと暴れるシーツを干すのにめっちゃ体力つかった。ふー、って一息つく間もなく掃除する。いつもはさりげなく京さんがやってくれているけど、棚の上とかテレビの下のスキマとか、埃のホの字も見つからないってことはさ、さりげなくどころか、気づかないうちにあちこち細々掃除してるってことだよね。恐縮です、頭上がらないです。なんか、そういえば、お掃除大好きは徳島の県民性とかってテレビかなんかで見た気がする。待合室で壁の曲がった額縁直しちゃうとかねー、整えることに対して、目がいっちゃうとすぐ行動しちゃうってことかと思うと掃除もこう、徹底するのかなー。京さんの目の届かないところもお手入れしようと思って探し回ったけど、完敗ですわー。
ああ、疲れた。
「あ!」
30分どころか2時間くらい経っていた。はっきり言って忘れてたけどね。
「京さん……」
ノートパソコンを取り上げようと思っていたら、京さんはもう布団に潜っていた。それは膝のあたりに投げ出してある。うん、えらいね。寝てるわ。
ノートパソコンをリビングに戻して、代わりに俺がベッドに乗っかる。膝のあたりで丸まると、やんわり睡魔が襲ってくる。
あー、京さん。追試の時間……です……よ。
パフっと、また、昨日と同様の衝撃がおでこにあって身構えた。眠りに落ちる寸前だったから目は開かない。それでもモゾっと毛布が動く。膝があたったね。
「……あら、ら?」
あ、でたよ、京さんのおばさん的感嘆。笑っちゃいそうになるけど、顔に出さないように寝たふり。さあ、京さん、どうする?
「ダメだよ、ここで寝ちゃ。熱下がってもまだ……」
寝たふりばれてるのかな。素直に従おうかどうしようか、迷っているうちに足首が握られた。え? と思う間もなく引っ張られて、ふわっと身体が浮いたかと思うと、ほんわりと温かい熱に全身が覆われた。……うん、布団の中だ。背後から京さんの腕がそっと肩を抱いてくれる。
「30分だけだよ」
笑うように京さんが言う。ふふっ。俺も笑っちゃいそう。ふふ。
試験内容バレてたかなー。
30分で、起きられるかなぁ。
「ありがとう。君がいてくれて、よかった」
後ろから、声がする。
眠いってしあわせだね。
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