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第13話
あんな所を見られて、一体どんな顔をしたらいいのか…。
山野だって、多分同じ事を考えているのだろう。
二人とも下を向いたまま、ずっと黙ったままで駅への道を歩き続けていた。
もう太陽も沈み、何メートルかに一本の街灯が道を照らす。
月は雲の隙間から時折柔らかい明かりを僕ら二人の上に優しく落としていた。
気が付くと隣にあると思っていた山野の靴が見当たらない。
顔を上げてきょろきょろと周囲を見回す。
振り返ると、少し後ろの方で山野がじっと下を向いたままで立ち止まっていた。
「山野、どうしたの?」
山野に駆け寄った。
ポタポタとアスファルトに雫が落ちる。
え?
驚いて、山野の顔を覗き込んだ。
「山野、どこか痛いの?大丈夫?」
山野が口を真一文字に結び、その目から涙を零していた。
山野の肩を掴み軽くゆすると、山野が僕の胸に顔をうずめてきた。
いきなりの出来事にどうしていいのかわからず、手が宙に浮く。
「福木、ごめん!」
僕の胸に顔をうずめたままで山野が嗚咽を漏らす。
「山野が何で謝るの?あんなところを見せた僕の方こそ、山野に嫌な思いをさせたんだから謝らなきゃいけないのに…本当にごめん。」
「福木は悪くない!悪いのは、あいつから…玉井から福木を守る事ができなかった俺の方だ!」
僕を見上げて、涙目で山野が叫んだ。
どうしよう、山野をぎゅっと抱きしめたい。
こんな時に何を考えているんだって思う自分と、今なら自然に山野を抱きしめられると甘く囁く自分がいる。
宙に浮いた手が山野を抱きしめようとする力とそれを必死に止めようとする力とで拮抗して、ぶるぶると震える。
そんな心を隠して、悪いのは玉井だよ、山野じゃないなんて冷静な顔をして言っている自分に反吐が出そうになる。
ともかくここではと山野の手を取って、少し離れた所にある公園に入った。
公園の入り口から少し離れた滑り台の裏に行くと、ここでいい?と山野に尋ねる。
黙ってこくんと頷いた山野に向き合い頭を下げた。
「改めて、ごめん。」
僕の再度の謝罪に山野がフルフルと首を振る。
「福木が言ったんだよ?悪いのは玉井だって。福木は悪くない、悪くないよ、福木は!」
そう言って再び僕に抱きついた。
「福木、お願いがあるんだ。」
またも困惑している内心を隠して答えた。
「何?」
「……。」
「山野?」
「…ってして欲しい。」
初めの部分がよく聞こえず、聞き返す。
「聞こえなかったんだけど…もう一回言ってもらってもいい?」
「ぎゅってして!」
山野が暗がりでもわかる位に真っ赤な顔で、僕を見上げた。
瞬間、僕のタガが外れた音がして、山野をぎゅっときつく抱きしめた。
「山野、好きだ!」
自然に出た言葉に僕自身が驚いた。
でも口に出してみて、やっぱりと納得している自分がいた。
あぁ、山野が好きだったんだな。
ずっと、山野とこうしたかったんだなって。
山野がびくっと体を震わせ、暫くするとこくんと頷いた。
「本当に?」
山野の両腕を掴んで少し僕から離すと、顔を見つめた。
「やだ、顔凄い事になってるだろう?見ないで…。」
山野が僕の胸に再び顔をうずめようとするのをダメだよと腕を突っ張って制する。
「山野の照れてる顔、可愛い。僕にもっと見せて?」
ぼわっと言う音が聞こえそうなくらい、山野が首まで真っ赤になった。
「福木、ズルいよ。やめてよ。やだ…福木のバカ!」
下を向いて何とか顔を隠そうとする山野の顔を覗き込んで、そのおでこに唇を当てた。
「ひゃっ!!」
山野が可愛い声を出し、びっくりして顔を上げた瞬間、その頬を両手で優しく包み込んだ。
「ふ…福木?」
「ねぇ、キス…していい?」
山野に静かに尋ねる。
山野の目が一瞬大きく見開き、そして静かにその瞼を閉じた。
それを肯定の意と受け取った僕が、ゆっくりと山野に顔を近付け、その唇に自分の唇を合わせた。
「ん。」
山野の唇から吐息が漏れる。
僕を誘うように山野の口が少し開いた。
僕の舌が山野の口の中に誘い込まれ、山野の舌を探す。
山野がそれから逃げるように舌を動かす。
暫くその追いかけっこを楽しみ、ついにその舌を捕まえた僕と山野の舌が絡み合っていく。
くちゅくちゅと唾液の絡め合う音が耳を刺激し、山野からこぼれ出る吐息が顔をくすぐる。
もっと山野を感じたい!
我慢できずにぐっと山野の頭を抱えた。
「くぅ…っるしっ!」
山野の声に我に返り、唇をはなした。
「ごめん!山野、大丈夫?」
「…くくくっ。」
「山野?」
「もう、本当に福木は…。そんな心配しなくても大丈夫だよ。あ、でも、もうここではだめだよ。…我慢できなくなっちゃうから…俺。」
よく、下半身を直撃したなんて言い方をするけれど、そんなことあるのか?って半信半疑だった。
が、しかしまさにそれをたった今、体感した。
「山野、ちょっと待っててくれる?」
腰が曲がりそうな位の痛みに冷や汗が出る。
「福木、大丈夫?顔が真っ青だよ!」
山野が心配して僕の背中から腰をさすってくれるが、それが刺激となり、ずくんと下半身が膨らんでいくのを感じた。
「ご、ごめん、山野。大丈夫だから、触らないで。」
「え?あぁ、分かった。」
少し寂しそうな顔で僕から離れようとする山野の腕を掴んで僕に引き寄せる。
「福木?」
山野が驚いた顔で僕を見る。
「嫌だから触らないでじゃないよ、山野。それ以上されたら、僕の方が我慢できなくなっちゃうんだ。ほら…ね。」
山野の手を僕の下半身にそっと触れさせた。
「福…木っ…!」
「山野があまりに可愛い事を言うもんだから、反応しちゃったんだ。だから少し待ってて?」
そう言って山野の手を離す。
「ねぇ、玉井にされて…どうだった?」
山野が僕の下半身を触ったままで僕に尋ねる。
「それは…っ!」
思い出したその快感に下半身が反応した。
「違うんだ、山野!これは違うっ!」
必死になればなるほどそれを肯定しているように聞こえて、僕はそれでも言葉を止められなかった。
「福木、大丈夫だよ。分かってる。ここがそういうものだって、俺にも分かってるから。」
そう言って、山野が僕の下半身をたどたどしくさすり始めた。
されていることが理解できず、どうしたらいいのかわからず腰が引ける、
「福木、俺から逃げないで。俺だって、玉井ほどうまくはできないかもしれないけれど、福木を気持ちよく、楽にさせたいんだ。」
そう言って、僕に近付くと再びその手が僕をさすった。
「んん…山野。」
「何?気持ちいい?」
ぐっと山野を抱き寄せると、僕も山野の下半身に触れた。
「あ、福木、やめて!」
山野が軽く身をよじる。
「やめて、いいの?」
山野の下半身から手を離そうとすると、意地悪と言って山野が腰を擦り付けてきた。
「山野のも反応してる。布地越しでもわかる位に凄い熱いよ。ねぇ、あのキスで気持ち良くなってくれたの?」
山野をさすりながら耳元で囁く。
「あ…言わない…で。」
山野がとぎれとぎれに答える。
「違うの?じゃぁ、何でこんな風になってるの?教えて、山野。」
そう言って、スーッと膨らみを指でなぞり上げた。
「あぁ…ん」
新しい刺激に、山野が我慢できず大きめの声が出る。
「山野、声抑えて?」
「福木が変なことするからだろ⁉」
顔を赤くして山野が抗議する。
「変な事って…これ?」
そう言って今度は少し爪を立ててなぞり上げた。
「はぁ…あぁぁぁん」
再び山野が声をあげた。
「山野、ダメだって。」
そう言ってくすくすと笑う僕を山野が涙目で睨む。
「福木って…。」
「僕が、何?」
「ちょっと、意地が悪い。」
そう言って山野が頬を膨らませた。
ぷくッとした頬を齧りたいと思うと同時に行動していた。
カリッと頬をかじられた山野が、もう!と僕をさする手にギュッと力を込めた。
「山野は意地悪い僕は嫌い?」
山野の手を握って僕を優しくさすらせる。
その手に導かれるように僕をさすりながら、
「むしろ…大好きだから、困る。」
囁くように答える山野に、僕も素直で可愛い山野が大好きだよと囁き返した。
「福木…俺…俺もう…っ!」
山野の目が潤み、僕を見つめる。
「こんなところでなんて、僕達も玉井の事を言えやしないね。」
そう言ってふふっと笑うと、山野が顔を真っ赤にして言わないでと僕の胸に顔をうずめ、早くと切なく呟いた。
「下げるよ?」
山野のチャックに手を添えると、俺もと僕のチャックを下し、手を入れて下着越しに僕を擦り出した。
僕も山野のチャックを下し、中に手を入れて下着越しに擦ると、山野は僕の胸に、僕は山野の肩に顔をうずめ、声を押し殺して下着の中に放出した。
夜の公園に、はぁはぁと二人の激しい息遣いだけが聞こえる。
呼吸が整ってくると、何とも言えない恥ずかしさに二人でごわっとした下着を気にしながらも、公園から駈け出して駅に向かった。
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