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第17話
それから僕ら3人の奇妙な関係が始まった。
あの3人で過ごした週末が終わり、ようやく玉井の監視から解放されると思ったのに、悪いがこれからも監視は続けさせてもらうと玉井が僕達に向かって宣言した。
「お兄さんにも釘を刺されたし、高校生の間は番になる事は諦めたんだから監視は要らないだろう⁈」
抗議をする僕を例の木の裏に再び連れて行くと、ドンと胸を押した。
背中が木にぶつかる。
山野が慌てて駆け寄ってくるが、まだ早い時間のためそこまで多くないとはいえ、騒ぎ立てれば登校する生徒達の注目を浴びてしまうので、何もする事ができない。
声を落として
「ルール違反だろ?」
そう言った山野に、
「休戦は福木の家の中でだけだ。一歩外に出たら、遠慮はしない。」
低く抑えた声で山野を制する玉井が、その声のままで僕の耳元で囁いた。その声にゾクっとする。
「監視は継続する。」
「何で?!」
再びの押し問答。
「俺がしたいからだ。」
「そんなの、僕と山野に対するただの嫌がらせじゃないか!?」
訳がわからないと僕が首を振る。
「俺はお前を俺の見える範囲においておきたいんだ。」
いつもとは違う少し優しい目で僕を見つめ髪を撫でる。
「やめろって!」
その目に鼓動が高鳴り、それを隠すように少し大きめの声を出して玉井の手を叩き落とした。
山野が慌てて後ろを振り返り、生徒達に聞こえていないことを確認する。
「声、落とせよ。」
叩き落とされた手をフルフルと揺らしながら玉井が言う。
「お前が…っ!」
「福木っ!」
山野が割って入ってくる。
声を落としてと言われ、仕方なく頷いた。
そのやりとりを見ていた玉井の目からあの優しい光が消えた。
「福木、俺はお前だけが欲しいんだ。そのためなら俺はなんだってやる。たとえお前に嫌われようが、心が死んでようが構わない。俺のそばにずっとおいて、お前を俺のものにする、絶対に。」
そう言って木ごと僕を抱きしめるように腕を回すと、ぐっと顔を近付けて僕の唇を貪るようなキスをしてきた。
言い訳にもならないが、金曜の夜からずっと色々と我慢してきたせいで、体がものすごい敏感になっていた。
しかも玉井による快楽をもうすでに数回受けていた僕の体は、唇を離した玉井に向かってもっとと口走ってしまった。
山野が驚きの余りカバンを落とし、僕はしまったと口を手で覆った。玉井はくくくと笑ってリクエスト通りにと、僕の口を覆っていた両手を片手で掴んで頭の上に引っ張り上げると、もう片方の手で頬をぐっと掴んで再び口を覆ってきた。
「んんんーーーーー」
僕が声を上げるが、玉井は全く意に介さず僕の口中を舐り続ける。
山野が顔を赤くして玉井の背中を引っ張るが、こちらも玉井にはなんの障害にもならない。
段々と体から力が抜け、むくむくと下半身が起き上がっていくのを感じていた。ダメだと頭は必死に訴えているのに、体は玉井の手を欲して腰を揺らす。
玉井の手が突然に僕の手を解放した。
しかし、その手は玉井に対して抵抗するどころか、ほんの少しでも気を緩めたら玉井に抱きつきそうだった。
それを木の幹をぎゅっと掴んで我慢するが、玉井には全てがお見通しのようで、我慢するなよとでも言うように腕をスーッとさすってくる。
そのぞわぞわっとした感触に体が震え、手が幹を掴んでいられない。
膝も震えだし、立っているのも危うい。
自分の体が玉井に好き勝手されているというのに、それを山野に見られているというのに…山野に見られている!?
瞬間、僕の頭が体から理性を取り戻し、力を取り戻した腕が玉井を突き放そうとした。
「おいおい、今更それはないだろう⁈」
玉井はそう言って山野をチラと見ると、
「福木が気持ち悪いらしいから、俺がこれからトイレに連れて行く。俺と福木のカバンは山野、お前が教室に届けておいてくれ。あと、先生にも言っておいてくれ。」
そう言うと、山野が何かを言う前にくるっと背を向けて僕を抱きかかえた。
「なっ…⁈」
まさか玉井にお姫様抱っこをされるとは思いもせず、そのままで生徒が登校している中を堂々と歩く玉井に体をばたつかせて抗議する。
「ここでばたついても、恥ずかしいだけだぞ。嫌だったらトイレに着くまでこっちを向いて気絶してるフリでもしてな。」
玉井に言われ、どの道降りることも歩くこともできない僕は、仕方なく玉井の胸に顔を埋めるようにして目を瞑った。
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