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第21話

3人で過ごそうと決まったあの日から毎朝、山野と二人で電車で学校最寄りの駅まで行き、駅前で玉井と合流して学校までの道のりを三人で歩く。 学校では、昼になるとあのベンチで三人揃って弁当を広げた。 放課後、玉井もやはり帰宅部のため再び三人で駅まで向かう。 そして金曜日には僕の家に行き、三人で週末を過ごす。この玉井曰く「我慢大会」をやめようかと言う話も出たが、放っておくと食べる事を忘れる僕の体の事を心配した二人が、僕の家での休戦協定をわざわざ文書化したうえに、二人で名前を書き入れたものを僕のところに持ってきた。約束を破った時には、僕の家への出入り禁止と書いてある。 「破れば、相手がこの後の週末を福木と二人だけでずっと過ごせるってわけだ。」 玉井が紙をぴらぴらと山野の前で振りながら言う。 それをひったくるように山野が取り上げると、同じように玉井の前で振りながら、 「しかもやっちゃったわけだからやっていいんだよ、福木。」 ボクに向かってニコッと笑い、紙を僕に手渡した。 「ああやってすぐに我慢できなくなる誰かさんだから、福木と二人だけの週末も遠くない未来のような気がするんだ。」 そう言って山野が僕の腕に自分の腕を回す。 すぐさま玉井が僕の肩を抱き寄せ、 「福木が手を出しても山野はアウトだからな!」 玉井の言葉に山野がえーーーっと抗議の声をあげた。 「そんなのずるいよ!」 「何がずるいだ⁈あたりまえだろう!福木に手を出させればしてもいいなんて甘いんだよ!」 「ちぇっ!」 そんな二人の会話を聞いているとおかしくて、ゲラゲラと大笑いしながら、駅までの道を歩いた。 結局のところ、軽いキスや触られたり触ったりなんて言うのはちょこちょこあったけれど、三人の関係は特に変わる事なく季節と一緒に過ぎ去って行った。 その頃には、学校中で僕達3人の事は誰も知らないものはいない位に話題になっていたらしい。 学年トップ3が一緒にいるんだから、目立たないわけがないと、いつかのクラスメイトから聞いたと山野が言っていた。 そんな事もあって、どこに人の目があるかわからない状況では校内での過度なスキンシップはさすがにはばかられ、それによるかもしれないストレス過多で免疫の落ちたと思われる玉井が、鬼の撹乱(かくらん)とでも言うべき風邪による病欠という事態が起きたのは、期末試験も近付いた冬の事だった。 帰り支度をして山野との待ち合わせ場所に向かおうと席を立ち上がりかけた時、担任から福木と呼ばれて教卓前に行くとプリントの入った紙袋を渡された。 「君と玉井は仲が良いんだってな?申し訳ないがこれを玉井の家に届けてもらえないだろうか?締め切りの迫ってるのがあって、困っているんだ。」 一瞬え?っとなったが、断る理由もないので承諾した。 ほんの少し、弱っている玉井を見てみたいと言う気持ちもあったと言えばあった。 山野にその事を話すと、俺もそれは見たいと盛り上がり、山野が玉井の家に電話をして二人で向かう事となった。 駅から伸びる少し広めの通りを抜け、国道沿いにある玉井の家の病院を見上げた。 大きく立派な外観に圧倒される。 こういう所に生まれるとは一体どんな気持ちなんだろう?と考えていると、山野にこっちだよと手招きされてその後をついていく。 裏通りに入った所のかなり広めの敷地に建つ、日本家屋を囲む壁の前で山野が待っていた。 「今、チャイムを押したから。」 「すごいな…」 無意識に言葉が出た。 中からお待ち下さいと小さく女性の声が聞こえ、門がががががと開く。 山野の顔を見た女性が、どうぞと中に招き入れる。 「薬の関係でお兄さんに会いに何度か来ているんだ。」 「そうなんだ。」 中に入ると家に続く道が伸び、外から見た時とは比べ物にならないほどに威厳のある日本家屋に一瞬足が止まる。 はぁとため息が出た。 「ちょっとびびるよね?」 山野が僕のため息に答えるように女性に聞こえない位な小さな声でそっと囁く。僕は黙って頷いた。 女性が扉を開くとそこに眼鏡をかけた玉井似の男性が立っていた。 「先生!」 山野が走り寄る。 「山野君、わざわざ来てもらってすまないね。君が…福木君?」 あの日の電話で聞いた声。 はいと頷いた。 僕の思っていたのよりはかなり痩せ気味の、でも玉井似のお兄さんだった。 「初めまして。福木です。担任から玉井君宛にこれを預かってきました。」 そう言って鞄からプリントの入った紙袋を取り出し、お兄さんに渡した。 玄関先ではなんだからとスリッパが用意され、山野と上る事にする。 お兄さんに案内されて玉井の部屋の前に立つと、お兄さんが軽くノックをした。 「どうぞ。」 中から玉井の少し掠れ気味の声がする。 お兄さんが扉を開けると、東京ではかなり珍しいほどに広い部屋。 そこに、勉強机やテレビ、テーブルとクッションが数個、そして少し大きめのベッドが見える。 そのベッドの上に、玉井がパジャマ姿で上半身を起き上がらせてこちらを見ていた。 「手を煩わせて悪かったな。」 そう言ってベッドから下りようとする玉井に駆け寄って、いいから寝てろよと押し戻した。 「もう熱もないし、本人は学校に行きたかったらしいんだが、母が心配症でね。今日一日は大事を取って休ませたんだ。退屈していたから、君達が来てくれて助かったよ、な?」 お兄さんの言葉にまぁとあいまいな返事で頷く。 先ほどの女性が失礼しますと入ってきて、テーブルの上にお茶やお菓子を置いて出て行った。 「それでは私も…いや、山野君?もし時間があるなら今月の診察を今日できるならしていかないか?今なら私も時間があるし、ちょっとした検査もしたいし…どうだろう?」 え?っと僕の方を向いてどうしようという顔をする山野に、 「僕は大丈夫だから行ってきなよ。ここで待っているからさ。」 そう言うと、じゃあそうすると言って、お兄さんと部屋を出て行った。 二人が出て行くと、東京にいるとは思えない位にしんとした部屋の静けさにちょっとソワソワする。 「そこにクッションがあるから。」 そう言って玉井がさす先にあるクッションを取り上げると、テーブルの側に置いて座る。 「兄貴が言っていたように、体はいたって元気なんだけどな。母親が許してくれなくて。」 参るよと言って頭を掻いた。 「ふぅん。あ、お茶いただきます。」 そう言って、一口ゴクンと飲む。 三人でいる時は軽口も叩けるのに、いざ二人きりになると何を喋っていいのかわからず、体が火照っていく。 「少し暑いか?」 僕の顔が赤くなっているのを見た玉井が心配して、ベッドから下りて僕の側に近寄った。 「大丈夫。玉井こそ、熱が下がったとは言え病み上がりなんだから寝てろって。」 僕が玉井をベッドに押し戻そうとする手を玉井がいきなり掴むと、そのまま一緒にベッドに連れて行かれた。 ベッド際で抵抗する僕を玉井がのしかかるようにして、押し倒す。 「玉井、約束違反だろ!」 そう言って起き上がろうとする僕に馬乗りになると、 「ここは俺の部屋だ。協定に書いてあるお前の部屋でも、校内でも電車に乗った先でもない。だから、約束違反じゃないし、ここでは俺がルールだ!」 そう言ってぐっと僕の腕を引っ張り上げてベッドに押し付けると、頭をもう片方の手で掴んで唇を合わせてきた。 実のところ、ここ最近はこのような事もないままでいたので、僕も少し、ほんの少し寂しさを感じていた部分がないとは言えなかった。 言い訳にもならないがそういう事で、されるがままとまでは言わないまでも、抵抗と言うほどの抵抗をしない僕を見て、玉井が僕を戒めていた手を離す。 自然に僕の手が玉井の背中にまわり、玉井もぐっと僕を抱きしめる。貪るように口の中をまさぐる玉井の舌と僕の舌が出すくちゅくちゅとした音が部屋の中をねっとりとした空気に変えていく。 それに絡みつかれて動けなくなった僕の体から玉井の手によって制服が剥ぎ取られ、舌が首から胸を這い、その突起を口に含んで歯を立てる。 「ああっ!」 僕の口からこぼれる甘い声に満足そうに頷くと、手が下半身にかかる。 「玉井っ!」 僕の手が玉井の手を押さえようとするのを、その手を振り払ってズボンのチャックを下すと、一気に下着ごとずり下ろした。 「やめっ!!玉井、さすがにだめだって!!!」 玉井の胸を叩き、足をばたつかせるが玉井はそんな僕を見下ろすと、 「悪い、もう止まらねぇ。」 そう言うと、熱をもってドクンドクンと脈打つ僕を口に含んで、きゅうっと吸い込むようにして僕に刺激を与え、その欲望を出させようとする。 強い刺激に我慢できずに玉井の口の中に液体を吐き出すと、荒い息でぐったりとしている僕をうつぶせにして、僕の敏感な渦に口づけて溜まっていた精液を吐き出した。 トロッとした感触に再び僕がくんっと反応する。 玉井の口が離れると指が渦の中にぐっと入れられた。 「うぅっ!たま…い、やめ…っん…」 その初めての刺激に腰が引けそうになる。手はベッドの端を掴んでぶるぶると震え、何とかこの場から逃げようと足を動かそうとするが力が入らない。 「少しの間、我慢してくれ!」 そう言うと腰を掴まれ、ぐちゅぐちゅと指を出し入れする。 嫌がるどころか僕の渦が玉井の指を飲み込んでいくのを感じていた。 一本だった指がいつの間にか二本、三本と入るように広がり、玉井の喉がゴクンと鳴る。 僕の口は開きっ放しのまま、呼吸をするように甘い声が出る。 「ここの辺りだと思うんだけど…。」 そう言って玉井が探るように僕の中で指を動かす。 それが擦った瞬間、僕の体がビクンと反応した。 「あっあぁぁっぁああ!」 我慢できずに声が突いて出た。 「ここか…福木のいい所。」 そう言って玉井がその部分を執拗に刺激する。 「あっ…やめっ…あぁぁ…っまい、やっ…あぁぁぁっ!!」 イキそうになるのを、玉井の手が背中から僕をぐっと握って出させてくれない。 「ここで出されたらさすがにまずいからな…。」 そう言うと指を突っ込んだままで器用に体を動かすと、僕を再び口に含んで出せよとでもいうように吸い込み舌を這わせる。 その刺激と体の中からくる刺激に、声は止まらず、体をビクンビクンと痙攣させながら玉井の口の中に再び液体を吐き出した。それを満足そうにごくんと喉を鳴らして玉井が飲み込む。 横向きで肩で息をする僕に、ちょっとここかりるぞと自分の下半身にコンドームを被せると、僕の両足の間にはさみ入れ、腰を動かし始めた。 「ちょっ!玉井っ!!」 僕が驚いて動こうとするのをぐっと両肩を掴んで押さえつけ、そこに自分の頭をつけるようにして、 「もう少しだか…ら、くぅっ!」 玉井が顔を歪めると、僕の足の間から じんわりとした温かさが広がっていった。 裸のままの僕と抱き合ったままで玉井が荒い息を整える。 「どうするんだよ。こんな事、山野にばれたら。」 僕が早く服を着る為、玉井をどかそうとしながら抗議をする。 そんな僕の腕ごとぐっと抱きしめ、 「俺のだ、俺のものだ。」 そう言って、僕に口づける。 「玉井!もうヤバいって!!」 「何で?」 「何でって、山野にばれたら…」 「バレたら、俺にもうこんな事されないで済むんだから、バレた方がいいんじゃないのか?」 「それはっ…そうだけど…」 それは嫌だと思ってしまう、自分の気持ちが分からない。 黙って俯いたままでいる僕を見た玉井が、ふっと微笑むと、 「悪かった、俺の事を考えてくれてるんだよな?」 そう言って、体を離しながら僕の頭をポンポンとなでる。 「しかし、ヤバいなこれは。」 僕を見下ろしながら玉井の目がぎらつく。 「おい!本当にっ!!」 いいかげんにしろと言おうとした僕の唇を覆い、分かってるよと甘いキスを与えられる。 玉井のキスになれた僕の口がそれに呼応して舌を絡め、再び抱き合った。 しばらくして落ち着くと、玉井が山野にばれないようにと体を拭いてくれたり、換気の為に窓を開けたりしてアリバイ工作をするのを手伝い、山野が帰って来た頃には何事もなかった風な顔で、二人で談笑していた。 明日なと玉井と別れ、少し痛む心を抱えたままで山野と電車に乗る。 何も気が付く事無く山野がバイバイと笑顔で手を振るのが見えなくなると、無意識にほっと息を吐いていた。

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