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第25話
それからは金曜日の夜に山野が寝るのを見計らって、玉井が僕の部屋に忍び込んでくるようになった。
初めの数回は山野への後ろめたさから僕が少し抵抗をした為、玉井が言い分け用なと言って僕をあのネクタイでベッドに括りつけていたが、それもしばらくすると後ろめたさよりも快感と愛される幸福感の方が打ち勝ち、僕は玉井が来る前から扉の前で待つようになった。
廊下を静かに僕の部屋に向かって来る玉井の足音が聞こえてくると、足早にベッドに駆け込む。
扉がキーっと開く音で今起きたような顔をして、玉井が入って来るのをベッドに上半身を起こして待つ。
ギシっと音を立てて、玉井が僕のベッドに上がると口づけをしたままで僕を押し倒す。
玉井にされるがまま服を脱がされ、体中に与えられるキスによって僕の体が開いていく。
その頃には玉井の服も床に散らばり、その引き締まった肉体が僕の前に現れる。
毎回、その体にドキッとしてまともに見られずに目を逸らす。
「おい、こっちを見ろよ。」
玉井がそうとは知らず、僕が自分を見ようとしないことに腹を立て、僕の頬を挟んで自分の方に向ける。
「やめろって!」
顔を動かすことができないので、視線だけでも逸らす。
「何で、こっちを、俺を見ないんだよ⁈」
玉井がきつめの口調で言うが、お前の体がかっこいいからだなんて答えられるわけもなく、
「別に、見なくったって出来るんだからいいだろ?」
そう答える僕に、そう言う問題じゃないだろうと玉井が憮然とする。
いつもならこの辺りで玉井が引き下がり話が終わって、二人だけの甘い時間を過ごすのだが、今夜の玉井はしつこかった。
「そんなに見たくないって言うなら、見なければいいさ。」
そう言うと、あのネクタイを手に持った。
「縛る気か?」
「縛る…とは少し違うか。」
そう言うと僕をうつぶせにした。
ネクタイが顔の前に見えた瞬間、目の前が真っ暗になった。
目隠しをされる展開はあまりに想定外で、玉井に食ってかかった。
「玉井っ!何すんだよっ⁈」
「見たくないんだろ?だったらお前の望み通り見られなくしてやるよ。」
そう言うと、頭の後ろできゅっとネクタイを結んだ。手を伸ばして取ろうとするのを両手首を掴まれこちらもネクタイで縛られた。
「久しぶりだな、こういう姿の福木。思ったよりもクるわ。」
玉井が僕の背中に自身をこすりつけてくる。
その感触に玉井の興奮が分かり、ビクンと僕の背中が反応した。
見えないという新しい刺激に僕自身も興奮していくのが分かる。
我慢できずにうつぶせのまま腰をベッドにこすりつけるようにすると、玉井の手がぬっと僕を掴む。
「ひあっ!!」
突然掴まれて声が出た。
「俺がいるのに、自分でするってどういう事だよ⁈」
玉井の手が僕を容赦無く擦り上げる。
「やめ…ろっ!!玉井、いた…あぁ…っい!!」
僕の悲鳴を無視して、玉井は手を動かし続けた。
「やめっ…た…まいっ!いやだ…こんな…のいやだ!!」
玉井の手が突然止まると、僕の上半身を起こす。
訳も分からずにいると玉井が僕の口を指でぐっと開かせ、何かを突っ込んできた。
それが玉井自身だとわかり、口から出そうとする僕の頭を玉井が掴むと激しく動かした。
それが喉の奥に当たるたびに嗚咽が漏れる。
「福木っ!!!」
玉井が僕の名を呼ぶと同時に、僕の口の中に生暖かい液体が放出され、勢いでごくりと飲んだ僕の口から焦るように自身を取り出すと、僕の目隠しを結び目を取る事なく引っぺがす。
目を開けると、心配そうな玉井の顔が見えた。
「何、飲んでんだよ⁈」
玉井が僕の口に手を突っ込もうとする。
それを顔を横に向けて止めた。
「お前だって、僕のを飲んでるじゃないか?…まぁ、美味しいわけではなかったけれど、お前のだから飲めた。」
そう言うと、玉井が僕をしっかりと抱きしめ、すまなかったと謝る。
「僕も悪かった…あのな…」
「どうした?」
「お前が見られないの…な。」
「もういいよ、それは。」
玉井が僕の手首のネクタイを解きながら言う。
「違うんだ…お前がかっこよすぎて見られないんだよ!」
一気に言うと、ベッドの中に潜り込んだ。
「はぁ?!」
玉井が変な声を出して、ベッドから引きずり出した僕を、胡坐をかいてその上に座らせる。
にやにやぁと、今まで見たことのない玉井の意地悪な顔に、言わなければ良かったと後悔する。
「誰が何だって?」
「言わないよ!」
「ふぅん…これでもか?」
そう言うと、僕の下半身にネクタイをぎゅっと縛り付けた。
「やめろよ!」
取ろうとしたが、再び手首も縛られた。
「さて…と。」
玉井が僕を四つん這いにしてローションを垂らす。
その行為の先に何があるのか、分かっている僕の全身をぞわっと悪寒が走った。
「玉井、やめっ!」
願いもむなしく、玉井の指が僕の渦の中を一気にかき回す。
「初めから三本いけるようになったもんな。それからここ、福木のいい所。」
そう言って、あの場所を執拗に刺激してくるが、ネクタイが邪魔をしてイくことができない。
腰が動き、知らぬ間に涙が頬を伝う。
口からは、意味のない音が出る。
「それで?俺がなんだっけ?」
「たま…いが、意地悪い…ひっ!!」
「まだ、そんなこと言える余裕あるのか?だったらもっと…っ!」
そう言うと、指の出し入れが激しくなり、部屋の中をローションを掻きまわす音と、僕の声だけが響く。
「もう…イ…かせて…っ!!」
「だったら、言えよ?」
「…やだ。」
「じゃあ、このままでいるんだな。」
「…。」
「ほら、さっさと言えよ?」
そう言って一層激しい刺激を与えられた体が我慢できずに、
「玉井が、かっこよすぎるから、まともに見られないんだよ!!もういいだろ?出させて…」
そう言った僕を玉井がぐっと抱きしめた。
「お前の為に頑張ってる甲斐がある。」
「え?僕の為?」
思いもかけない言葉にびっくりして聞き返した。
「お前に少しでもかっこいいって思われたくて、好意を持ってもらいたくて頑張ってるんだよ。俺だって、必死なんだ。」
僕の背中に玉井の顔の重みを感じた。
「玉井…。」
玉井が僕の中から指を抜くと、下半身をぐっと押し当てる。
いいか?と聞くように数回トントンと突く。
それに対して僕が頷くと、玉井が突きさすように僕の中に一気に押し込んできた。
「と…って!玉井、もう、もう…っ!!!」
玉井の動きも激しくなり、その手が僕の戒めを取った瞬間、僕は悲鳴と共に我慢していたものを吐き出した。
それを確認するようにして玉井も放出した。
玉井とは、こんないざこざを繰り返しながらも、なんだかんだで絆を深めていった。
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